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坪月商58万円の中目黒『nou』さらに成長中。上昇志向の人材を惹きつける“独自の評価制度”とは?

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『nou』から人気メニューを引き継ぎ、〆の土鍋ご飯で差別化を図る『nou HaNaRe』(写真提供:株式会社cielo8)

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客観的かつ柔軟に。モチベーションを加速させる「個人評価制度」の全貌

優秀な人材が次なるステージへ巣立つことをポジティブに捉えつつも、会社としての屋台骨をさらに強固にしていく。枝葉を整え、幹をより太く育てていくという方針は、飲食事業と並行してフラワーアートや観葉植物の事業も手掛ける板垣氏らしい、自然の理にかなった考え方だ。

そうした「幹づくり」の一環として、スタッフが長く定着する環境をつくるために板垣氏が新たに導入したのが、徹底的にパーソナライズされた「個人評価制度」だった。

「社員が長く、そして安心して働ける場所として、しっかりと稼げる体制を整えたいんです。その実現の足がかりとして、社労士さんにも相談しながら独自につくり上げたのが個人評価制度です。料理人やソムリエなど、それぞれの担当部署や現在のポジションごとに明確な目標を設け、現場責任者が90点、僕が10点の割合で採点をつける流れになっています」

この制度の最大の特長は、スタッフ一人一人の「役割」や「熟練度」に応じて、評価基準を細かくカスタマイズしている点にある。

「飲食のベンチャー企業や個人店だと、どうしても社長や幹部の主観が入りやすくなります。『あいつは気合いが入っているから』とか『俺と仲がいいから』といった、不透明で不平等な評価になりがちなんです。それでは、真面目にやっている人間が納得できませんよね。だからこそ、誰が見ても分かる明確な採点基準を設けています。例えば入社したての新人であれば、『基本業務をミスなく正確にできるか』という項目を最重視します。一方、ホールのサービス担当であれば、『ワインの出数』や『お客さまとの名刺交換の枚数』といった具体的な数字を基準にする。そして、3か月連続で満点が取れたら、次のステップへと目標を引き上げていくんです」

評価項目は決してトップダウンで押し付けるものではない。個人の性格や特性に合わせて、幹部陣と本人が相談しながら柔軟につくり上げているという。結果を出せば基本給が上がり、年2回の賞与にもダイレクトに反映される。

明確な目標を設けて着実な成長を促すこの仕組みには、実力不足のまま勢いだけで独立してしまうスタッフの将来を憂う、板垣氏の親心のような思いも反映されている。飲食業界において、優秀なスタッフの独立を完全に防ぐことは不可能に近い。しかし、彼らが本当に求めているのは、「一国一城の主になる」という肩書きやステータスそのものよりも、「自分の努力に対する正当な評価」「成果に見合った納得のいく報酬」、そして「自分の人生や成長に、本気で向き合ってくれる環境」ではないだろうか。

「経営者と従業員」という垣根を越え、人生の先輩としてスタッフのキャリアに伴走する板垣氏

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月初の2週間はひたすら対話。全員との「1on1面談」が生み出す圧倒的なチーム力

システマチックな評価制度を、血の通った仕組みとして順調に機能させている理由。それは、板垣氏がスタッフへ向ける「圧倒的なコミュニケーション量」に他ならない。

「うちは必ず月初に、リーダー陣を集めたミーティングを2回行い、その後に各店舗ごとの全体ミーティングを実施します。そして総仕上げとして、全スタッフと僕がマンツーマンで、1人につき1時間の個人面談(1on1)をするんです。スタッフの数も増えたので、月初から2週間くらいは、ほぼ面談のスケジュールだけで埋まってしまいますね。全員分の評価シートを手元に置きながら、どんな会話をしたか、次の目的や目標は何だったかなど、細かくメモを残して記録しています」

トップ自らが現場の全員と毎月1時間も語り合う。これは口で言うほど簡単なことではない。面談の場では、業務の目標進捗はもちろんのこと、プライベートな悩みや将来の個人的なビジョンまで、深くヒアリングするという。

「例えば『最近恋人ができた』とか、『いま人間関係でこんな風に悩んでいる』とか、スタッフのリアルな日常を知りたいんです。モチベーションを高めるための声がけはもちろんですが、最も大切なのは『人生の目的』と『直近の目標』をしっかりと設定させ、『将来、どうなりたいのか』を問い続けることです。例えば、うちの会社で料理長になりたいという夢があるのなら、『じゃあ、そこに至るまでの課題を一つずつクリアしていこうね』と、具体的な道筋を一緒に描いて示すわけです」

非効率とも思えるほどの泥臭い対話の積み重ね。しかし、これこそが「最強の定着率」を生む源泉なのだ。板垣氏は最後に、同じように採用や育成に悩む同業者に向けて、改めてこう力説する。

「今の時代、スタッフ側もただなんとなく働くのではなく、明確な目的を持ち、自分と同じ方向を向いている会社をしっかりと見極めて選ぶべきです。そして私たち経営者は、安易な独立でスタッフが不幸にならないよう、彼らが『企業に勤めながら上を目指せる』環境、つまり『共に未来を目指せる環境』を全力で整え続けなければなりません」

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『nou』
住所/東京都目黒区東山1-9-11 2F
電話/03-6303-0034
営業時間/17:00〜23:00
定休日/不定休
席数・坪数/17席・14坪
https://www.instagram.com/nou_nakameguro

『nou HaNaRe』
住所/東京都目黒区東山1-9-13 東山鈴房荘105
電話/03-6303-1860
営業時間/17:00〜23:00
定休日/不定休
席数・坪数/12席・12坪
https://www.instagram.com/hanare_nakameguro/

『kiso』
住所/東京都港区麻布十番3-5-13 麻布HAUS 2F
電話/03-6809-6560
営業時間/17:00〜23:00
定休日/不定休
席数・坪数/22席・22坪
https://www.instagram.com/kiso_azabu/

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。