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グルメ激戦区の大衆酒場かくあるべし。学芸大学『レインカラー』が描いた戦略とは!?

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客単価を抑えた上で、売り上げと人件費のバランスを取って利益を得るためには、店舗の広さも重要だと語る手島氏。物件探しの段階から、15坪ほどの店と決めていた

客からの要望を受け、普段使いできる店舗の構想を始める

『ワイン食堂~』が好調な中、手島氏は客から「もう少し気軽に足を運べる店がほしい」というリクエストを耳にすることが多くなる。『ワイン食堂~』の客単価は5000~6000円。客の利用シーンの傾向は、記念日などの特別な日が多く、普段使いの店としては敷居が高いという話だった。これをきっかけに、手島氏は二店舗目の構想を練り始める。

「次は客単価を抑えて来店頻度が上がる業態にしようと考えました。学芸大学の街をリサーチしてみると居酒屋が多くて、平均的な客単価は5000円程度だったんです。これより安く見せるために、客単価は2500~3500円に設定し、『居酒屋』ではなく『大衆酒場』を冠することに決めました」

生ビールは390円、ホッピーは外300円、中100円で、他のドリンクも490円以内と、ドリンクはリーズナブルな価格設定で杯数を稼ぐことが狙いだ。一方で、つまみには和食店の店長も務めていた料理人を刺場に迎え、和洋折衷幅広いジャンルのハイクオリティなメニューを多数取り揃えた。

食材は『ワイン食堂~』の仕入れ先から調達。ジビエを使った「名物 鹿のハンバーグ」(790円)や「白トリュフ香るポテトフライ」(490円)、「よだれ羊」(490円)など、高級食材を使ったメニューを求めやすい価格で提供している。「原価が上がっても、いい食材を使うことで、料理のバリエーションが広がるメリットをとりました」と手島氏。現在フードメニューは50種類ほど揃っているが、今後もさらに増やして行く予定だという。

「名物 鹿のハンバーグ」はジビエを使用。つまみの品書きも、仕入れによって変わる

「学芸大学に住んでいる人たちは食に対するアンテナが高く、色々な店で食事をしているし、食材もよく知っている。話を聞いていると、家で作るごはんも凝っているようなので、中途半端な料理を店で出しても見向きもされないと思ったんです。ただ、『大衆酒場』を名乗っている以上、“大衆食”でなければいけない。そこで、ハンバーグやパスタなど、だれもが一度は食べたことがある馴染みの料理に、あえて高級食材をアレンジに加えて、オリジナリティを出すことにしたんです」

原価を上げた場合、それを大きく上回る客数で利益を上げることが必須になる。14年間、学芸大学を見てきた手島氏だからこそ、そこで暮らす人々の特性と、街にないものを見極め、キラーコンテンツを作ることができた。15坪、約50席の店舗には、1日130人もの客が訪れているという。

世の中の流れを見極め、現状把握をしつつ変化を続けていく

オープンから3か月が過ぎた今も、開店時間から満席という状態が続く『大衆酒場 レインカラー』。快進撃を続ける手島氏に繁盛の秘訣を聞くと「時の流れに寄り添うこと」と語る。

「長く続く不況で、お客さんの財布のひもが堅くなっている時代だからこそ、客単価の安い『大衆酒場』という業態が流行したのだと思います。ただ、今はそれが流行っていても、いつ世の中の流れが変わって新しい流行が生まれるかわかりません。また、時が流れれば店主が歳を取ることも必然です。その時に、若いころと同じパフォーマンスができるとは限らない。もし事故に遭ってしまえば、店を開くことすらかなわなくなります」

さまざまなリスクを想定して、時代の移り変わりや店舗の状態、自分自身のコンディションも加味して変化を続けていくことが、店がくたびれず、繁盛し続けるために必要なことなのだと手島氏は語る。現在は、初めての大衆酒場業態の仕組みづくりで大忙しの手島氏だが、今後も人々の度肝を抜くような新たなコンテンツを作っていくに違いない。

手島義朋(てじま・よしとも)
1976年生まれ、茨城県出身。飲食の道に進む以前は、地元で家業の半導体を扱う事業をしていたが、自身が強く惹かれた『Lo SPAZIO』で勤めるため上京。以降は、学芸大学に暮らし、店舗経営を続けている。

『大衆酒場 レインカラー』
住所/東京都目黒区鷹番3-7-13 ホワイトウエルビル1F
電話番号/03-5708-5430
営業時間/19:00~翌2:00(日曜は18:00~24:00)
定休日/水曜
席数/約50

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高橋健太

ライター: 高橋健太

10数年の飲食業界での経験を経て、物書きとして独立。交通新聞社『散歩の達人』、Webメディア『FOOD STADIUM』などのグルメ記事を中心に活動。インタビュー記事を得意とする。