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月商800万円を売る田町『魚義』。“繁盛法則”を仕組み化し、姉妹店も大ヒット【連載:居酒屋の輪】

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2022年2月15日オープンの大井町『豊洲直送鮮魚と釜飯 二代目 魚義』(写真提供:EatRyze株式会社)

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成功した仕組みを拡張する法則

人材が育ったタイミングで新しい店舗開発にも乗り出した遠藤さん。オフィス街として田町と共通する部分が多い大井町にも進出し、すぐさま経営を軌道に乗せた。

「駅前でビルの新築工事がはじまったのを見て、すぐ問い合わせをしました。まだコロナ禍の影響が強かったこともあり、駅から徒歩1分もかからない絶好の立地にもかかわらず家賃は月80万円ほど。本店と同様の仕組みで店をつくれば、十分な利益が見込める計算でした」

宴会需要に対応し、2023年10月25日にオープンした『魚義 はなれ』

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新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、段々と回復してきた宴会需要。そのタイミングで本店の4軒隣にある雑居ビルの2階を改装してオープンしたのが『魚義 はなれ』だ。大人数での宴会に応じるため、本店よりも広い個室を用意している。

「本店の1回転目は予約サイトでの集客だけで満席になることが多く、その際に案内できる近郊の店舗を立ち上げたいと考えていたところ、タイミング良く近所に空きが出ました」(遠藤さん)

黒い木目の外装で本店との統一感を出し、ひと目で姉妹店であることが伝わる外観に。内装デザインやメニュー内容も揃え、スタッフまで共有するなど、本店の機能を拡張させる目的に沿った店舗である。

最大58人の宴会に対応する『魚義 はなれ』(写真提供:EatRyze株式会社)

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宴会需要が回復した一方、深夜帯の需要が落ち着いたことから営業体制の見直しも図っている。具体的には、満席となるピーク時だけの売上で、しっかりと利益を確保できる仕組みづくりだ。

フリーのグループ利用が増え、カウンター席の需要が落ち着いたこともあり、元々38席だった本店のカウンター席をテーブル席に置き換えるなど、大規模なリニューアルを実施。2024年5月に、元々38席だった本店は48席に拡張された。

1日1回転で利益を確保できる仕組みづくりも功を奏し、本店は月商800万円、はなれが月商600〜700万円、大井町が月商800万円と、外食業界全体が激動の時代にあるなか平均売上は安定して推移。確固たる店づくりのフォーマットを確立させたことから、今後も同じような需要が見込める物件が見つかれば、店舗を増やしていく算段だ。

「コロナ禍で両親には心配をかけてしまいましたが、お米の仕入れもあり連絡する頻度が増えました。(飲食業での成功を)両親は喜んでいるとは思います。そんなに直接的な言葉は聞いたことがないですけど(笑)。これからもおいしいお米を育ててほしいですが、もうすぐ定年になるので、楽をさせたいという気持ちもありますね」

今では実家から取り寄せた「はえぬき」を月間200kg近くも消費し、そのおいしさを東京に浸透させ続けている遠藤さん。慎重に言葉を選びながら経営を安定させた秘訣も教えてくれた。

業態に即した店舗選び、おいしい名物開発、FL比率の設定、成功した仕組みの拡張方法……。一つひとつの法則は飲食店経営者にとって周知の事実かもしれないが、それを競合店より高水準で実現すれば、必然的に経営が軌道に乗るのもまた事実だ。外的な影響に強く、優れた食味で四半世紀以上も愛され続ける「はえぬき」のように、遠藤さんの経営もバランス力が安定の要。変化に合わせて柔軟に、稲穂のごとくしなやかに伸び続ける経営は、いつの時代も強い。

『海鮮と釜飯のお店 魚義 田町駅前本店』
住所/東京都港区芝5-22-8
電話/03-6435-1212
営業時間/16:00〜翌日5:00(土曜・日曜16:00〜24:00)
定休日/なし
席数/48

『魚義 はなれ』
住所/東京都港区芝5-22-9 三田苑2F
電話/03-6275-1116
営業時間/16:00〜24:00
定休日/なし
席数/58

『豊洲直送鮮魚と釜飯 二代目 魚義』
住所/東京都品川区東大井5-16-9 フィルパーク7F
電話/03-6718-4452
営業時間/16:00〜23:30
定休日/日曜
席数/64

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。