求人募集に65名もの応募! 渋谷『きんぼし』の「採用戦略」と「人材育成術」
4段階のインセンティブ制度を導入。未経験から3~5年で店長に昇格
未経験者の教育と合わせて大事なのは、店舗の運営を担う店長クラスの育成だ。未経験から3~5年で店長に昇格した人が多いことも、マルホならでは企業文化だろう。
「店長には数字、料理のこともわかるように教育しているほか、『人が人を育てる』をキーワードに後継を育てられる人になるよう教えています」
池上氏が店長クラスに対して最近行ったのが「やらなくてはいけない五角形」の作成だ。各人に「調理の技術を上げる」「後輩の育成」など、やらなくてはいけないことを5つ挙げてもらって、それぞれの達成度が今どれくらいなのか五角形のグラフで表してもらう。これにより、各人がやるべきこと、改善すべきことが可視化され、成長が促されたという。
「自分もそうだったのですが、得意分野は放っておいても伸びます。しかし苦手分野は、意識しないと伸びない。そこで五角形グラフの制作を取り入れるようにしました」と池上氏はその理由を明かす。
もう一つスタッフのモチベーションアップに効果的だったという取り組みが、インセンティブ制度だ。7年前よりインセンティブ制度は導入していたというが、2年前に見直しを図り、店舗ごとに目標予算を達成したら各スタッフの月給をアップする仕組みを4段階で取り入れた。
「店長からインセンティブの割合を提案してもらって、話し合って、数字を意識する。モチベーションを高めるだけでなく、店長の数字を見る感覚を養うためでもあります」と二つのメリットがあったという。
とはいえ「数字だけを追うのではなく、商売として大事なことは守る」という飲食人としての原点は忘れない。売上アップを目指すだけではなく、お客にも楽しんでもらい満足度を上げることを最も重要視している。
繁盛店や地方視察、独立支援など社員の成長を促す取り組みも
店長クラスの育成に当たって池上氏が念頭に置いているのは、「独立」を意識した教育だ。「彼らも独立という夢があるので、会社にいて学べることは吸収してほしいし、会社ができることはサポートするようにしています」と池上氏。お店ごとの売上や収支だけでなく、会社全体の売上や収支なども見せて、数字についての感覚を養ってもらっているという。
そして繁盛店視察と社員とのコミュニケーションも兼ねて、参加できる人たちで定期的に飲み会や、地方の生産者や飲食店の視察も行っている。「料理」「スタッフの接客」「お店の雰囲気」すべてを良くするためには、居酒屋だけではなくフレンチやイタリアン、タイ料理など、さまざまなジャンル、価格帯の飲食店を訪れ、スタッフたちに感じてもらうことが大事だと池上氏は考えているのだ。
現在社員の中には、2年後に独立を考えているスタッフもおり、その人の独立サポートも行う予定の池上氏。「今は都内をはじめ物件が高騰している上、物件数も限られるため、初めて独立する人にはなかなか難しい状況もあります。そこで勤続年数7年以上、店長クラス数年以上など条件を設ける形にはなると思うのですが、社員の独立を支援する取り組みも整備していこうと考えています。義実家である八百屋からの仕入れルート確保や、お店運営のカリキュラムをうまく共有しながら、一緒に会社を大きくしていけたらいいですね」と胸の内を明かす。
「笑って仕事をして、笑って商売をして、お客さまも笑顔にして良い縁をつなげられるように」と願う池上氏。奇をてらわず、堅実に努力を重ねて繁盛店を作り出すのと同じように、従業員の採用や教育においても、スタッフと真摯に向き合い、丁寧にコミュニケーションを重ねていることが、社員の定着率の高さを生み出しているようだ。
『渋谷きんぼし』
住所/東京都渋谷区道玄坂1-13-6 斉藤ビルB1F
電話番号/03-6277-5489
営業時間/17:00〜23:30(土日祝16:00~)
坪数・席数/26坪・45席(カウンター14席、テーブル23席、個室8名1室)
https://www.instagram.com/shibuya_kinboshi/
