消費税込価格を表示せず『新時代』運営会社に措置命令。改めて「総額表示のルール」とは?
居酒屋チェーン『新時代』などを運営する株式会社ファッズが、税抜価格を税込価格のように表示していたとして、消費者庁から再発防止を求める措置命令を出された。今回は、株式会社ファッズに対して措置命令が出された経緯と、総額表示のルールについて紹介する。
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「食べログ」などで税抜価格を税込価格と表示
消費者庁は7月30日、居酒屋チェーン『新時代』などを運営する株式会社ファッズに対して、景品表示法違反があったとして再発防止などを求める措置命令を出したと発表した。
株式会社ファッズは2023年6~12月に、「食べログ」やX(旧Twitter)アカウントにおいて、居酒屋『新時代』など105店舗の商品説明で税抜価格を税込価格として表示していたとされる。例えば、「伝串50円」「ハイボール150円」との表記が実際には税抜価格であるにもかかわらず、「税抜」と明記せずに税込価格として表示していた。
消費税法第63条では「消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない」としており、消費者庁は本件が景品表示法の不当表示(有利誤認)にあたるとして、株式会社ファッズに再発防止などを求める措置命令を出したという。飲食店における消費税の表示に関して、景表法に基づく措置命令が出されるのは初となる。
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2021年4月1日からは総額表示が完全義務化
2021年4月1日から、消費税を含めた総額表示が完全義務化されている。消費者に商品の販売やサービスの提供を行う事業者が価格を表示する際には、消費税を含めた総額を表示しなければならない。2004年から義務化されていたが、消費税が段階的に引き上げられたこともあり、完全義務化は猶予されていた。
1,000円の商品に税率10%が適用される場合の表記例は下記のようになる。
1,100円
1,100円(税込)
1,100円(税抜価格1,000円)
1,100円(うち消費税額等100円)
1,100円(税抜価格1,000円、消費税額等100円)
1,100円(税抜価格1,000円、消費税率10%)
1,000円(税込価格1,100円)
「1,100円」のように総額が明記されていれば、消費税や税抜価格についての記載は不要だ。また、「1,000円(税込価格1,100円)」のように、税抜価格を記載していても、消費税額を含んだ価格を明瞭に表示していれば問題ない。「1,000円+税」のように、総額が明瞭に表示されていない表記は違法となる。
ただし、飲食店の場合はテイクアウトやデリバリーを行うこともあり、その場合は軽減税率が適用される。店内飲食が10%、テイクアウトやデリバリーは8%と異なるため、下記のように表示する必要がある。
1,100円(店内飲食)/1,080円(テイクアウト)
1,100円 ※テイクアウトの場合は税率が異なるため別価格となります
店内飲食とテイクアウトでの総額をそれぞれ記載する、もしくは、10%か8%のどちらかの総額を記載して一方は別価格であることを明示する、といった対応が求められる。
2021年4月1日に総額表示が義務化された際、多くの店舗は表記の見直しを行ったが、気が付かないまま税抜価格の表記が残っている箇所もあるだろう。飲食店経営者は、総額表示のルールどおりの表記になっているか、この機会に改めて価格表示を確認してほしい。