2025年「最低賃金改定」に飲食店経営者の本音は? 約16%が「経営継続が危うい」と回答
シンクロ・フードが運営する「飲食店リサーチ」は、飲食店ドットコム会員を対象に、2025年度の最低賃金改定についてアンケートを実施した。本記事では、その結果とともに現場のリアルな声を紹介する。
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:299名
調査期間:2025年9月8日~2025年9月14日
調査方法:インターネット調査
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上がり幅は「想定より高かった」の声も。経営者の半数が店舗経営への影響を懸念
2025年の最低賃金の引き上げ額は、全国平均で過去最大の66円だった。この結果に対し、35.8%の経営者が「想定より高かった」と回答。理由には、東京都や神奈川県などで時給1,200円を超えたことや、前回よりも上がり幅が大きいことへの驚きの声が挙がっている。
一方で、「想定通りの上がり幅だった」(36.8%)、「想定より低かった」(4.7%)という回答も合わせて41.5%にのぼった。飲食店によっては、事前に情報収集を行い、上がり幅を予想していたことがうかがえる。
今回の改定が店舗経営にどの程度影響するか尋ねたところ、「非常に影響が大きく、経営継続が危ぶまれる」(15.7%)、「やや影響が大きく、追加の施策が必要」(35.1%)を合わせ、50.8%の飲食店が「影響がある」と考えていることがわかった。
回答の主な理由としては、人件費率が上振れたことで人員やシフトの調整が必要になることや、材料費や電力の高騰と重なって粗利を圧迫していることなどが挙げられる。
賃金上昇への対策、8割超が「商品の値上げ」を検討
今回の最低賃金改定に対し、何らかの対策を「既に実施している」(11.0%)、「実施していないが検討中」(42.5%)と答えた経営者は合わせて53.5%。そのうち、具体的な対策として「商品の価格変更」を挙げた回答が82.5%を占めた。
次いで「仕入先の見直し」(35.6%)、「水道光熱費の節約」(26.9%)といった声も多い。さらに、人手不足を補う形で「自らが現場に入って人員削減」(25.6%)や「営業時間の変更」(24.4%)といった運営体制の見直しも一定数見られる。
また、今回の改定への対応に要した時間や手間については大きな負担を感じていない経営者が多いようで、「あまり時間・手間を要しなかった」(38.1%)と「全く時間・手間を要しなかった」(44.5%)の回答を合わせると8割を超えた。ワンオペで従業員を雇用していない、あるいは毎年改定に備えているといった理由から、多くの飲食店が、最低賃金改定に対する事務的な手間や労力はそれほど感じていないようだ。
2030年には最低賃金1,500円も視野に。賃金改定に対する備えの事例
政府は「2020年代中に最低賃金(全国加重平均)を時給1,500円へ引き上げる」という目標を掲げている。これに対し、回答者の約65.2%が「2030年頃には最低賃金が1,500円以上になる」と予測。物価や生活コストの上昇、海外との比較などが背景にあるようだ。
今回の賃金改定に際し、各飲食店からは具体的に次のような準備・調整の事例が寄せられた。
1.賃金・雇用制度の構造的な見直し
・全体を底上げするだけではなく、昇給システム自体を見直した(東京都/イタリア料理/51~100店舗)
・研修時給・土日加給・職能手当のレンジだけ微調整し、等級ごとの整合を確認した(東京都/焼肉/3~5店舗)
2.人員・シフトの最適化による人件費抑制
・人員の削減をし、一人あたりの仕事量を増やす予定(東京都/和食/3~5店舗)
・ワンオペの曜日を作った(神奈川県/ラーメン/1店舗)
3.商品・価格戦略への転嫁
・高単価商品の導入、全メニューの見直し、ヒット商品の開発など(東京都/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
・仕入れ食材の変更などで利益を出すようにする(福岡県/ラーメン/1店舗)
4. 給与計算や求人情報の更新などの事務手続き
・求人情報誌への情報変更依頼、ホームページの記載変更、店内外の求人ポップの変更、現スタッフへの周知(長野県/中華/1店舗)
・雇用契約書を作成し直して、説明と同意を得た(神奈川県/カフェ/1店舗)
今回の調査結果から、多くの飲食店経営者が最低賃金の上昇による店舗経営への影響を懸念していることがわかる。一方で、改定を見越して運営体制を見直すなど、柔軟に対応している様子もうかがえる。今回のアンケート調査結果を参考に、今後の賃金改定に対し、備えや対策を講じてはいかがだろうか。















