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人気イタリアンが語る「外国人雇用」のリアル。ビザ取得、言葉・文化の違い etc...

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東京食彩株式会社の統括マネージャー・古関晃さん

飲食業界が抱える大きな悩みといえば「人手不足」。求人の募集をかけてもなかなか人が集まらず、その結果、もともと働いていた従業員の負担が増え、それが原因で離職していく……という、負のスパイラルに陥っている飲食店もあると聞く。

そんな苦しい状況が続く飲食業界で注目されているのが外国人の雇用だ。ここ数年、大手居酒屋チェーンなどで外国人スタッフが働くのをよく見かけるようになったが、そうした流れが中小の飲食企業や個人店にまで広がりつつあるのだ。そこで今回は、外国人雇用の実績があるイタリア料理店『コロッセオ中目黒』を取材。運営会社である東京食彩株式会社で統括マネージャーを務める古関晃さんに、外国人雇用に関するリアルな話を聞いた。

「外国人を採用しないと店舗運営がまわらない」という危機感

約1年半の間、チベット人を雇用していたという『コロッセオ中目黒』。「日本人だけの採用に絞っていては人手不足が解決せず、外国人スタッフの採用を視野に入れていかなければ店舗の運営が回らないと感じていました」と古関さん。

これまで東京食彩で採用した外国人スタッフの国籍は、『コロッセオ中目黒』にいたチベット人以外に、系列店ではベトナム人や中国人などのアジア系から、イタリア人やスペイン人などのヨーロッパ系までと幅広い。

話せる日本語レベルはどのくらいを求めているのか伺うと、「ビジネスレベルの日本語を話せる人が理想ですが、なかなかいません。ですので、日常会話ができるレベルの人であれば採用しています」とのこと。ただ、日常会話は話せても、実際の業務に入ると特にキッチンは専門用語も多く、理解するのが難しいこともあるようだ。

『コロッセオ中目黒』の店内。中目黒駅前という好立地ながら、店内は50席以上と広め

外国人雇用の最大のハードルは「ビザ」

外国人を雇用しようと考えた時に、まずぶつかるのがビザの問題。東京食彩ではどのように対応しているのだろうか。

「ビザの取得はこちらでもサポートをしていますが、なかなか下りないのが現状です。人材紹介会社から『働きたい』という意思を持つ外国人を紹介され、こちらもその方を『受け入れたい』と思いその体制を整えたとしても、就業ビザが下りるのに数か月かかってしまうことが多いですね」

ビザが下りるまでの間、その採用予定者にはまずはアルバイトスタッフとして就業してもらい、ビザの申請が下りた時点で正式に社員として登用するそうだ。ビザ自体はなかなか下りないが、古関さんの感触では日本の飲食業界で働きたいという外国人はとても多いらしい。

“日本人らしい考え方”を理解してもらうのが難しい

外国人は日本人に比べ、言葉だけでなく文化や習慣も違う。表面的なことではないため、なかなか教えるのが難しいと古関さんは語る。

「この店は雑居ビルに入っている店舗なので、他の店舗とのコミュニケーションが必要だったりします。以前、隣にある歯科医院のスタッフの方から、弊社の外国人スタッフに『共用部分が汚れていたので、拭いておいてくださいね』と言われたことがありました。そのスタッフは自分がやったことではなかったので、『それは自分の仕事ではない。僕は知らない』と言ってしまったそうです」

自分がやったことではないにしろ店の責任ではあるので、もし日本人が対応していたなら「すみません、拭いておきます」と一言謝っていたかもしれない。こうした考え方の違いを外国人スタッフに理解してもらうことは難しく、苦労する場面もあるそうだ。

「生ハムやサラミなど…いろいろお肉の前菜盛り合わせ」1,200円

外国人雇用は店舗全体の労働環境を整えるチャンス

逆に外国人を雇ってみて、何かメリットに感じたことはないか聞いてみると、「外国人を採用しようと受け入れ体制を整えることは、店舗の労働環境を整えるチャンス」と、古関さんは前向きだ。その一環として同社では、現場で特に負担がかかる“2番手ポジション”のスタッフを集め、「2番手会議」というミーティングを開いて意識の底上げを図っているという。

「外国人スタッフの受け入れは店舗にとっては大変なことですが、これからは避けられない問題だと考えています。ミーティング等を通じて現場スタッフの意識を変えながら、日本人も外国人もスタッフ全員が働きやすい環境を作っていきたいですね」

人手不足の問題は飲食業界だけでなく、あらゆる業種で起きている。これを受け、政府は外国人労働者の受け入れを拡大する方針を示し、「出入国管理法改正案」が閣議決定されるなど、急ピッチで法律が整備されようとしている。これが実現すれば、飲食業界での外国人雇用もさらに加速し、人手不足を解決するための大きな選択肢になっていくに違いない。

古関さんの語る通り、外国人の受け入れ体制を整えることは、店舗全体の労働環境を整えるきっかけになる。人手不足に悩む飲食店は、外国人労働者の雇用について、一度検討してみてはいかがだろうか。

『コロッセオ中目黒』
住所/東京都目黒区上目黒2-6-9 マルモビル2F
電話番号/03-6412-8270
営業時間/11:30〜L.O.14:00、18:00〜L.O.22:30
定休日/なし
席数/52

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西尾悠希

ライター: 西尾悠希

これまでグルメ系情報誌やカフェのムック本、グルメ系サイトなど、飲食系メディアに数多く編集やライティングで携わる。料理が趣味で、フードアナリストやフードコーディネーターの資格も取得。お酒を飲むのも好きで、休日には三軒茶屋や学芸大学の飲食店をよく開拓している。