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【新型コロナ】テイクアウトで注文殺到、甲府『Ajito』が実践する「ある戦略」

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店の外にはテイクアウト用の巨大なQRコードが

一辺1.5メートルの「QRコード」で道ゆく人にPR

同店はバーベキューメニューが主力商品のため、価格は決して低くはない。「究極の肉汁スペアリブ450g」で1,800円(税別)、1ポンド(450g)ステーキは2,500円(税別)である。ただし、持ち帰れば消費税率は8%のため、一定の需要を喚起できる計算はあったという。

そこでさらにサービス開始記念で10%オフキャンペーンを実施し、店内で食べる場合に比べ約11.6%も安くすることで、一気にサービスの浸透を図ることにした。1ポンドステーキであれば、通常、店内で2,750円(税込)のところ、「心は接触 テイクアウト」を利用すれば2,430円(税込)と320円安くなる。

また、店舗の外に「心は接触 テイクアウト」のWebページに飛ぶ1.5メートル四方の巨大なQRコードを掲げた。信号待ちする自動車からもQRコードを読み取れるようにしたもので、「これ何かな?」と興味本位で自動車の中から、あるいは近隣の店舗にやってきた人がQRコードを読み取る例も少なくなかったという。

こうした努力の結果、「(サービスへの)反応はすごくあった」(滝口氏)という状況で4月10日の提供開始初日を迎え、20件ほどの注文が入った。その後も注文は増え、11日には28件を超え、12日には27件と安定して注文が入るようになり、13日からは「心は接触 テイクアウト」のみに切り替えた。

駐車場から電話が入ると、店員が店内から走って持っていき、手渡しする。ベルトコンベアーに乗ったようなドライブスルーとは違い、顧客が人の温もりを感じられるのは、新システムの予期せぬ効果と言えるかもしれない。マスクの上からもニッコリと笑って「ありがとうございました」と言う女性店員に「癒された」という声も出てきそうである。

人気メニュー「究極の肉汁スペアリブ」

「いつか終わる」という希望を持っていこうじゃないか

外食業界は、新型コロナウイルスの影響でかつてないほどの苦境に陥っている。休業して嵐が通り過ぎるのを待つのも一つの手であろう。一方で、滝口氏のように生き残りのために新しい手を打ち、事態を打開しようと動くのも一手。それぞれが生き残りへの道を必死に模索しているのが現状である。

「何とかこの店を残したいという思いを持っています。やるべきことをやって、その上で行政の支援があれば、ありがたいと考えています。自助努力を尽くした上で補償があればということです」

こうした思いが新たなビジネスの発想となった。恐ろしい新型コロナにも弱点はある。接触を避ければ高い確率で感染を防げる。感染しないと分かれば、客は来てくれるという単純な思いをビジネスの形にしたのである。

脅威に立ち向かってこそ活路が開けるというのが滝口氏の発想の原点。新型コロナウイルス禍の渦中にある中、従業員を集め、こう言っているという。

「いつ終わるのか、終わりが見えないのは確かだ。でも、近い将来に終わるという希望を持っていこうじゃないか。もちろん、終わらないかもしれない。しかし、もしかしたら7月に終わるかもしれない、うまくいけば6月に終わるかもしれない。希望を常に持ってやっていくことこそが大事だ。そして、終わった時にどれだけ自分が本領を発揮できるかという想像を働かせ、そこに希望を託そう」

店内はアメリカンな雰囲気

『アメリカンBBQダイニングAjito』
住所/山梨県甲府市徳行5-13-22
電話番号/055-298-6410
営業時間/18:00~L.O.23:30
定休日/火曜
https://www.bbq-ajito.com
https://www.bbq-ajito.com/takeout

滝口幸孝(たきぐち・ゆきたか)
1968年、山梨県生まれ。工業高校の機械科で学び、自動車関連の会社に就職し、工場長、管理責任者を務める。その間、自動車学校で教官職(実技・学科とも)も兼ねた。2015年に退職し、夢だった飲食業界に進出。当初は居酒屋を経営したが、2019年にスペアリブを中心としたBBQ専門店へと衣替えした。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/