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まもなく「Go Toイート」スタート、飲食店の本音は? 「格差広がる」という指摘も

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飲食店経営者が指摘する「Go Toイートの課題」

農林水産省のホームページには、「Go Toイートキャンペーンの事業の目的」として「感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援し、食材を供給する農林漁業者を応援するもの」との文言が掲げられている。

しかし、当の飲食店経営者は、必ずしも同キャンペーンを好意的に受け止めているようではなさそうだ。その理由は、主に以下の2点に集約される。

1、感染症対策のハードルの高さ
農林水産省は、同キャンペーン事業への参加を希望する飲食店に対し、「手指消毒用の消毒液の用意」「徹底した換気」「間隔を空けたテーブル・座席の配置もしくはパーティションの使用」「他グループとの相席の場合は真正面の配置を避けるか、テーブル上をパーティションで区切る」といった条件を提示している。

経堂で『酒ワイン食堂 今日どう?』を営む綱嶋恭介氏に、これらの条件についての意見を聞いたところ、以下のような回答が得られた。

「うちは席数が少なく、半分がカウンターなので、座席同士の間隔を空けたりパーティションを設置したりするのは難しいですね。席数を減らす、新たに備品を購入するなどの準備に見合うだけの効果が得られるかどうかについては、正直なところ疑問が残ります」

綱嶋氏は「キャンペーン参加は今のところ考えていない」とのこと。感染症対策の条件の厳しさが、参加にあたってのネックになっているようだ。

鮫洲で『ピッツェリア バッカ ムニカ』を経営する硲 由考氏も「キャンペーン自体には賛成ですが……」と前置きしたうえで「座席の配置ルールについては、個人店では対策不可能だと感じます。大箱ならともかく、席数の少ない店でやれば営業になりません」と語る。

また、換気徹底のルールについても「冬場は寒くて窓やドアを開けたままにできないので、それを考慮したルールを設けるべきでは」と意見を述べる。「ルールに従って窓やドアを開放し、寒さ対策のためにストーブを使用する店も出てくるでしょうが、火災や一酸化炭素中毒など感染症以外のリスクが高まることもあり得ます」と懸念を口にした。

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2、消費者にとっての使い勝手の悪さ
一方、渋谷の『肉ダイニングRAKUGAKI』店長・佐々木将介氏は、消費者にとっての使い勝手の悪さを指摘。「確かに上手く使えばお得なキャンペーンですが、わかりづらい点が多く、手続きも煩雑な印象を受けます」と語った。

「年配の方など、オンライン予約サイトを上手く使いこなせない方もいらっしゃるでしょうし、食事券を事前に購入するのも手間がかかりますよね。何より、どのお店でも気軽に使えるサービスではないのが気になります。このキャンペーンを機に、外食への関心が高まるのは歓迎です。ただ、感染リスクを気にして外食を控えている方が『Go Toイートキャンペーンでお得に飲食できるから、外食を解禁しよう』と本当に思うのかどうか……。せめてもう少し使いやすい制度なら、飲食業界も盛り上がると思うのですが。現状の制度では、飲食業にとっても消費者にとってもメリットはあまり大きくないと言わざるを得ません」

「Go Toイートキャンペーン」で救われるのは誰か

2つの事業に各767億円ずつの給付金を拠出し、鳴り物入りでスタートする「Go Toイートキャンペーン」。コロナ禍で打撃を受けた飲食業界の復興につながると期待する人や、お得に外食できることを喜ぶ消費者もいる一方で、当事者である飲食店の反応は芳しくない。

「弱者を救いたいのか、強者を救いたいのか、キャンペーンの真意が読めません。本来であれば経営が厳しくなっている店に資金が流れるべきですが、経営目線で言えば、おそらく資金の取り合いになるはず。結局は、今ある格差がさらに拡大することになるかもしれませんね」(硲氏)

果たして、「Go Toイートキャンペーン」は困窮する飲食店にとっての追い風となり得るのか……。今後の情勢に注目したい。

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小晴

ライター: 小晴

美容系雑誌編集者・ライターを経てフリーライターに。品川区のローカルニュースサイト「品川経済新聞」記者として、多くの飲食店取材に携わる。趣味は食べ歩き・飲み歩きと銭湯。