飲食店ドットコムのサービス

新店『居酒屋 うちやま』では自らが厨房に。MUGEN内山正宏氏の店づくりの軌跡

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

株式会社MUGEN・代表取締役の内山正宏氏。最新店舗の『居酒屋 うちやま』にて

画像を見る

『なかめのてっぺん』をはじめとする居酒屋業態に加え、『鮨 つきうだ』『天婦羅 みやしろ』などの高価格帯の専門業態も手掛ける株式会社MUGEN。2023年11月には、麻布台ヒルズに客単価1万円の高級居酒屋『居酒屋 うちやま』を開業し、代表取締役の内山正宏氏自らが厨房に立つことでも話題を呼んでいる。

2024年1月3日、ちょうど50歳の誕生日を迎えた内山氏に、20代、30代、40代での店づくりを振り返っていただくとともに、新店『居酒屋 うちやま』への思いと50代からの抱負を語っていただいた。

【注目記事】「100年続くレストランを創る」。一つ星シェフ・手島純也さん、『シェ・イノ』移籍で新たな決意

【20代】厳しい修業から逃げ出したかった下積み時代&大嶋氏との運命の出会い

内山氏が最初の店を出したのは、30歳のとき。ゆえに20代は下積みの時期となるが、意外にも「早く独立したい」という考えはなかったという。

高校時代、父親のように慕った割烹の店主との出会いをきっかけに料理人を志し、専門学校を卒業後、ホテルへ就職。より専門的な知識を学びたいと、1年後に料亭へ転職する。六畳一間に2段ベッドという共同生活で、給料は月10万円。半年に一度は辞めたいと訴えていたというが、それでも6年間続ける。

26歳で、銀座の居酒屋へ。「料亭からしたらレベルの低い仕事をしていると思われても仕方ないけど、自分はカウンター越しに作った料理を出せるのがすごく面白かった」と内山氏。居酒屋の価格帯でクオリティの高い料理を出せていることが自信となり、自分なりに店をよくしようとオーナーに意見をするようになり、クビになってしまう。「自分の意見を通したかったら、自分でお店をやりなさい」と言われたけど、まだ独立という考えはなかった。

ちょうどこの頃、名古屋の「かぶらやグループ」の東京一号店が銀座にオープンし話題になっていた。活気ある接客の中心人物だったのが、のちに『てっぺん』をともに立ち上げる大嶋啓介氏。「クビになったあと、一緒に働くようになってますます惹かれ合って。大嶋が30歳の年に独立しようと決め、僕はさらに料理の経験を積んで合流しました」

内山氏は、1974年福井県生まれ

画像を見る

【30代前半】『てっぺん』で繁盛店のモデルを築き、『なかめのてっぺん』で炉端焼きのブームを作る

「日本一の居酒屋」をコンセプトに、東京・自由が丘に出店した『てっぺん』は、開業まもなくヒット。とはいえ「名物の朝礼とか、元気な接客が話題になって、どちらかというと料理はそこまでフォーカスされていませんでした(笑)」と内山氏。「多店舗化よりも、独立者を多く輩出したい」という大嶋氏の意向を受けて、当時副社長であった内山氏が社内独立1号店として『なかめのてっぺん』を任された。

「ここで初めて、30代、40代でも続けられることをやっていかないといけない、と感じるようになったんです。自分で言うのもなんですが、僕自身グルメ偏差値は低くはないと思っていたので、自分が好む料理は少し上の世代にも受けるだろうと感じていました。自分がデートで女性を連れて行きたい店にしたいと思い、素材を活かした料理というところから炉端焼きが生まれました」

炉端焼きに関しては、「当時、ブームを作った自負もある」と内山氏。『てっぺん』で磨かれた接客力に加え、炉端焼きのライブ感やシズル感が加わり、『なかめのてっぺん』も繁盛店となる。

大人が通える居酒屋の楽しさを詰め込んだ『なかめのてっぺん』(写真提供:株式会社MUGEN)

画像を見る

京都でプロデュースを経験したことで、店舗管理のスキルが向上

実は内山氏は、『なかめのてっぺん』を立ち上げる少し前から、京都の飲食店のプロデュースの仕事も担当していた。立ち上げ1か月で離れて独立に備えるつもりが、クライアントに予期せぬトラブルがあったことで、結果的に6年間面倒を見ることになり、京都にも移住。東京と行き来する生活を送る中で、店舗管理のやり方も変化が生じたという。

「『てっぺん』のお客さんから、『内山君がいないとやっぱり違うね』みたいな声をいただくわけです。僕がガミガミ言えば言うほどスタッフのモチベーションは下がっていて、1人辞め、2人辞め……みたいな。さすがにこれはまずいなと思って、好きにやっていいよと現場に任せた途端、業績が伸びたんです。お客さんからも『みんな頑張っていていいお店だったよ』と評価いただけるようになったことが、自分がお店に立っているよりも喜びが大きくて。自分がいなければいけない店より、MUGENという会社を通じてスタッフを育てたいと感じて、そこから店舗展開を進めるようになりました」

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/