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『裏の山の木の子』のオーナーは空想上の人物!? 独自の戦略で月商1,300万円超え!

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『裏の山の木の子』を運営する株式会社AP B.CUEの代表取締役社長・田中裕大氏

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2021年12月3日に渋谷店、2022年3月23日に恵比寿店がオープンした『裏の山の木の子』。メインの料理であるキノコを使った火鍋だけではなく、コンセプトを作る際に「空想上の人物」をオーナーとして設定するなど、オリジナリティーあふれる店作りが魅力のお店だ。

そこで今回は、同店を運営する株式会社AP B.CUEの代表取締役社長・田中裕大氏に、独自のコンセプト作りに至った経緯などを聞いていく。

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店舗のシンボルなども「空想オーナーならこう考える」と作成されたという

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コンセプトづくりは「空想オーナー」を立てるところから始まった

『裏の山の木の子』が独特なのは、オーナーが空想上の人物という点だろう。実在の人間ではなく、空想オーナーを立てることになったきっかけは?

「店舗のコンセプトを考える際に、店舗デザインに関わるデザイナーさんが出した『空想上のオーナー像を作ってみるのはどう?』というアイデアが発端です。そこからデザイナーさんと僕ともう一人の社員の3人でチームを作り、オーナー像を考えていきました」

空想オーナーは日本の田舎で育ち、おばあちゃんが作る汁物や鍋料理が大好物で、裏山で採れたきのこの美味しさと珍しさに心を踊らせた子供時代を過ごす。大人になり、旅行先で訪れたアジア諸国でその土地ならではの具材が入った鍋料理に出合う。その経験から「鍋は自由でいい」と着想を得て、きのこをメイン食材にした火鍋を提供することにした……というのがオーナーの設定だ。

店のコンセプトよりもさらに踏み込んだイメージ作りに踏み切ったのは、会社で運営する飲食店の弱点を補いたかったからだという。

「弊社は多店舗展開を前提に店づくりをしてきましたので、個人店のようなコンセプトを設ける際にも、明確な“基軸を示すオーナー”という存在がありません。それが小規模ブランド運営の場合に、判断基準が曖昧になるデメリットになっていたんです。そこでオーナーのペルソナがしっかりしていれば、そういうケースに直面しても迷わないんじゃないかという狙いがありました。お客様のペルソナを想定することは多いかもしれませんが、オーナーのペルソナが定まっていることも店のカラーになりますしね」

「たまにお客様から『オーナーさんに挨拶したい』と言われて困ることも」と笑う田中氏

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空想オーナーのメリット・デメリット

空想オーナーを立てたことで良かった点は?

「店舗運営に関わる全員の意思統一がしやすくなったのはとても大きなメリットです。何かを決めたり判断する際に『このオーナーならこう考える』という店としての軸がぶれなくなっていますね」

新たな試みを行ったことで、田中氏の考え方にも変化が見えるという。

「店舗のコンセプト作りのアプローチが変わったと思います。もともと弊社はどの食材を使うか、産地をどうするかなど、店のブランドのストーリーを大切にしています。それらを決める際にも間接的な要素が充実していることで、アイデアが出しやすくなったと感じています」

一方、オーナーが空想上の人物であることの懸念点もあるんだとか。

「オーナー像がしっかりしていることで、将来的に店舗が新たなチャレンジをする際の壁になるかもしれないなとは思っています。そういう場面になれば、もしかしたらオーナーのペルソナ自体を見直す可能性もありますね」

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36