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月商400万円が850万円に倍増! 『串焼きと天ぷら 春子屋』の「二枚看板戦略」とは

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『串 天ぷら 春子屋』のフードメニュー。串焼き、天ぷらの二枚看板メニューに加え、おでんをもうひとつのメニューの柱にしており、12カテゴリーで計100品をラインアップしている。串焼きは税抜き199~249円(219~274円)、天ぷらは399~499円(439~549円)、一品料理は499~699円(549~769円)が中心価格帯

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二枚看板戦略によって専門性と大衆性の両立を図る

『春子屋』が二枚看板戦略を採り入れたのは、2021年3月に同じ御徒町エリアにオープンした『おでんと焼売 まつうら食堂』の成功がきっかけだった。屋号に表れている通り、『まつうら食堂』はおでんと焼売が二枚看板商品。『春子屋』よりも御徒町駅から離れており、やや不利な立地だったにもかかわらず、坪月商が45万円を超える繁盛ぶりを見せる。

「コロナ禍によって離れてしまったお客様を呼び戻すには明確な売りが必要だと考え、当時、勢いを増していた焼売酒場に着目しました。ただ、専門店は利用動機が限定され、流行り廃りの影響も受けやすい。そこで焼売酒場におでんを組み合わせ、専門性と大衆性の両立を図ろうと思ったわけですが、それが想定以上の売上につながりました」と羽毛田社長は『まつうら食堂』を開発した狙いを説明する。

『酒場 春子屋』オープン当時のメニュー表。鮮魚料理を売りにしていたが、この段階で天ぷら、串焼きのメニューカテゴリーも用意していた

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『まつうら食堂』の二枚看板戦略の成功モデルを『春子屋』に横展開したわけだが、特筆すべきは『串焼き 天ぷら 春子屋』にリニューアルする際、ゼロからメニューを組み直したわけではないということだ。

上に『酒場 春子屋』のオープン当初のメニュー表を別掲したが、その時点ですでに串焼き、天ぷらのメニューカテゴリーはあった。フードメニューの5割を入れ替える大幅なメニュー改定だったものの、「売れ筋だったメニューカテゴリーの品揃えを拡充し、それを看板メニューとして前面に打ち出した」と羽毛田社長が説明するように、既存メニューをブラッシュアップする形によって売上を倍増したのである。

写真手前左は天ぷらの売れ筋である「しいたけえびしんじょう」(1個499円)、「大根天」(1個499円)、「ヤングコーン天」(1本599円)。同手前右は「おまかせ串5本」(999円)、同奥は「おまかせ天ぷら5品」(999円)

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天ぷらは品数を9品から22品に拡充し、小ポーションにした

では、メニューをどう組み替えていったのか、具体的に見ていこう。

リニューアル前の『酒場 春子屋』のフードメニューは12カテゴリーで約100品を揃え、平均皿単価は税抜き498円。リニューアル後の『串焼きと天ぷら 春子屋』も12カテゴリーで約100品を揃え、平均皿単価は税抜き504円と、トータルの商品数や価格設定はあまり変わっていない。

大きく変更したのが天ぷらと串焼きの品揃えだ。天ぷらは単品9品から22品に拡充。従来はエビやキス、イカなどオーソドックスな天ダネが中心だったが、そこにおでん出汁で炊いたダイコンをタネに用いた「大根天」(579円)や「豚バラ肉天ぷら」(439円)、「明太子天ぷら」(579円)などの創作天ぷらをメニューに追加した。

また、定番17品のほかに月替わりの季節の天ぷら5品を用意している。取材時には「ヤングコーン天」(659円)、「しいたけえびしんじょう」(579円)などを揃えており、いずれも天ぷらの売れ筋トップ5にランクイン。商品サイズも変更し、リニューアル前はキスは2尾、海老は3本を一人前サイズにしていたが、「いろんな商品を楽しんでいただけるように1尾、1本単位で注文できるようにしました」と羽毛田氏は言う。

写真手前から時計回りに、「煮干し出汁おでん おまかせ5種」(899円)、「鶏出汁としじみ出汁 Wスープの中華そば」(699円)、「本気の生アジフライ」(699円)

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刺身は思い切ってメニューからカット。代わりにおでんを追加

一方、串焼きは単品9品から20品にメニューを拡充。焼鳥を6品から10品、焼とんを3品から5品に増やし、野菜の串焼き4品を追加して商品の選択肢を増やした。

天ぷら、串焼きの商品数を増やした分、メニューを絞り込んだのが一品料理と〆のメニューだ。また、売れ筋のカテゴリーでもあった鮮魚料理を思い切ってカットしたが、これには原価コントロールを図る狙いもある。代わりに『まつうら食堂』の看板メニューでもある煮干し出汁おでん11品をメニューのもう一つの柱として投入しているが、鮮魚料理と異なり、おでんは税抜き199~249円(219~274円)と単品価格が低く、追加注文につながりやすいうことに加え、原価を抑えられるメリットもある。

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。