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「ミシュランガイド東京2024」発表会レポート! 『青空』は3年ぶりの新三つ星に

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『モノリス』石井剛氏(左)と握手を交わす『マス』サンティアゴ・フェルナンデス氏(右)

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ペルー発のニュージェネレーション『マス』が初掲載で二つ星を獲得

今年度のセレモニーで二つ星評価を受けたのは33軒。象徴的だったのは唯一の初掲載となった『マス』の存在だろう。2022年7月、ペルーを代表する料理人であるヴィルヒリオ・マルティネス氏監修のもとで誕生し、愛弟子のサンティアゴ・フェルナンデス氏がイノベーティブな料理の数々を手掛けている。二つ星評価につながったのは、ペルーの自然をテーマとしながら日本の食材にもフォーカスし、両国の多様性を表現している点。バラエティ豊かな世界各国の美食が集う、東京のグルメシーンを牽引する新たなキーパーソンとなりそうだ。

2008年から連続で二つ星を獲得し続けている『てんぷら 近藤』近藤文夫氏

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指導者として業界の発展に寄与した料理人を称えるメンターシェフアワードを受賞したのは『てんぷら 近藤』の近藤文夫氏。厚い衣で魚介を包むのが主流だった江戸前の天ぷらに、薄い衣や季節野菜を取り入れるといった現代の潮流を築いた立役者だ。積極的にレシピを公開するなど、熱意を持って後進育成に尽くし続けた結果が評価された。「まだまだ自分は80点の男だと思っています」と謙遜しながら感謝を述べる姿に、会場からは盛大な拍手が巻き起こった。

■二つ星評価(遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理)を受けた33店(★★)
『神宮前 樋口』(日本料理・渋谷区)
『傳』(日本料理・渋谷区)
『オマージュ』(フランス料理・台東区)
『ナベノ-イズム』(フランス料理・台東区)
『アサヒナガストロノーム』(フランス料理・中央区)
『エスキス』(フランス料理・中央区)
『銀座 小十』(日本料理・中央区)
『銀座 しのはら』(日本料理・中央区)
『銀座 福樹』(日本料理・中央区)
『久丹』(日本料理・中央区)
『木挽町 とも樹』(寿司・中央区)
『鮨 かねさか』(寿司 中央区)
『鮨 よしたけ』(寿司・中央区)
『スリオラ』(スペイン料理・中央区)
『てんぷら 近藤』(天ぷら・中央区)
『ベージュ アラン・デュカス』(フランス料理・中央区)
『紀尾井町 福田家』(日本料理・千代田区)
『セザン』(フランス料理・千代田区)
『マス』(イノベーディブ・千代田区)
『赤坂 菊乃井』(日本料理・港区)
『臼杵ふぐ 山田屋』(ふぐ・港区)
『クローニー』(フランス料理・港区)
『すきやばし 次郎 六本木店』(寿司・港区)
『晴山』(日本料理・港区)
『青草窠』(日本料理・港区)
『天ぷら 銀屋』(天ぷら・港区)
『ナリサワ』(イノベーティブ・港区)
『ピエール・ガニェール』(フランス料理・港区)
『プリズマ』(イタリア料理・港区)
『フロリレージュ』(フランス料理・渋谷区)
『明寂』(日本料理・港区)
『リューズ』(フランス料理・港区)
『ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション』(フランス料理・目黒区)

今年度、新しく一つ星評価と二つ星評価を受けた掲載店の代表者たち

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一つ星評価を受けた138軒のなかで新規掲載店は16軒。2023年1月オープンの『メティス 六本木』(フランス料理・港区)、2023年2月オープンの『レテール』(フランス料理・新宿区)、2023年4月オープンの『イル・リストランテ ニコ・ロミート』(イタリア料理・中央区)など、誕生から間もない掲載店もあり、インスペクターの調査力の高さがうかがい知れる結果となった。

ミシュラングリーンスターに輝いた『ノル』の野田達也氏

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持続可能な活動を積極的に行う飲食店にスポットを当てるミシュラングリーンスターには、一つ星の『ノル』(現代風料理・中央区)が新たに仲間入り。土地にダメージを与えない循環型の農業を意識した、都会ならでの情報発信などが評価されており、セレモニー会場でも「模索しながら生産者さんと一緒に連携を取り、手探りで活動を続けております。課題もたくさん見えてきており、業界全体でもっと大きな流れを作れたら」と、広い活動を呼びかけていた。

ちなみにミシュラングリーンスターは11軒と、この分野でも東京が世界一の掲載件数を誇る。料理人の調理技術だけでなく、環境に対する意識の高さも再認識できる評価だろう。

謎のベールに包まれながら存在感を増すインスペクター

「価格以上の満足感が得られる料理」を評価するビブグルマン。今年度の掲載は127軒であり、特徴としては新規掲載店9軒のうち3軒がラーメン店であること。評価を受けた『ゼアー イズ ラーメン』(ラーメン・杉並区)、『Japanese Ramen 五感』(ラーメン・豊島区)、『ラーメン ブレイクビーツ』(ラーメン・目黒区)も誕生から間もないなかでの初掲載。とめどなく進化を続けるラーメン業界の“今”を味わえるという点でも、こちらの3軒には大きな価値があるだろう。

ビブグルマンで新規掲載となった店舗の代表者たち

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【注目記事】最年少の三つ星シェフに聞く「料理人の成長の鍵とは?」。『虎白』小泉功二氏インタビュー

おもてなしに優れた個人に贈呈されるサービスアワードを受賞したのは『ポンドール・イノ』の尾崎徹氏。優しい語り口で流暢な料理説明をする演出にはファンも多く、正統派フランス料理店の支配人として業界発展のために尽力してきたことなどが評価された。

『ポンドール・イノ』(フランス料理・中央区)の支配人、尾崎徹氏

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『ポンドール・イノ』は、新設されたばかりの「セレクテッドレストラン」を象徴する店でもあるだろう。これまでのミシュランガイドは「素材の質」「料理技術の高さ」「味付けの完成度」「独創性」「常に安定した料理全体の一貫性」という5つの評価基準が用いられてきたが、「セレクテッドレストラン」では評価対象に制限を設けず、あらゆる角度からインスペクターの主観によって選出されている。謎のベールに包まれたインスペクターではあるが、その存在感はますます大きくなるばかりだ。

果たして「セレクテッドレストラン」は、これまでの掲載店と同様に多くの食通から信頼を集める基準となるのか。2024年12月8日発売の『ミシュランガイド東京2024』や公式アプリをダウンロードしたスマホを片手に、実際に掲載店まで足を運んでインスペクターのおすすめを体感してみるのも良いだろう。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。