飲食店の9割が原材料高騰の影響を受ける。値上げに踏み切った店舗は43%
原材料費や物流コストの高騰などによって、飲食店での値上げが相次いでいる。コロナ禍での人手不足やロシアによるウクライナ侵攻などが背景にあり、特に食肉や小麦粉、原油などの高騰が顕著だ。加えて、2022年4月28日には1ドル131円台にまで円安が進行し、2002年4月以来20年ぶりの安値となった。急激な円安による原材料高騰もあり、販売価格へ転嫁せざるを得ない状況となっている。
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こうしたなか弊社が運営する「飲食店リサーチ」では、飲食店の現状を調査すべく、「原材料の価格高騰」に関するアンケート調査を行った。『Foodist Media』では、この結果を紹介する。
■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:502
調査期間:2022年4月25日~2022年4月26日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「原材料の価格高騰」に関するアンケート調査
90%以上の飲食店が原材料費高騰の影響を受けている
まず、原材料費の高騰が営業に影響しているかどうかという質問には、「影響している(59.0%)」との回答が半数以上となった。「やや影響している(31.1%)」との回答と合わせると、90.1%もの飲食店が原材料費高騰によって何らかの影響を受けていることになる。
また、影響を受けていると実感している品目については、「食用油(68.4%)」が最も多く、「小麦粉、小麦加工品(63.3%)」、「牛肉、牛肉加工品(40.5%)」と続く。食用油については、原料の大豆や菜種の需要増によって日清オイリオグループが2022年4月1日納入分から家庭用・業務用の食用油を値上げしており、この影響も大きいと見られる。同様に、輸入小麦の価格引き上げや「ミートショック」とも言われる輸入牛肉の価格高騰も大きい。
仕入総額の増加が商品やサービス価格に反映されている
原材料費高騰の結果、2022年3月の仕入総額が2020年同月と比べて増えたかという質問に対しては、「2021年3月より10%以上増えた(25.7%)」という回答が最も多かった。それ以上増えたという回答を含めると、実に73.1%もの飲食店で仕入総額が増えていることになる。
また、原材料費高騰によって商品やサービスの価格を「値上げした」または「値上げを検討中」と答えた飲食店では、従来の価格と比べて「5〜10%未満(57.5%)」の値上げを行った(または行う予定)という回答が半数以上となった。
食用油や小麦粉などをはじめとした原材料の値上げ幅も、数%〜10%に収まっていることが多く、原材料費の高騰がそのまま商品やサービスの価格に反映されているとも考えられる。
2022年1月から4月までの売上と利益については、「増収増益(17.5%)」、「売上も利益も横ばい(17.7%)」、「減収減益(22.1%)」など、全体的にはばらけた回答となった。しかし、7割以上の飲食店で仕入総額が増えているなか、23.7%の飲食店で利益が出ていることも明らかになった。
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飲食店の多くがメニュー価格の値上げとともにコストの削減に取り組む
こうしたなか、飲食店は利益を出すため、または赤字を防ぐためにさまざまな対策を行っている。調査の結果を見ると、「メニュー価格の値上げ(43.6%)」、「人件費・光熱費などの削減(42.8%)」、「集客に力を入れ売上向上を目指す(39.8%)」という回答がそれぞれ4割近くを占めた。
では、こうした対策に踏み切るうえで、具体的にどのような工夫を行っているのだろうか。
■メニュー価格の値上げを行った飲食店では
「メニューそのものの見直しをする」との回答が多数。例えば「セットの内容を変える」、「ボリューミーに見えるよう盛り付け方を工夫する」など、お客の満足感を下げないための努力が垣間見えた。
■人件費・光熱費などの削減を行った飲食店では
「最少人数での営業を行い、アルバイトなどのスタッフを減らす」という回答も多かった。一方、離職を防ぐために「休業支援金などの申請を行う」といった店舗も見られた。
■集客に力を入れ、売上向上を目指す飲食店では
最も目立った回答は、「SNSでの発信を強化する」というもの。SNSに加えて、ウェブサイトの再構築やメールマガジンの配信、Googleビジネスプロフィールを利用するといった回答も見られた。また、SNSを通じて「値上げの告知」や「価格転嫁への理解を求めた」という声もあった。
このように、多くの飲食店では原材料費の高騰に対して、値上げを行いつつもさまざまな努力を行っているのが現状だ。ウクライナ情勢の不透明感や、円安などの状況は今後もしばらく続いていくとみられる。