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著名人が愛した「名店の味」10選。本田宗一郎、黒澤明、長嶋茂雄……。

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フランスの美食家ブリア=サヴァランは著書『美味礼賛』の中で、「食卓の快楽はどんな年齢、身分、生国の者にも毎日ある」と記している。私たちが日々グルメ情報やトレンドをキャッチし食文化の開拓に邁進するように、かつての文人墨客たちも食の探求に余念がなかったようだ。

ブリア=サヴァランが食を探求していた時代から約200年の月日が経過したが、その間、数々の「名作メニュー」が誕生しグルメシーンを賑わせてきたのは言うまでもない。今回はこれら「名作メニュー」について、特に日本で、そして著名人に愛されたメニューにスポットをあて紹介していく。親しみやすい下町の味から高級料亭の味まで盛りだくさんの内容だ。

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亀戸『船橋屋』のくず餅。Photo by hirotomo t「船橋屋のくず餅」

著名人が愛した喫茶メニュー4選

■銀座『カフェーパウリスタ』のコーヒー/ジョン・レノン
1911年に開業した日本で最初のカフェ。もともとはブラジルへと渡った日本人移民たちが育てたコーヒーの、日本における普及事業として誕生。新聞社やホテル、外国商館に近い立地ということもあり、文化人の憩う場所として賑わいをみせた。ジョン・レノン夫妻が3日連続で訪れたことでも有名。

■亀戸『船橋屋』のくず餅/芥川龍之介
大の甘党だったという芥川龍之介。学生時代、授業を抜け出して『船橋屋』のくず餅を食べたというエピソードが残っているほどお気に入りの店だったようだ。『本所両国』という作品のなかにも『船橋屋』のくず餅のエピソードが描かれている。

■浅草『アンヂェラス』のサバリン/手塚治虫
1946年、甘味処としてスタートした『アンヂェラス』は日本ではじめてダッチ・コーヒー(水出しコーヒー)を出した店としても有名だ。ダッチコーヒーに梅酒が添えられる「梅ダッチ」はほかでは味わえない一品。また洋菓子も充実しており、デニッシュに洋酒のシロップを染み込ませ、さらにクリームを挟んだ「サバリン」は、漫画家、手塚治虫が愛した一品だ。

■人形町『喫茶去 快生軒』のマーマレードトースト/向田邦子
1919年創業の老舗喫茶店。店名に付けられた「喫茶去」とは“お茶を召し上がれ”という意味の禅語なのだとか。脚本家、向田邦子がこの店で好んで注文したのは「マーマレードトースト」。行列のできる浅草の老舗ベーカリー『ペリカン』のパンを使用した贅沢なトーストだ。

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新橋『末げん』のかま定食。Photo by hirotomo t「かま定食」

続いて料理編。石原裕次郎、美空ひばりが愛したメニューとは?

■東長崎『鰻屋』のうな重/本田宗一郎
特別な日のごちそうのイメージが強いうな重。うなぎの名店は数あるが、ホンダの創業者、本田宗一郎が愛した店は豊島区東長崎の『鰻屋』。この店のうな重を食べてから他のうな重は食べられなくなった、というほど特別な一品のようだ。

■恵比寿『キッチン・ボン』のボルシチ/黒澤明、長嶋茂雄、石原裕次郎、美空ひばり
黒澤明や長嶋茂雄、石原裕次郎など錚々たるスターがこよなく愛した恵比寿の洋食店『キッチン・ボン』。なかでも「ボルシチ」が絶品で、初代シェフがロシアの皇帝料理長から直々に学んだレシピなのだとか。昭和の歌姫、美空ひばりもそのファンで足繁く通ったそう。

■上野『蓬莱屋』のひれかつ/小津安二郎
美食家としても知られた映画監督の小津安二郎。数多くある行きつけの名店のひとつが ひれかつ発祥の店としても有名な『蓬莱屋』だ。遺作となった『秋刀魚の味』では、この『蓬莱屋』を真似たセットが使用されている。

■横浜『中華でぶそば』の半チャン半ソバ半シュウ/渥美清
かつて松竹大船撮影所があり、映画の街でもあった大船。そんなまちの一角にある『中華でぶそば』は多くの映画関係者に愛された店だ。とりわけ有名なのは映画『男はつらいよ』の“寅さん”こと渥美清が愛した「半チャン半ソバ半シュウ」。チャーハンとラーメンとシュウマイを少しずつ食べたいとい渥美のリクエストに答えて誕生したメニューなのだそうだ。

■浅草『アリゾナキッチン』のチキンレバークレオール/永井荷風
文豪、永井荷風が足繁く通った洋食店『アリゾナキッチン』。特に好んでいたのは「チキンレバークレオール」。鶏肉とレバーをデミグラスソースで煮込んだ一品だ。亡くなるまでの10年間、ほぼ毎日のように通っていたのだとか。

■新橋『末げん』のかま定食/原敬、三島由紀夫
1909年創業の鶏料理の老舗『末げん』。原敬や三島由紀夫が通った言われる名店だ。名物は「かま定食」と呼ばれるひき肉で作った親子丼。その珍しさから、度々メディアでも取り上げられている。ちなみに三島由紀夫が最後の晩餐としてこの店を選んだことでも有名。三島が最後に選んだメニューは「鶏鍋」だったようだ。

いずれも歴史のある老舗揃いではあるが、どの店も、現在も変わらず当時の味を提供している。経済や社会が大きな変動を繰り返す中で、変わらない品質を保ち続けるには大変な努力が必要だろう。こうした老舗の味と暖簾を守り続けるコツを学んで、長く愛され続ける名店を目指したいものだ。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。