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脱マッチョな飲食ビジネスとは? 「FOODIT TOKYO 2019」で未来の経営スタイルを提言

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PIZZA 4PSはベトナムでは知らない人がいないほどの人気店に成長したという

消費者が食材を扱うことで生産者にも興味を持たせる

美食倶楽部ネットワークのFounderで、食べる通信リーグ理事でもある本間勇輝氏。外食とは違った立ち位置で、「脱マッチョ」な活動を行っている。

「僕は外食ではなく、もうちょっと川上の方、つまり生産者の方とお仕事をしてきました」と本間氏。例えば「食べる通信」では、生産者を取材して雑誌を作り、ストーリーとともに食べ物を一緒に届けるといった活動を展開。2013年に立ち上げ、いまは国内と台湾で50地域くらいにまで広がっているという。

また、生産者の魅力を伝えるという意味では、「美食倶楽部」も同じだそうだ。

「スペインのバスク地方にサンセバスチャンという人口18万人ほどの町がありまして、そこには、日本語で美食倶楽部と言ってるんですが、シェアキッチンが120以上あります。会員制のキッチンですね」

ここでは、会員だけが入れて、買ってきた食材を厨房で調理してその場で食べる。そこにプロのシェフも会員として入っているので、みんなで食事を楽しむだけでなく、レシピをシェアすることもあるのだとか。その結果、街全体の料理のレベルが向上。サンセバスチャンはミシュラン星付きの店が次々と誕生する指折りの美食の町となった。この美食倶楽部を日本で展開しているのが本間氏だ。

「美食倶楽部はメディアだと思っています。消費者が自分で食材を扱うので、自然と食材に目が行く。そして、生産者に興味をもつ。脱マッチョに向けて、この循環をつくらないといけないと思うんです」

実際にかつおぶしを削る永松真衣氏

職人の思いを知っているからこそ美味しく削りたい

あまり料理をするイメージのなかった祖母がかつおぶしを削り出したのを見て、「一本釣りされた」という永松真衣氏。それがきっかけとなり、渋谷でかつおぶしの店を出すことに。

永松氏は実際に店で使用している削り器とかつおぶしを持参。かつおぶしを削りながら、「こだわってるねとよく言われるんですが、こだわっているというよりも、ただ美味しいかつおぶしを届けたいというだけなんです」と言う。

「全国のかつおぶしの産地を訪れて、かつおぶしの職人がどういう思いでかつおぶしを作っているのかといったことに心が動きます。裏にあるストーリーを大事にしていて、それ知っているからこそ、美味しく削りたいんです」

だからこそ、削り器も燕三条の職人にお願いして作ってもらっているそうだ。そしてもちろん、かつおぶしとカツオ自体にも魅力を感じている。

「かつおぶしの香りは400種類以上あると言われていて、まだ発見されていない香りもあります。カツオも縄文時代から食べられてきているのに、それでもまだ未知の世界がある。改めてこの食材ってすごいなと思います」

近代の北欧ガストロノミー10カ条

調理法よりも理念が大切という時代に

最後は、楠本氏が用意した2つの資料を紹介。ひとつは、1970年代のフレンチ業界がヌーベル・キュイジーヌという活動を始めたときの10か条。新鮮な食材を使うといったことや、郷土料理からアイデアを得るといった、当時は新しいとされる発想が盛り込まれている。

それに対して、近代の北欧ガストロノミー10カ条が対称的だという。特に10番目にはこう書かれている。

「10.消費者の代表、料理人、農業、漁業、食品工業、小売、卸売、研究者、教師、政治家、このプロジェクトの専門家が力を合わせ、北欧諸国全体に利益とメリットを生み出す」

つまり、調理の方法よりも考え方や理念が大切だということ。これが現在の世界の潮流であり、それを実践しているのが登壇者の4人。これからの飲食店経営を考える上で、非常に興味深いセッションとなった。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com