飲食店の「スタッフ教育」、店側が抱えている課題は？ 経営者にアンケート調査

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人手不足が深刻化する昨今、従業員の育成に頭を悩ませている飲食店経営者も多いのではないだろうか。そうしたなか、弊社のリサーチサービスである「飲食店リサーチ」では、飲食店経営者・運営者を対象に従業員育成に関するアンケート調査を実施した。今回は、その結果から飲食店従業員の育成事情を探っていく。

飲食店の73.8％が実務経験を通じた育成を実施

まず、直近3年間における従業員の定着率（＝[入社した人数－退職した人数]÷入社した人数×100）について伺ったところ、24.4％が「95～100％」と回答し最多となった。全体では、「75％以上」との回答が半数を占めるものの、特別な偏りはなく、店舗ごとに事情が異なるようだ。

直近3年間における従業員の定着率

次に、今現在、従業員育成の必要性を感じているか調査したところ、77.8％もの店舗が従業員の育成を「概ね必要だと感じている」（感じている＝47.4％、やや感じている＝30.4％）ことが明らかとなった。残る22.2％は、従業員育成の「必要性を感じていない」と回答している。

77.8％もの店舗が従業員の育成を「概ね必要」だと感じている

さらに、従業員育成の必要性を「感じている」、「やや感じている」と回答した方に、従業員の育成に人手や時間を充分に充てられているか尋ねた。最多は「やや不足している」との回答で50.5％。「不足している（36.9％）」との回答も含めると、「概ね不足している」と感じている店舗は、87.4％にも及ぶ。「充分である」との回答はわずか12.6％で、多くの店舗が従業員育成の必要性を感じつつも、充分な人手や時間をかけられていない状況にあることが浮き彫りとなった。

従業員の育成に人手や時間を充分に充てられている店舗はわずか12.6％

続いて、従業員の育成方法について伺った。最多は、「OJT（※1）」との回答で、73.8％もの店舗で実施されている。これに「ロールプレイング（※2）（36.6％）」、「マニュアルを読んでもらう（28.0％）」が続く。全体を見ると複数の育成方法を組み合わせている店舗もあった。

※1：OJT＝実務のなかで仕事を覚えてもらうこと
※2：ロールプレイング＝現場に近い疑似的な状況の中で研修を実施すること

従業員の育成方法の最多は「OJT」で73.8％く

各店さまざまな工夫を行っているが、深刻な人材不足が課題の店舗も

最後に、従業員育成における課題や工夫を伺った。課題については、「育成以前に人手不足」、「人材が定着しない」など、複数の店舗から人手不足を訴える声が寄せられた。このほか、「途中で成長が止まる」、「サービス差がでる」など、各店さまざまな課題を抱えているようだ。

■課題に感じていること
・社員教育を実施したいが、人員不足でそこまで手が回らない（北海道／居酒屋・ダイニングバー／1店舗）
・辛抱強くゆっくり教えて育てるスピードと、途中で退職する割合があわない（大阪府／イタリア料理／2店舗）
・こちら側の教育が悪いのもあるかと思いますが、入社したときは一生懸命だが慣れるとすぐに怠慢になる傾向を課題に感じます（大阪府／ラーメン／3～5店舗）
・なかなか統一オペレーションにならない（東京都／お弁当・惣菜・デリ／6～10店舗）

工夫についても、「個性を意識した育成」、「スキルアップの場の提供など」など、多彩な意見が寄せられた。従業員の育成に悩んでいる方は、各店の工夫を参考にしてみるのも良いだろう。

■工夫していること
・一人一人の個性を大事にし、その人に合った教育を行っている（神奈川県／洋食／1店舗）
・私自身の経験をもとに幅広く（経営学、経理、調理、接客コミュニケーション、人材育成など）、不定期で社内研修を実施している（東京都／カフェ／2店舗）
・専門料理なので興味と知識が深まるような話題を仕事中の会話にするようにしている（東京都／専門料理／1店舗）
・営業時間内に問題があれば、遅くともその日のうちに具体的に是正するようにしている。その際、なぜそのようなことをしたのか、それは自身で正しいと思っての行いなのかを最初に聞くようにしている（大阪府／居酒屋・ダイニングバー／2店舗）

今回のアンケートでは、従業員育成の必要性を感じながらも、人手や時間を充分にかけられない様子が読み取れた。しかし、従業員の育成は、飲食店の成長に欠かせない重要な要素だ。今一度、自店舗の従業員育成について振り返ってみてはいかがだろうか。