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東京の人気店が続々と進出。「福岡のグルメシーン」が全国から注目される、その真相に迫る

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鮮魚市場の様子。提供:福岡市

飲食店同士のつながりが大きな渦に!

そんな麻由子さんの兄である畑 亮太郎さんが営んでいるのが、福岡・今泉の人気イタリアン『チェルニア』である。麻由子さんは、当初、東京都内での移転を考えていたが、一足先に福岡で店を構えていた兄から「福岡でやってみないか」と誘われ、福岡への移転を決めた。東京の『ブルガリ イル リストランテ』や『アロマフレスカ』で経験を積んできた畑さんは、『アロマフレスカ博多』の立ち上げのためにシェフとして福岡に着任し、そのまま福岡で店をオープンさせたという経歴を持つ。

「東京と福岡。かなり悩みましたけど、今も仲良くさせてもらっている飲食店の人たちとのつながりがすごく心地よくて、東京にも友人はたくさんいるけれど、福岡の人の温かさに惹かれたことが福岡に店を出す決め手でしたね。そういった友人たちから、生産者さんとのつながりも広がっていきますし。食材を使うにあたって、仲間たちが近くにいるというのも魅力的でした」と、畑さんは当時を振り返る。

畑さんが営む『チェルニア』は、福岡のみならず、全国的な人気を誇っている。

「東京から進出している有名レストランの福岡店もけっこうありますけど、だからといって地元が負けているとも思いませんね。たしかに、昔はフレンチやイタリアンといった西洋料理のレベルは高くないなと感じていましたが、たとえば『チェルニア』なんか、東京にあっても人気店と十分に張り合えるし、予約が取れない店になるでしょう。ここ数年、そんな、東京からわざわざいきたい店が増えているという印象があります。もともと福岡の食材は良かったけれど、それをフレンチやイタリアンに昇華させる高い技術を持った人が少なく、これなら居酒屋で食べた方がいいなと思ったことも幾度となくありましたが、今は西洋料理のレベルが高くなりました。肉も魚も野菜も、素材のレベルがこんなにも高いのだから、腕さえあれば無敵ですよね。そして、安いですし」と、前出の松尾さんは語る。

関東や関西、海外で修業を重ねたシェフが地元・福岡で独立したり、畑さんのように、生まれ育った場所ではない、この福岡に店を出したり。人や食材に惚れ込んだ人々が、ここ福岡に店を構え、その人々がつながることで、「福岡が熱い!」という大きな渦になっているのだろう。

『チェルニア』の料理

華やかに見える一方で、潰れる店も多数!

「福岡に出店したいという方を案内する機会もありますが、人口が増えているとはいえ、東京に比べると全然少ないですし、そんなに簡単ではないという話をしています。街の中心部の坪単価は東京と変わりませんし、潰れる店も少なくないですからね」と畑さん。

妹の麻由子さんも「東京のように更新料がなく、店を続けていくことは東京より福岡の方がやりやすいとは感じましたが、ただ、福岡の物件には居抜き物件も少なくありません。裏を返せば、それだけ借金を抱えてお店を辞めているケースもあるということ。そういう意味で、福岡での出店は怖いと思いましたね」と話す。

人気店の東京進出など、華やかな話題の多い福岡の飲食業界だが、成功しているお店はごく一部。舌と目の肥えた人たちが暮らす街だけに、実力が伴わない店は1年未満で閉店してしまうことも少なくない。出店を検討するのであれば、慎重に進めることをおすすめしたい。

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寺脇あゆ子(cadette)

ライター: 寺脇あゆ子(cadette)

福岡・大阪の出版社勤務を経て、福岡を拠点に活動するフリーの編集者・ライター。グルメ情報誌『ソワニエ』やシティ情報ふくおか別冊『福岡肉本』などの地元情報誌のほか、ぐるなびが運営する『dressing』、スイーツ専門の『CAKE.TOKYO』、ウェブマガジン『greenz.jp』などのウェブメディアでも九州・福岡を中心とした情報を発信している。