“トランプ関税”は飲食業をどう変える? 経済アナリスト・森永康平氏が語る、個人店の生存戦略
アメリカ・トランプ政権が打ち出した関税措置が世界で波紋を呼んでいる。具体的な関税率、対象となる国や品目などについてはいまだはっきりしないものの、「トランプ関税」が経済に与える影響の大きさは想像に難くない。そこで今回は、経済アナリストの森永康平氏をオンラインで取材。食材の価格変動、仕入れコストの上昇、客足への影響など飲食店経営者が気になるポイントや、できうる対策について解説いただいた。
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森永 康平(もりなが・こうへい)
株式会社マネネCEO/経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。その後、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業の経営にも参画。
特定輸入食材の価格高騰、日本の消費低下の可能性もゼロではない
――早速ですが、トランプ政権によるアメリカの関税措置が再発動された場合、日本の飲食業にはどのような影響が考えられますか?
「現時点(2025年4月末)ではまだどうなるかわからないので、解説しづらいというのが正直なところです。最終的には撤回されることもありうる、という前提でお話します。まず、今回の政策はアメリカが各国から輸入するものに対して関税を加えるものであり、アメリカから日本に入ってくるものに関税がかけられるということではありません。あくまでも“関税”という観点でいえば、直接日本の輸入品の価格が受ける影響は少ないと言えるでしょう。
ただ、アメリカから日本に輸入している食料品の中には、間接的に影響を受けるものがあると考えられます。例えば、アメリカで穀物や肉などを生産する際に別の国から肥料や飼料を輸入していた場合は関税がかかるため、最終製品である穀物や肉などに価格転嫁される可能性は十分あります。また、『アメリカがくしゃみをすると日本も風邪をひく』という言葉があるように、日本とアメリカの経済的な結びつきは強いため、関税が発動すれば日本の景気も悪くなることは明確です。結果として日本の消費が弱くなり、『外食は控えよう』という人が増えるなど飲食業界に影響を及ぼすでしょう」
――確かに不景気になると、社会全体でなんとなく“節約志向”になるイメージがあります。
「そもそもトランプ政権が関税にこだわる背景の一つに、貿易赤字の解消があります。さらにドル高是正への圧力が加わり、為替市場も一時期は1ドル162円近辺まで円安になったのが140円まで下がり、急激に円高ドル安が進みました。円高=日本が輸入している物の値段が安くなることを指しますから、海外からの輸入品は食材を含め値下がりする物が出てくるかもしれません。さらに、原油価格が下がっていることから、ガソリンなど燃料価格が下がることも考えられます。世界的に見ても、景気の悪化は決していいことではありませんが、事業者にとって多少の“好都合”もあるといえるでしょう。
事業者の方の中には、ニュースなどを見て一喜一憂してしまう方もいらっしゃるかもしれません。その気持ちもわかりますが、今自分にできる対策を考えることが最優先ではないでしょうか」
