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東京都が「カスハラ防止条例」制定へ。約6割の飲食店がカスハラを経験、抑止力なるか?

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飲食店に限らず、客から理不尽な要求やクレームを受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻化していることを受け、東京都においてカスハラ防止条例の制定を検討していると小池都知事が明らかにした。弊社が2020年に行った調査では約6割の飲食店がカスハラを受けた経験があると回答している。今回の条例制定がこうしたハラスメントの抑止力につながるのか、東京都で検討されているカスハラ防止条例について解説する。

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カスハラ防止条例には罰則を設けず、早期の成立を目指す

小池都知事は2月20日、カスハラ防止条例の制定を検討していると明らかにした。東京都がカスハラ防止条例制定を検討しているのは、客からの迷惑行為を受けた従業員が心身に不調をきたし、最悪の場合は自殺に追い込まれるなど、深刻化していることが背景にある。小池都知事は「カスタマーハラスメントが、都内企業においても深刻化しています。東京ならではのルール作りが強く求められています」としている。

なお、カスハラ防止条例の具体的な内容はこれから検討していくとしているが、早期の制定を目指しており、昨年10月から「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」を開催。2月6日には第3回の検討部会が行われた。

第3回の検討部会では、経済団体、労働団体、学識経験者などから、「どこまで許容できるかを踏まえた業界ごとの取り組みが重要。条例は業界の取り組みの土台・法的根拠として有効」、「今は、罰則をつけることよりも、幅広い行為をカスハラとして禁止する、という態度を示すことが優先」といった意見が出された。

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小池都知事「消費者の立場が上との感覚が間違い」

これまで日本では、1968年に消費者保護基本法が公布されて以降、消費者は行政に「保護される者」として捉えられてきたこともあり、客のほうが立場が上と考える消費者も多かった。そういった客によって、暴言や謝罪の強要などのカスハラ行為が行われてきたことに対して、小池都知事は「カスハラはあってはならない。消費者の立場が上との感覚が間違い」ということを周知することも、カスハラ防止条例の目的としている。

また、カスハラ防止条例では罰則を設けない方向で検討されているという。その理由としては、罰則を設ければ一定の抑止にはなるとする一方で、どこまでを罰則の対象にするかを明確にしにくく、ひとつの条例ですべての業種に対応するのは難しいということが挙げられた。さらに、「悪質なハラスメント行為は刑法の犯罪や民法の不法行為による追及が可能」という意見もある。

カスハラ防止条例は、制定されれば全国初の事例となる。飲食店でもカスハラ行為が深刻化しているため、飲食店事業者は従業員を守るという意識を持ち、事業者としてどのようにカスハラに対応するかを検討していく必要があるだろう。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com