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竹田クニ氏が2018年の外食トレンドを探る。飲食店ならではの付加価値どう作り磨くか?

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あらためて問われる「外食の価値とは何か?」

現代の外食産業は他店との競争に加え、中食・内食とも競わなければなりません。消費者にとってみれば「その店に行くからこそ味わえる価値」を求めて飲食店に行くわけです。その価値をどう作り、どうアピールしていくのかが、これからの外食産業にとっては重要になります。

その店ならではの「付加価値」とは何か? それは以下のキーワードに整理されると考えます。

「付加価値」は図の上にある5つのキーワードに整理される(作図:竹田クニ氏)

■調理・提供方法
「レシピ、焼き方、作り立て、手作り、コース内容、食べ放題、盛り付け方など」
例えば、素人ではできない材料の調合や焼き方の技術。作り立てでいえば、街の中華屋さんは圧倒的な火力で、家庭ではできない味を、出来立てで食べられることが強み。

■食材
「グレード、産地等の調達ルート、目利き、シェア、社会貢献」
寿司店でいえば、親方の目利きと仕入れのルート。郷土料理や各国料理でいえば、その地域固有の食材。

■ストーリー
「料理・食材にまつわる伝統、伝承、地域の歴史・物語、食習慣」

■空間
「非日常、ゴージャス、様式美、眺望、コミュニティー」
非日常的なゴージャスな空間や、歴史を感じる古民家風の部屋、窓から見える夜景、横丁などのコミュニティー、空間を演出する音楽や照明など。

■接客
「客のシーンに合わせた接客サービス」
接待、お祝い事、デート、おひとり様など、シーン(食事目的)に合わせたスタッフの接客。

今、繁盛している店は、ほとんどが上記のどれかのキーワードで特徴を持っていることに気づくでしょう。飲食店は、自分の店がどういう付加価値で選ばれているのか、選ばれたいのかを今一度、消費者の立場で問う必要があると私は思います。2018年の戦い方は、まず、自分の店の付加価値をあらためて見つめることからスタートしてはいかがでしょうか。

「自分の店の付加価値をあらためて見つめることが大切」と語る竹田氏

2018年、消費者が「価値」を感じるキーワードは何か?

最後に2018年外食産業のキーワードになりそうな言葉について触れたいと思います。冒頭のグルメランキング2017では、3つのキーワードを挙げましたが、2018年のキーワード(=消費者が価値を感じること)について詳しく触れておきたいと思います。

1、健康維持、予防医学観点などに有効である(オーガニック、無化調、低糖質、低脂肪など) 
安全・安心は当たり前の価値として、栄養学的な食の「機能」としての有効性を気に掛ける価値観

2、本物、老舗、鮮度、製造方法、栽培・漁法、調理
技術などにおいて、他と圧倒的に差別化できる優位性・説明力をもっている。商業主義的に生み出される「食」への反省

3、生産者支援、地域活性など社会貢献につながる特徴を持っている
イートグッド、エシカル消費

4、地域の名産品や固有の食文化の伝承、季節の風物
詩・祭事、食習慣・風習など文化的な意味を有する

5、復興支援など社会的使命を帯びている性質のもの

2017年の「スーパーフード」や「甘酒」「ハイカカオチョコレート」などは「1」の健康維持、予防医学観点といえますし、「コッペパン」「からあげ」などは本物志向の表れともいえます。また、近年繁盛している「均一価格の焼き鳥」店でも、安全安心な国産鶏肉を謳ったり、ハンバーガーチェーンでもプレミアム牛肉や熟成肉を使ったメニューが登場してきたりしています。

一方で、低価格を売りにした飲食店も増えています。ただこの場合注意しなくてはならないのが「コスパ」です。文字通り、“コスト/パフォーマンス”を意味するわけですが、ただ単に「安い」ということではなく、この品質で、このボリュームで、この味で、「この価格はお得」、つまりバリューフォーマネーだということを意味します。「コスパ」を考えるにあたっても、「マネー」に対する「バリュー」の明確化と評価が重要になってくると思います。

トレンドを参考に同質化するのではなく、トレンドから消費価値観の潮流を読み取り、「付加価値」を磨いて相応の対価をいただく。同質化は価格競争しか招きません。内食、中食ではできない「付加価値」を作り、磨き、他店とは違う「価値」の軸でお客様に評価され、選ばれる、そしてふさわしい対価をいただける。2018年が飲食店にとって、そして消費者にとって、そんな魅力的な市場になることを願ってやみません。

竹田クニ
1963年生まれ。ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリスト、株式会社ケイノーツ代表取締役。ホットペッパーグルメリサーチセンター初代センター長。現在はエヴァンジェリストとして外食産業に関わる調査企画、執筆、講演などを行う。同時に外食産業の生産性向上をテーマに農水省など中央官庁への政策提言も行なっている。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/