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おでん食べ放題“550円”の『呼炉凪来』。人気爆発、出店拡大の理由はコスパだけにあらず

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SNSで頻繁に拡散される人気メニュー「銀鮭いくらおろしがけ」(528円)。(写真提供:株式会社FOOLISH)

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平均単価3,200円〜、飲み放題コース3,850円〜。低価格を実現するコスト管理

おかわりし放題のお通しおでんは、ワンコイン500円(税別)。客単価は3,200〜3,500円と新宿エリアにありながら気軽に立ち寄れる価格帯であることも人気の理由だ。原価高騰、価格転嫁の時流に反して、どのように低価格を実現しているのだろうか。

「特別な仕入れラインはありません。なるべく自分たちで仕込みをするなど、徹底した原価調整で売値を抑えています。例えば、おでんの具材で人気の大根は、皮むきやカット済みの素材を仕入れるお店も多いですが、うちでは1日100kgくらい自分たちで仕込んでいるんですよ。あとはコース料理だと、原価調整もしやすいですね」

平均単価より高い客単価が見込める宴会は、利益の安定化という面で重要なポイントだ。『炉端とおでん 呼炉凪来』のコースメニュー7品は2時間飲み放題付きで3,850円と、こちらも非常にリーズナブル。プラス550円でおでん食べ放題ということもあり、宴会シーズンは客のおよそ半数がコース料理の予約だ。新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後、需要は伸び続けており、現在は10名以上の宴会が主流という。

「当社の出店戦略として“空中階の大箱”かつ“居抜き物件”を狙っています。僕らのような中小企業にとっては、一等地の大箱物件は見つけることすら難しいし、たとえ路面の顔の綺麗な物件があったとしてもスケルトンでは初期投資がかさむので手が出せません。コロナ禍で飲食店の撤退が相次いでいたからこそ、この西新宿の物件に出合え、改装から1,000万円程度の低コストで新しい業態に挑戦できたことが、後の多店舗展開にも寄与していると思います」

開店直前のおでん鍋は、出汁がしっかりしみた具材でぎっしり

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おでんと大型店は好相性。属人化しないオペレーションで多店舗展開をアシスト

1店舗目の西新宿店オープンから約2年。秋葉原、町田、池袋、調布といった都内だけでなく、帯広、仙台、小倉、天神と全国各地に広がった『炉端とおでん 呼炉凪来』。2024年5月には、豊田店のオープンも控えているという。急速な多店舗展開の実現は、初期投資の低さ、そして属人化しないオペレーションが鍵となっている。

「多店舗展開すると、それだけオペレーションが難しくなります。その課題を払拭したのが、おでんでした。おでんなら、ダシづくりの基本を決めてしまえば、それほど味にブレがなく、多めに作り置きできるというメリットがあります。外食市場を見ても、おでん業態は根強い人気がありながら、大手外食チェーンや圧倒的1位が決まっていないことも決め手になりました」

味がブレにくいことはスタッフの人件費や教育コストを抑えることにもつながる。それにより店舗配属の社員も1店舗につき1〜2名と抑えられると良いこと尽くめだ。さらに、同じエリアに屋号の異なる2ブランドを出店し、その2店舗で社員3名を配置するなど、いかに人材を有効活用するかも徹底している。

「歩いてすぐの場所に系列店があることで、モノの貸し借りはもちろん、人材リソースも柔軟に調整できます。社員同士はコミュニケーションを取って支え合っていますし、アルバイトも毎日の業務に変化を楽しんでいるようです」

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。