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世田谷代田『songbook』流、住宅立地の戦い方。目指すは「日常の延長にあるレストラン」

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世田谷代田『songbook』のシェフ・西恭平氏

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「ミシュランガイド東京」にてビブグルマンにも選出されたイノベーティブフレンチ『Neki』(日本橋兜町)の西恭平シェフによるチームが、2022年11月に世田谷代田にオープンした『songbook』。再開発が進むこの街で、「薪火」をテーマによりコンパクトな距離感で楽しめるレストランづくりに挑む西氏が、同店に描いたビジョンとブランド構築の手法に迫る。

店のテーマは「薪火」

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原点はカフェカルチャー。コンパクトな店づくりの中心に据えたのは「薪火」

下北沢駅周辺の大規模な都市開発に伴い、隣接する世田谷代田の街の装いや暮らしは今、大きく変わろうとしている。名実を兼ね備えた注目のシェフ・西恭平氏が手がける「薪火料理」のレストラン『songbook』もまた、そのうねりを牽引する注目店といって間違いないだろう。

厨房と窯を囲うように設けられたカウンター

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棚いっぱいに薪が積まれたエントランスの先で待つのは、スモーキーな香りで包まれた温かな空間だ。中央には薪火の窯が設けられ、ゆらめく炎を囲むようにやわらかな曲線美を描くカウンターは、まさにこの店のシンボルのよう。

「みんなで薪火を囲みながら食事をするようなレストランをつくりたかった」

西氏はそう語った。農家や生産者から直接仕入れる新鮮な野菜や肉、魚をはじめ、自家製生地でつくる本格ピッツァなど、400度以上にもなる窯で焼き上げる「薪火料理」が『songbook』の顔だ。アラカルトのほか、ランチセットは2,800円から(コースもあり)、ディナーコースは5,000円〜9,000円までと幅広く展開。窯を駆使し、素材本来のうま味が最大限に引き出された料理の数々に、連日多くの客が舌鼓を打つ。

長くフレンチ畑で研鑽を積んだ西氏だが、ここでは薪火調理を軸にさまざまなエッセンスを取り入れる

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5年間シェフを務めた『ビストロロジウラ』(渋谷)や、自身初のプロデュース店『Neki』で「ミシュランガイド東京」のビブグルマンを獲得した西氏が、ここ『songbook』で目指すのは、チームとお客の顔が互いに見える、よりコンパクトな距離感の店だという。

その原点には、2000年代を席巻したカフェカルチャーへの憧れがあった。

「常に自分の核にあるのは、僕がこの道に進むきっかけにもなった『多様なカルチャーと人が食を中心に交わることで生まれる、そこでしか出会えない“体験価値”』です。音楽、インテリア、ファッション、器、アート……さまざまなクリエイターの力が結集することで、また一つの新たなカルチャーが構築されていく。そんな感覚が、当時のカフェにはありました」

内装は、数々の人気飲食店を手がける長田篤氏が担当

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自身が料理人となったいま、西氏が『songbook』で体現するのは「すべてにおいてクオリティを追求した“かっこいい場”をつくりたい」という当時の思いだ。空間、ショップロゴ、スタッフシャツ、エプロンなどのデザインをはじめ、器、音楽、キービジュアルに至るまで、西氏自身がリスペクトするさまざまなクリエイターの作品をミックス。ジャンルを越えたプレーヤーたちの個性を集約し、『songbook』を創り上げている。

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。