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『居酒屋燃えた うらめし屋 赤羽』の再起劇と金言。被害総額2,000万円、店舗焼失も情熱は燃え尽きず

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店舗の火災を乗り越え、新店舗で頑張る濱田裕志氏

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開店から1年も経たずに貰い火で全焼した居酒屋が半年後に店舗名を変えて復活、新たな歴史を刻み始めている。新店舗名は『居酒屋燃えた うらめし屋 赤羽』。被災を自虐的に扱うもので、突然降りかかった不幸・不運を冗談めかして笑い飛ばす逞しさを感じさせる。運営する合同会社Goz(本社:東京都新宿区、代表社員:大西悠吏)を取材した。飲食業を営む人へのアドバイスを聞くと、被災者ならではの金言を口にしてくれた。

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内装にかけた費用も無駄に…

JR赤羽駅からおよそ300m、店舗は通りに面した日当たりのよい場所にある。白い暖簾には、火の玉のイラストの中に反転した「裏」の文字。デザイナー作だけに、洒落たデザインになっており、全面ガラス戸の造りも加えて、暖簾をくぐるハードルが低くなっている。

取材に応えてくれたのは店舗責任者で統括マネージャーの濱田裕志(ゆうじ)氏。神奈川大学経営学部卒業、高校時代は名門の明徳義塾高とも対戦するなど硬式野球部で活躍したが、現在はロン毛にタトゥーという外見上のギャップが楽しい。

暖簾の反転した「裏」がいい味を出している

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前店舗の『ニュー赤羽ニクマレヤ』が焼失したのが2023年12月25日の夕刻。二軒隣のホルモン焼きの店から出火、延焼したもので、濱田氏は当該店舗で勤務していた。

「火が出たのは午後5時前ぐらいだったと思います。最初は向かいの店から『火が出ていませんか』と、ウチから火が出ていると間違われましたが、実際はホルモン焼きのお店の裏から火が出ていました。その時点ではホルモン焼き店の人も自分たちで消火活動をしていましたし、自分たちも危険を感じることはありませんでした。

結構、高い位置から火が出ていたこともあって『大丈夫だろうな』と思っていたのですが、一瞬のうちに店内が煙ばかりになり前が見えないぐらいになりました。『さすがにこれはヤバい』ということで、お客さんにお会計をしてもらって避難していただきました。それまで特に避難訓練などはしていませんでしたが、スムーズに誘導できましたし、貴重品やレジも持って外に出られました」

店内は全焼、人の被害という最悪の事態は避けられたが、什器やテーブルは全て廃棄処分するしかなかった。椅子は何とか使える状態だったため、補修をして現在の店舗で使用している。元々が古い建物であったために、開店時に初期費用をかけて内装を整えたが、1年も使用しないうちに焼け焦げてしまった。当時の経営状況については「健全な経営ができる売上はあった」(濱田氏)というから、営業がストップしたのは痛い。

その後の休業などで得べかりし利益なども考慮すると、被害総額は2,000万円程度と算出された。このような場合には出火元に損害賠償を請求できそうであるが、法律上できないとされている。明治32年(1899)制定の失火ノ責任ニ関スル法律に「民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と定められ、火元に重大な過失がなければ貰い火で被害を受けた者は火元に損害賠償請求できない仕組みになっている。

自前の火災保険でカバーしようにも、それほど補償範囲が広くないものにしか入っていなかった。貰い火ということで保証額も少なく「300万円とか、その程度」(濱田氏)しか補償されず、損害額には全く足りなかった。クラウドファンディングで店舗の再開のための協力を呼びかけたが、開店直後だったこともあり目標額の1,000万円には届かない180万円余に終わった。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/