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ニュー中華酒場『代官山ライチ』、“普段使い”と“目的来店”の両方を狙った業態戦略

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各スタッフのおすすめ料理や、専用冷蔵庫から好みのワインを取り出すスタイルなどもボードで解説

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数字を元にした計画を立て、短期間でPDCAを回しDXも推進

楽天ではWebサービスのプロデューサー、リクルートではメディア戦略などを担当していた染谷氏だが、そうした経験はどのように飲食店経営で活かされているのだろうか。

「土屋からよく言われるのは、とにかくカスタマーの声や数字データを元にして計画を立ててから、素早くPDCA(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善のサイクル)をまわしているということですかね。Webサービスを運営してきた中で、日々カスタマーの声を拾い、データ分析を徹底し企画の精度を上げながら実行するということは叩き込まれましたから」

とはいえ、会社員時代の反省点として「やらなくてはわからないことの線引きをうまく出来ていなかったため、答えのない問いに対してもパソコンと睨めっこしてデータをこねくり回していた」と話す。そのため今は「やってみなくてはわからないこと」の線引きをして、スピード感を持って実行することを常に意識しているという。

「あと意識しているのは『カスタマーファースト』です。飲食店の場合『これが美味しいよ、食べてみて!』というプロダクトアウトな発想が多いと思いますが、『お客さま目線でどうなの? 何が嬉しいのか?』ということは、お弁当でも『代官山ライチ』でもめちゃくちゃ言っていますね。土屋が根っからの飲食人だからこそ、僕はあえて飲食の素人のまま、カスタマー側で居続けることを強く意識して、バランスを取りながらメニューやサービスを設計しています」

『代官山ライチ』の場合、家賃相場の高いエリアで、手頃な価格で料理を提供しているが、どうやって採算を取るのだろうか。

「採算を取るためにはやはりFLコスト(食材費+人件費)をどう下げるかということだと思いますが、そのために当たり前レベルでのDX化はしていますね。オーダーにかかる人手をモバイルオーダーで節約する、Airレジにすることによって会計の手間やミスを減らす、売上等の数値データは自動集計サービスを使いリアルタイムで細かく把握する、Webサービスでシフト作成を行う、そして各データは統合して細かく分析するなど、古巣のサービスをフル活用しています。その上で食材仕入れの最適化や無駄のない人材配置などを実現していくことで、長期的にFLコストを下げていく戦略で考えています」

一方、集客としては近隣の美容室やアパレルショップにスタッフがまわり、チラシを手渡したり、近隣住民へのポスティングも行ったりと、地道な作業もしている。

「近隣の方に来てもらうためには、やはり長い目で見た地道な宣伝が必要だと思って。口コミなどの要素も大きいので、時間をかけていこうと思っています」と明かす。

このほか「即効性はないがタッチポイントを多くしておきたい」と、Googleビジネスをはじめ、食べログ、ホットペッパー、ぐるなびなど各種グルメサイトも活用。Instagramも20代前半のアルバイトスタッフの意見を聞きながら、毎日1回は投稿するようしているという。

取材日時点でオープンから約1か月のため、客数・売上はまだまだだというが、平均客単価は4,000円程度で推移。「代官山で飲む場所がない」と話していたアパレル店員や美容師たちのニーズをしっかりつかみ、ローカルの方々含め、さまざまな年代層が訪れているという。

「直近の課題は店の認知です」と話す染谷氏。今後は地元イベントへの出店や、地盤が整ったらデリバリーを始めるなどの計画もあるという。『代官山ライチ』からはニーズの隙をついた出店で、代官山エリアの新たな飲食店の可能性を切り開きそうな予感がした。

『代官山ライチ』
住所/東京都渋谷区猿楽町26-2 SARUGAKU C棟B1F
電話番号/ 080-7121-3938
営業時間/17:00~24:00、土日祝15:00~24:00
定休日/月曜
席数/テーブル18席、カウンター 4席
https://chakas.tokyo/lychee/
https://www.instagram.com/daikanyama.lychee/

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。