三軒茶屋『あかんぼ』を坪月商35万円に導いたコロナ禍の「業態転換」【連載:居酒屋の輪】
繁盛している居酒屋は必ずどこかでつながっている。名店誕生までのストーリーを探りつつ、また別の新しい名店を紹介してもらう連載企画。前回登場『酒肴あおもん』の渡辺慎一郎さんが「彼の人間力は日本屈指です!」と褒め称えていた『あかんぼ』の店主に会うため、三軒茶屋駅から茶沢通りを北へと向かった。
「パパをとらないで〜!」と怒る謡ちゃんをなだめつつ、和やかなムードで話をうかがうことになった今回。『あかんぼ』の店主・武居佑真さんは、料理の仕込みと育児を両立しながら、取材にも快く応じてくれた。
経営が軌道に乗ったきっかけはコロナ禍での業態転換
2018年11月、『あかんぼ』はカウンターにずらりと並べた大皿のおばんざいを売りに創業。しかし、コロナ禍では大皿料理が受け入れられず「できる限りの感染対策は行いましたが、ラップをした大皿料理を見てそのまま帰ってしまう予約の団体客さまもいました」と、武居さんは悲しそうに3年前を振り返る。ちょうど謡ちゃんが奥さんのお腹の中にいたころ。居酒屋経営から逃げ出すわけにはいかなかった。
「緊急事態宣言からしばらくは協力金で凌ぐことができましたが、ほとんど収入のない期間が続き、やがて資金は底をつきました」
三軒茶屋は人気エリアだけありテナント料が高く、閉業や移転をする飲食店も多かった。一気に集客が難しくなり、経済的にも精神的にも追いつめられる中、武居さんが選んだのは中華料理をメインとする業態転換だった。
「きっかけは事業再構築補助金です。制度に乗っかり、何か新しい業態を始めようと周囲の飲食店をリサーチしたところ、夜間営業している中華料理店が少ないことが分かりました。それで2021年5月に屋号を『中華料理 BABERUTH』と改めたんです」
残念ながら補助金の審査は通らなかった。しかし、「その勢いで始めた中華料理のランチがSNSでバズったんです」と武居さんは笑う。
