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客の迷惑行為を飲食店はどう防ぐ?回転寿司の炎上事件から悪気のないものまで事例紹介

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画像素材:PIXTA

飲食店には、毎日さまざまな客が来店する。“お客様は神様”とはいえ、なかには明らかな迷惑行為をはたらく客も。2023年は、回転寿司店での不潔な迷惑行為がTwitterなどで拡散され次々と“炎上”した。この事例にとどまらず、他の回転寿司店を始めさまざまなジャンルの飲食店でも迷惑行為が発生し、社会的な問題へと発展している。ここまでのレベルに達すると、もはや遭遇は「事故」としか言いようがない。

動画撮影が目的か? 止まらない客の迷惑行為の“炎上”

店内で迷惑行為を撮影して、プライベートなTikTok やInstagramのストーリーに投稿した動画が、発掘されてTwitterなどのSNSに転載され、拡散・炎上するという出来事が後を絶たない。2023年に話題となった炎上事件について紹介していこう。

■スシロー「ペロペロ」事件
高校生と思われる客が席に設置されたしょうゆボトルを口にしたり、未使用の湯飲みをペロッと舐めてからもとの場所に戻す、唾液を指に付けて回っている寿司を触る動画が拡散された。

迷惑行為の当事者と保護者は運営する株式会社あきんどスシローへ謝罪したものの、同社は「刑事・民事の両面から厳正に対処する」方針を示している。湯飲み舐めや寿司に唾液をつける行為は、法的には「器物損壊罪」「偽計業務妨害罪」に問われる可能性がある。

被害にあった店舗は、すべてのしょうゆボトルと湯飲みを洗浄。さらに同店舗および近隣の店舗では、食器・調味料の提供方式を変更した。店内に設置された食器や調味料を、客自身がテーブルに運ぶ仕組みに。テーブル席とレーンの間にアクリル板を設置する取り組みも進めているという。また、スシロー全店で、消毒済みの食器・調味料を客からの要望があれば提供する対応を取っている。

■はま寿司「わさびテロ」事件
レーンを回っている他の客が注文した寿司に大量のわさびを乗せた事件。迷惑行為におよんだ人物から謝罪したいと連絡があったものの、運営するゼンショーHDは申し出を拒否。警察に相談の上、被害届を提出へ。ペロペロ事件と同様、罪に問われる可能性がある。

■スシロー「甘だれに醤油混ぜ」事件
アナゴなどの使用する甘だれに醤油を混入。甘だれにはもともと原料として醤油が使用されているものの、さらに醤油が加わることでる大豆や小麦へのアレルギー反応がある人の体調に影響する恐れもある。運営元は警察に相談済み。

■吉野家「紅生姜直食い」事件
容器に入った紅生姜を自らの箸で直接かきこむ様子を見せながら、直接口の中へ入れた維持件。事件のあった店舗では、紅生姜の廃棄・交換、カウンター常設の什器や調味料入れなど備品の消毒・洗浄を実施。さらに全従業員に対して、迷惑行為を防止するため、店内の様子のチェックや衛生管理の徹底を促した。「警察への被害届を提出予定の上、刑事・民事両面での厳正な対処を行うべく、引き続き、調査を継続しております」と株式会社吉野家ホールディングスはアナウンスしている。

■カラオケまねきねこ「除菌スプレー火遊び」事件
カラオケ店内で除菌スプレーを無断で使用し、ライターで引火させて火遊びを行った事件。
運営するコシダカホールディングスは「一歩間違えば大事故につながる危険行為。刑事および民事の両面で厳正に対処いたします」と発表している。

■カラオケまねきねこ「ソフトクリーム直食い」事件
「ソフトクリームを提供する機械に口を近づけ、直接食べてしまった」(埼玉県久喜市/まねきねこ)
運営元は警察に相談済み。当該店舗でのソフトクリームの提供を一旦中止し、点検および洗浄を実施した。また、全店を対象に当該機器の洗浄および衛生管理の徹底を通達している。

■いきなりステーキ「ソース直吸い」事件
卓上に設置されたソースボトルを直接くわえて吸い込んだ事件

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「こっちのタイミングがあるんです!」勝手に○○されると困るアレ

■運んできたドリンクをトレイから直接取ろうとする
たくさんのジョッキとグラス、さらにそのすき間を埋めるように載せられたお通しの小皿たち。何とかバランスを取りながらテーブルへ運んだはいいが、乾杯を待ちわびる客が次々にトレイの上のドリンクを奪い取っていく…。

「勝手にグラスを取られたことでバランスを崩し、うっかりお客様の服にドリンクをこぼしてしまったことがあります。当然、店側がクリーニング代を支払うはめに」(東京都世田谷区/ワインバル)

想像するだけでヒヤッとするエピソード。だが、客の中には、店員が一人ひとりにドリンクを配る手間を省くために、あえて率先してグラスを「取ってくれている」つもりの場合も。ギリギリのバランスで運んでいる際は、テーブルについた時点で「こちら(テーブルの手前側など)にまとめて置かせていただきます」などと伝えるか、一旦トレイごとテーブルの端に置いてから配るのが得策だ。

■料理を運んでいる最中に、別のテーブルからオーダーされる
大人数の料理やドリンクを運んでいる際、どこからともなく「すみませーん、こっちに生とハイボール!」の声。ざわついた店内ではよく聞き取れないし、そもそも両手がふさがっていてオーダーも入力できない。

「店内が大勢のお客様で埋まっているときは、どのテーブルからオーダーを受けたのかすら判断できないことも。本当に焦るし、オーダーミスにもつながりやすいので、やめてほしいです」(東京都杉並区/居酒屋)

この場合、「少々お待ちください」より、「すぐ伺います!」と伝える方が心象が良い。客としても、忙しく飛び回る店員にオーダーするのは、結構労力を使うもの。ここはひとつ、客の気持ちを察した声掛けを。

画像素材:PIXTA

「たいしたことじゃないと思われているのかも…」気軽にやられるアレ

■備品を持ち帰る、店内を汚して帰る etc...
また、このほかにも「地味ながら結構困る」というNG行為が。なかにはサービスの一環と思っている客も多く、余計タチが悪い。たとえば、

「マヨネーズや柚子胡椒など、オプション外の調味料を当たり前のように要求する」「取り皿やおしぼりをいくつも使いたがる」(東京都杉並区/居酒屋)

というもの。実家じゃないんだから……と思わず突っ込みたくなってしまう。また、

「トイレに置いたマウスウォッシュや、生理用ナプキンなどの備品を大量に持ち帰る」「何をしたらこうなるの?っていうぐらい、床への食べこぼしがひどい」(東京都世田谷区/ワインバル)

という、人としてどうかと思う行動も。あまりに頻繁な場合は、貼り紙をするなどして、直接的な注意喚起を行うことも必要だ。

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「片付けたい気持ちは分かるけど…」ありがたいようで、実は困るアレ

■食べ終わった食器を重ねる、または座敷などの端に置く
客としては、店員が皿を下げやすいように、また少しでもテーブルを広く使いたいという思いなのだろう。しかしながらこれ、ひとつの皿についた油汚れがほかの食器に広がることにもなりかねない。また、店員が座敷の足元に食器が置かれていることに気づかなかった場合、うっかり踏みつけたり、つまずいたりする危険性も。

混雑時は徹底が難しいが、やはり良きタイミングで「お食事がお済みのお皿はお下げします」とひと言声をかけ、順次片付けていくのが鉄則。またテーブル会計なら、「食器はそのままで結構です」と事前に伝えるのも手だ。

■布おしぼりやティッシュなどを空いた食器に入れる
こちらも、後片付けを少しでも楽に、ということなのだろう。しかし、布おしぼりは洗って再利用するもの。紙ごみと一緒に放り込まれては仕分けする手間が発生するし、何より必要以上に汚れてしまう。

おしぼりに関しては、かごや受け皿などを用意するだけで、そこが定位置という認識になる。また、ビニール袋ごと提供する場合は、開けたタイミングで袋のみ回収してしまうのも手だ。

意識的・無意識的にかかわらず、日々起こっているNG行為の数々。すべてをなくしていくことは難しいかもしれないが、店側は客の気持ちを推しはかったうえで、働きやすい状況を生み出す「発想力」も身につけていきたいものだ。

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田中恵実子

ライター: 田中恵実子

編集プロダクション在籍時にグルメやライフスタイル、住まいなどをテーマとしたさまざまな雑誌・Webマガジンにて取材&執筆をおこなう。現在はフリーランスとして、女性向けショッピングサイトなどの編集執筆を担当。世代より少し上の歌謡曲やJ-POPを愛聴。