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“最強”レモンサワーで人気の『素揚げや』、「最強」の経営判断でコロナ危機を回避

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「経営者として撤退することも大事」と語る宮崎代表

閉店しなければ「会社そのものが傾いていた」

2月2日に閉店しなければ、20万円の家賃に、コストをかけて集めた店長を含むスタッフの人件費がかかってきていた。そのタイミングで新型コロナウイルス禍が襲いかかっていたら、どうなっていたのか。今回、持続化給付金など国や都から総額400万円を受給する予定だが、仮にそれがあっても営業を持続することは困難であったという。

「今から思うと(閉店は)これ以上ないタイミングでした。もし、100万円ほど経費をかけ、何とか人を集めて祖師ヶ谷大蔵店を続けていたら会社そのものが傾いていたと思います。前の失敗がなければ、プライドがあるし、恥ずかしいというのもあるし、見切れずに営業を続けていたでしょう。今、考えるとゾッとします」

本人がタイミングを「偶然」と言うように、運が良かったのは確かであろう。しかし、運は巡ってくるものではなく掴み取るもの。信念に基づき、適切な判断で致命傷を避けたことは、この上ない幸運を自分で掴み取ったと言っていい。「店をやめずに作った3000万円の借金は高い授業料でした。ただ、それがなければ、今回、失敗していたでしょう」と振り返る。

飲食業界に内部留保が少ない理由

宮崎代表は今、飲食業界のあり方について考えている。自身を含め多くの飲食店が1か月程度の内部留保しか持たず、今回のような事態になると行政に補償を求めるしかない。内部留保が少ないのは、飲食業界への参入障壁が低いことから慢性的に過当競争の状況となり、内部留保を犠牲にした価格競争に陥っていることが大きな原因。顧客のニーズに応えつつも、従業員の生活を守っていかなければならない経営者の悩みは深い。

今回、宮崎代表のある種、神がかり的な経営判断で危機を逃れた。しかし、他業種の優良企業のように十分な内部留保があれば、祖師ヶ谷大蔵店が存続しても企業本体は安泰であったはず。そう考えると危機から逃れたことを喜んでばかりもいられない。神がかった判断ができなかった者、運を掴み損ねた者以外は淘汰されかねない業界のあり方こそが問題ではないかと自問を続ける。

コロナ禍は「飲食業界のあり方」についても考えさせられる

緊急事態宣言は解除されてもウイルスは残る

危機を乗り越えつつある中、その目は「コロナ後」に向けられる。

「5月31日に緊急事態宣言が解除されても、新型コロナウイルスがいなくなるわけではありません。お客さんがすぐに戻ってきてくれるか、負のスパイラルに陥った売上が劇的に戻るかと言われれば、そんなことはないでしょう。そして、また価格競争が始まります。お店と従業員を守ることを考えると、そこに巻き込まれてしまうのはどうかと思います」

コロナ後の経営・営業について自分なりの答えはまだ出ていない。ただ、本業以外の部分での収益の確保は一つの答えではある。4月6日、宝酒造から「素揚げや監修 味が変わる!?レモンサワー」が発売された。各種媒体でも大きく取り上げられる「素揚げやブランド」を利用し、その味を缶酎ハイで再現したものである。契約はロイヤリティー形式ではないとのことであるが、実店舗営業やテイクアウト以外での収益確保を果たした。

また、今秋をメドにフランチャイズ制を導入し店舗展開をしていく予定。前出のように自力で店舗を拡張していこうとしても人が集まらない現状であり、それならばフランチャイズ展開でというものである。

様々な手段を考え、模索を続ける中、コロナ後の飲食業界の新秩序を見据える宮崎代表の挑戦は続く。

『素揚げや小岩本店』
住所/東京都江戸川区南小岩8-25-1 東洋ハイツ1F
電話番号/03-6806-9481
定休日/平日月曜、振替休日あり
席数/16
店主ブログ

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/