行列のできるキッチンカー『煮込み伝次』が実店舗で復活。月商200万円を目標に神保町を席捲
「牛すじ肉めし」(並850円)、「牛すじカレー」(並1,000円)などのヒット商品とともに、2台のキッチンカーで、都内10数か所を巡っていた『煮込み伝次』。2023年11月、神保町に念願の実店舗をオープンさせた。
運営を行う株式会社伝次は現在、『やきとり伝次』、『うどん伝次』、『やきにく伝次』、そして最も新しい店舗となる『煮込み伝次』と、4つの異なる業態を展開している。「ここまで一筋縄ではなかった」と語る株式会社伝次の専務取締役・国松利安氏に、『煮込み伝次』実店舗立ち上げまでの紆余曲折をうかがった。
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兄との二人三脚。始まりは東京スカイツリー足元のカフェから
株式会社伝次は、国松利安氏の兄・久益氏が社長を務めている。
「兄は店舗などの設計を請け負う設計事務所も経営していて、株式会社伝次が運営する店舗の設計にも携わっています。私は飲食関係の出身なので、各店舗の品質管理や人材育成などの実務面を担当しています。ちなみに私たちの父は飲食店とは無縁で、プレス工場を経営していました。仕事に真剣に向き合う真面目な人でしたが、私が高校生の時に亡くなってしまって……。就職したばかりの兄が家計を支えてくれたおかげで、私は料理の専門学校へ進んで、日本料理店で板前になることができました」
二人が初めて自分たちのお店を持ったのは2010年。場所は押上だった。東京スカイツリー開業の2年前で、スカイツリーの高さが更新されていく様子が毎日のように伝えられていた頃だ。
「完成前にもかかわらず、すでに観光名所になっていて、押上にたくさんの人が集まっていました。そこで兄と、『押上でカフェをやったら面白いんじゃないか』という話になったんです」
東京スカイツリーを目前に臨める、最高の物件に出合えたこともあり、国松さんたちは早速カフェをオープンする。カフェの名前は『さくらCafé 向島』。タワーに見立てた、高さのある巨大なパフェ「スカイツリーパフェ」は、当時さまざまなメディアに取り上げられ、ヒット商品となった。
焼き鳥店への転身が大成功。「街にうまくハマった」
「8坪程度のお店でしたが、テレビや雑誌で紹介されたこともあり、カフェは大繁盛。忙しくて充実した毎日ではありましたが、一方で、いつか飽きられてしまうという不安もありました。そんな時に、ちょうど隣のフロアが空いたんです。異なるジャンルの飲食店をやるなら今だと思い、『やきとり伝次』をオープンさせました」
安く早く提供できる焼き鳥は、押上という下町にうまくハマった。平日は地元住民や仕事帰りの会社員らで連日埋まり、土日は観光客が押し寄せた。売上は瞬く間に月商200万円に届くようになったが、一方で、国松さんの予想通り、カフェの方の客足は落ちてきてしまった。
「いろいろと考えた末、カフェと焼き鳥店の間の壁を取り除いて、全スペースを『やきとり伝次』に統一したんです。結果的に売上は2倍以上になりました」
