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飲食店と食材卸し業者の取引実態をアンケート調査。仕入れコスト削減の秘訣は?

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Photo by iStock.com/lucafabbian

今年は酒税法改正によりアルコール価格が上昇し、また食材の仕入れ価格や配送料の値上げもあった。これを理由に、『鳥貴族』や『いきなり!ステーキ』といった多くの外食チェーンが値上げを決めた。こうしたアルコールや食材の相次ぐ値上げは、もちろん個人店の経営にも影響している。いかに仕入れコストを抑えるか、頭を悩ませている店主も多いのではないだろうか。

そこで今回は、飲食店と食材卸しの取引実態についてアンケート調査を実施。各店が仕入れコストの削減のために行っている工夫とともに、アンケート結果をご紹介していく。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:185名
調査期間:2017年11月29日~2017年12月4日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果はこちら

■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち70.3%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は64.3%(首都圏の飲食店の割合は79.5%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

仕入れ業者の選定は「仕入れ価格」と「商品の質」がポイント

まず、食材の仕入れ業者を選定する際に重要だと思うポイントを聞いたところ、「仕入れ価格(89.7%)」「商品の質(86.5%)」と答えた飲食店が9割近くあった。そのほかは、「小ロット対応可能か(56.8%)」「配送の融通がきくか(33.0%)」「決済方法(14.1%)」「自社で配送しているか(8.1%)」と続く。価格や質はもちろんのこと、小ロットでも対応してもらえるかどうかが、特に個人経営の飲食店にとっては重要なポイントであるといえそうだ。

「仕入れ価格」「商品の質」と答えた飲食店が9割

次に、新しい仕入れ業者を探す際の「探し方」について聞いたところ、最も多い回答が「インターネットで調べる(77.3%)」。このほか、「知り合いの飲食店に聞く(66.5%)」「近くの市場に出向いて探す(27.6%)」「以前の勤務先に聞く(18.4%)」「現在取引中の仕入れ先会社に聞く(16.8%)」という結果になった。

飲食店の横の繋がりを活かして業者を探す人も多い

さらに、仕入れ価格を下げるために妥協を検討できる点について聞いたところ、「同品質の商材であれば、商品ブランドを問わない(73.5%)」「発注方式(FAX、専用のWebサイトなど)は問わない(58.4%)」が過半数を超える結果に。「決済方法は問わない(46.5%)」「配達時間が指定できなくてもよい(44.3%)」「2日後以降の発送(前々日発注)でもよい(43.2%)」という回答も多くあった。

「同品質の商材であれば、商品ブランドを問わない」が73.5%

また既存の仕入れ先の決済方法について聞いたところ、「締め日を設けて振り込み(69.7%)」「都度現金決済(18.9%)」「受発注サービスを利用して清算(7.0%)」「決済サービスを利用して清算(4.3%)」という結果だった。

約7割の店舗が「締め日を設けて振り込み」

仕入れ価格を下げるための工夫は?

では実際に仕入れ価格を下げるために、どのような工夫を行っているのだろうか。自由記述式で聞いたところ、以下のような回答が得られた。

■大量発注
「量によって単価の変わるものについては、一括で大量発注する」(神奈川県/イタリア料理)
「冷凍物の場合は、ケース買いして費用を抑える。また、まとめ配送で安くなるリストを出してもらう」(大阪府/洋食)
「担当営業との密な連絡によって、品質同等であれば安い方を仕入れ、中ロットによって値下げしてもらえるものがあれば聞くようにしている」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

■複数の卸業者との取引
「総合卸4社、精肉卸2社、鮮魚卸2社、野菜卸2社と契約して、常に競売させている」(大阪府/居酒屋・ダイニングバー)
「当店は個人店で10坪の狭い店だが、魚、肉、酒、その他調味料など1社に絞らず、各2社以上とお付き合いしている。同じ商品でもA社は200円、B社は210円という事がよくある。そこでB社に『A社は200円なんだけどなぁ』と軽い感じで伝えると、同価格またはそれ以下に下げてくれる場合が多い 」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
「小規模な店舗で大量仕入れはできないので、相見積もりを取る」(東京都/イタリア料理)

■市場価格のチェック
「できるだけ市場価格や適正価格を把握して、相談を持ちかける」(大阪府/イタリア料理)
「ネットで市場価格などをマメにチェックする」 (東京都/洋食)
「野菜ならば毎日市場価格をチェックして、ほかの食材も含め、年間契約やルート、時間、配達日など妥協点を探して担当と相談する。常に新しい業者の開拓のため、ネットなどで口コミや広告、ホームページをチェックする」(大阪府/ラーメン)

■定期的な見直し
「2年に一度、納価の見直しをお願いしている」(東京都/バー)
「何年かおきに、他の業者に相見積もりをとってもらう」(東京都/イタリア料理)
「半年くらいに一度、現状価格と半年前の価格を比較する」(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー)

■その他の意見
「基本的には、値下げ交渉はしない。値下げを取るより、品質の安定やこちらのわがままを少しでも聞いてもらえる環境にしたいため。値下げ交渉は双方にとって、プラスにならないと思う」(大阪府/居酒屋・ダイニングバー)
「同じ商品を扱っている業者があれば相見積もりを出す。しかし双方の利益のためにWin-Winなお付き合いがしたいから、何か特別な理由がない限り、値切り交渉はしていない」(東京都/イタリア料理)
「値引き交渉ばかりしていると業者さんから嫌われるので、業者さんがキャンセル品、賞味期限間近のものなど、売るのに困っている商品を快く仕入れる。業者さんに厳しくあたるのではなく、仲良くなると色々とお得な事が多い」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

食材の高騰が続く中、仕入れコストをできる限り抑えようとするのが経営者としての心情だろう。しかし、やみくもに値下げ交渉を行うのはNG。より良い食材を適正価格で仕入れるという意識も大切だ。そのためには食材の品質を見極められる業者と、お互いにWin-Winの関係を築くことが需要。そのうえで発注のタイミングや量の工夫、仕入れ先の定期的な見直しなどで、無駄のない仕入れを行うことが大切といえるだろう。

「飲食店リサーチ」について
飲食店リサーチ」では、飲食店を経営する皆さまに、店舗運営に関する様々なアンケートを行っています。 アンケート結果は、飲食店の皆さまに店舗経営のヒントとして活用していただけるよう、レポート記事として公開されたり、 皆さまが利用する業務用商品やサービスなどの開発に役立つデータとなります。

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。