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飲食店の食材原価率、業態別の目安や計算方法。安定経営に欠かせないフードロス防止のコツ・FL比率も

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Photo by iStock.com/MmeEmil

飲食店の経費の中でも、特に大きな割合を占めるのが食材原価だ。客入りの水準が戻りきらないコロナ禍において、フードロス問題は経営リスクに直結するため、これまで以上に仕入れには工夫が求められる。そこで食材原価の基礎知識と原価率を抑えるコツをおさらいする。また食材原価に関わる知識として「ロス率」や「歩留まり単価」、「FLコスト」「粗利率」についても解説。安定的な経営のために知識を深めてもらいたい。

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飲食店の原価率を正しく計算する方法は?

基本的なことだが「原価」とは材料費のこと。「原価率」とは売上に対して原価の占める比率のことを言う。つまり、原価率の計算方法はこのようになる。

原価率=材料費÷売価

例えば、ランチの販売価格が1000円、材料費が300円であれば、原価率は30%になる計算だ。

300円(原価)÷1000円(売価)=30%(原価率)

計算式自体は難しくないが、実際の原価計算は少し手間がかかる。例えば、カレーのランチセットを提供する場合で考えてみよう。まずは、カレールーの材料費の総額を算出する。20名分の仕込みをするのに、玉ねぎ、じゃがいも、牛肉、香辛料、調味料などで合計4,000円かかったとしよう。その場合、4,000円÷20人=200円となり、ルーだけで1人あたり200円の原価となる。

次に、サラダの材料費として、レタス、キュウリ、ドレッシングなど20人分で1,000円だとすると、1名あたりの原価は50円。そして、米が10kgで3,500円とすると、1合(約150g)あたり52.5円。1合の炊き上がり重量を330gとして、1名あたり300g使用すると、47.7円の原価となる。これをすべて合計すると、カレーランチセット1名あたりの原価が算出できる。

カレールー200円+サラダ50円+米47.7円=297.7円
297.7円(原価)÷1000円(売価)=29.77%(原価率)

このように、仕込みの全体量から1名分の使用量あたりの材料費を算出していく必要があるというわけだ。もちろん、メニューごとに原価率は異なるので、取り扱うメニュー全ての原価率を算出しなくてはならない。大変な作業だが、材料ごとの価格などをしっかりと記録しておけば、新メニュー導入時には比較的簡単に原価計算が可能になるだろう。

また、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーをはじめた場合、容器や備品、配達委託代などのコストが発生することも踏まえ、価格設定を見直したり、採算性を判断したりしなければならない。この点でも原価率の把握は非常に重要だ。

では、次の項目では業態ごとの原価率の目安を解説していこう。

Photo by iStock.com/holgs

業態ごとの原価率の目安は?

飲食店全体としては、原価率の目安は30%程度とされているが、取り扱うメニューや業態によって原価率にはかなり差がある。代表的な例を挙げてみよう。


・カフェ・喫茶店… 25〜30%
・レストラン… 30〜35%
・ラーメン店… 30%
・居酒屋… 30〜35%
・焼肉店…35%
・寿司店… 35〜40%
・エスニック料理…25%
・ファストフード…35%

それぞれの業態別に見ていこう。

■カフェ・喫茶店
カフェの原価率は他の業態に比べて低い傾向がある。それはドリンク類の原価が低いからだ。例えばコーヒー1杯の原価率は10%程度。ただしコーヒー1杯で長時間いる客もおり、回転率が悪いというネックもある。原価率が低いと利益は出やすいと考えられるが、単純にそうならないのも飲食店経営の難しいところ。

■レストラン
カフェと比べてレストランの原価率が高めなのは、一品の料理に手間や時間をかけるから。品揃えも豊富で、原価率が統一しにくいのも特徴と言える。原価率を下げるにはドリンクが多く出るような施策も必要だ。

■ラーメン店
ラーメン店は出店の難易度が低いが、それは原価率が低いという利点があるから。チェーン店の場合はスケールメリットがあるため、原価率は20%以下になることもある。ただし他店との違いを出そうと食材にこだわると、原価率は上がることになる。

■居酒屋
居酒屋はメニューが豊富で、原価率の管理が難しい業態。例えば刺身の盛り合わせは原価率が50%程度になる。対してサワーの原価率は10%程度だ。そのため一律に30%ではなく、メニューごとに原価率を設定し、トータルで考える必要がある。

■焼肉店
焼肉店も一般的な原価率は30%だが、肉のクオリティにこだわる店の場合は35%〜40%と高めになる。しかしさまざまな部位を提供できるのが特徴で、そのためフードロスが少ないメリットもある。

■寿司店
寿司店は最も原価率が高い業種のひとつだ。高価な食材を仕入れる必要があり、ほとんどが生魚などの生鮮食品なので廃棄も多くなりやすい。そうなると当然、原価率は高くなる。

■エスニック料理
エスニック料理の原材料は輸入されるものがほとんどだが、実は高額なものはほとんどない。そのため原価率が25%程度と飲食店の中では低い方に位置する。頻繁に使用されるパクチーを自家栽培し、原価を抑えている店舗もある。また辛い料理はドリンクが進むため、原価率の低いドリンクがよく出るのも特徴だ。

■ファストフード
ハンバーガー店や牛丼店などのファストフードは、原価率は高い傾向がある。「安くてうまい」をコンセプトとしており、他店との競争も激しいため、価格を上げるのが難しいからだ。例えば、ハンバーガー単品だと50%前後。しかしポテトやドリンクの原価率は10%未満となっているため利益を出すことができている。また回転数が多く、大手チェーンではその知名度から来店客数を増やすことで利益につながっている。

原価率について業態別に解説したが、フードに比べてドリンクの方が原価率が低いことにも注目したい。原価率が低い、つまり利益率が高いドリンクの比率を上げていくことで、利益増を目指すことができる。売上高に占めるフードやドリンクの比率をFD比率と言うが、「もう一杯」をどう言ってもらうか考えることも原価率の減少につながっていくのだ。

また、アフターコロナを見据えると、どのような業態においても、これまで以上に廃棄食材を減らす工夫が必要なのは明白。客入りや回転率などが読みにくいからだ。例えば、在庫食材を使ったメニューを考案する、また不要な食材を仕入れ続けていないか作業を見直すなど、できるところから始めていきたい。

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飲食店の原価率を抑えるコツ

利益を大きくするためには、原価率を抑えなくてはならない。そのためには、レシピの分量を守ること、忙しい時などに慌てて材料をこぼしたりしないといった基本的なことが重要なのは言うまでもないが、その他に現場で取り入れやすい方法をいくつか紹介しよう。

1、廃棄の多いメニューの取り扱いをやめる
例えば頻繁に廃棄しているスイーツ(例/プリン)があったとする。であれば、そのプリンの提供を中止し、すでに使用している他の食材を使ってスイーツを提供してみよう。どうしてもプリンの提供をやめたくない場合は、ランチメニューなどのセットに組み込む、オススメとしてメニュー表の目立つところに書くなどして注文率をあげれば廃棄は減るはずだ。

2、専門店にする
例えば居酒屋であれば鶏肉専門店に業態変更する、イタリアンであればピザ専門店にするといった具合に、「専門店化」することによって原価率を抑えることも可能だ。取り扱う食材の種類を絞り込むことで、仕入れやオペレーションが効率化され、廃棄する量も少なくなりやすい。メニューにもこだわりや魅力が生まれ、単価が上がり、リピート率も上がる傾向がある。また、コロナ禍を経て生活様式が変化したことで、「何となく」ではなく、「今日はこれを食べに行く」と明確な意思をもって外食をする人もこれまで以上に増えたはずだ。専門店化はこうした需要にも合致する業態変更といえるだろう。

3、原価率の低い一押しメニューを開発する
一般的にカクテル系は原価が低いとされているが、オリジナル性の高い自家製カクテルの提供は非常に有効だ。通常のカクテルだとそれほど売価を高くはできないが、「自家製~」というネーミングであれば、より単価を高くして目玉商品にすることもできる。自家製のジンジャーシロップ、ライム、焼酎、ソーダを合わせ、「自家製ジンジャーライムフィズ」として、原価率10%以下で人気メニューを生み出した例もある。

また料理においては、店のコンセプトを軸に今ある食材を活かした一品を「本日の一押しメニュー」などにすることで、ストックする食材を減らせるだけでなく、店のコンセプトを強められるといったメリットも考えられる。

原価削減と言えば、まず思いつくのは食材のランクを落とすことだが、これはあまりおすすめできない。寿司のネタのランクを落としたり、国産牛を輸入牛に変えれば、もちろん原価率は下がる。しかし、お客様の満足度に関わる方法なので慎重に検討する必要がある。提供量を減らすのも同様で、原価削減していることがお客様に伝わりやすい方法は敬遠した方がいいだろう。

逆に、原価率を上げた方が集客に繋がるという意見もある。その方がいい食材を使えて満足度の高いメニューが提供でき、リピート率や口コミが増えるからだ。結果的に利益を確保することが大切であるわけだから、自店舗にマッチした手法を取り入れるとともに、社会の変化に目を向け、消費者の飲食店に対する需要に常に応えていく努力が大切だ。

原価率を考える際はロス率にも注目

これまで原価率について紹介してきたが、原価率だけをコントロールしても利益にはつながらない。それは売れ残って新鮮ではなくなった材料や、不注意で使えなくなったものなどは廃棄(ロス)となるからだ。廃棄した食材は売上にはならないが、原価に含まれる。つまり、事前に計算した原価率よりも実際の原価率は高くなる可能性もあるということだ。

また、例えば看板メニューとなり得る一品は原価率が高くなりがちだ。しかし原価率を下げてしまうと、看板メニューとしての品質が落ちかねない。そこで食品の廃棄を減らすことで原価率を維持しながら、利益につなげていく必要があるのだ。

そこで注目したいのがロス率だ。ロス率の計算は下記の計算式に当てはめて行う。

ロス率(%)=ロス金額÷売上高×100

ロス率が上がると本来生み出すことができた売り上げが上げられない、ということになる。つまりロス率を下げていく努力が、売上高増、利益増につながるのだ。

ロスを減らすには歩留まり率と歩留まり単価の確認を

またロスに関しては「歩留まり(ぶどまり)」の知識も必要だ。歩留まりとは、仕入れた食材をどれくらい使って商品を作ったかを表す指標。食材をロスすることなく商品として提供していれば、歩留まり率は100%となる。

具体的な計算式は下記になる。

歩留まり率(%)=可食部位÷総重量×100

また歩留まり率を計算することで、歩留まり単価も計算することができる。計算式は下記だ。

歩留まり単価=仕入れ金額÷歩留まり率

例えば、10,000円で仕入れた1kgの食材を商品としてすべて使い切れば、歩留まり率は100%となり、歩留まり単価は1kg当たり10,000円となる。しかし、例えば1kgのうち100グラムの廃棄が生じた場合、歩留まり率と歩留まり単価は下記のような計算式で計算することになる。

歩留まり率:900グラム÷1000グラム×100=90%
歩留まり単価:10,000÷90%=11,111円

つまり、歩留まり原価は1kg当たり11,111円で、仕入れ価格よりも高くなったということになる。仕入れに対して、調理の段階で無駄が出てしまったということを意味しており、本来得られる利益を失ってしまったことになる。原価率を抑えることに加え、こうしたロスによる無駄を減らし、歩留まり率を高めていくことでも、利益率を高められるということなのだ。

「FLコスト」全体を見ることで経営戦略に選択肢も

飲食店が健全な経営を行っていくには、これまで紹介した原価率に加えてFLコストを適正値で維持することに他ならない。FLコストとは、Food(食材費)とLabor(人件費)を合計した費用のことで、計算する際は下記の公式を用いる。

FLコスト=食材費+人件費

また売上に対する割合をFL比率と言い、下記の計算式で求めることができる。

FL比率(%)=FLコスト÷売上高×100

飲食店におけるFL比率の標準値は、食材費が30%程度、人件費が30%程度で、合計60%程度。FLコスト以外の経費にもよるが、FL率がこれ以上大きいと利益が少なくなり、65%以上になると赤字経営状態と考えるのが一般的だ。そのため定期的にFL比率を確認し、最適化をしていく必要がある。

また、例えば円高などの影響で一時的に仕入額が上昇し、原価率がどうしても抑えられないケースもある。このような場合、人件費を削除することでFL比率を適正範囲内に維持することが可能になる。つまり原価率だけではなく、FLコスト全体を見ることで安定的な経営が実現するということなのだ。

前述したように、原価率を抑えることで利益が増えると考えるのが通常だ。しかしFLコスト全体を見て、食材原価率が減った分、人件費を増やして接客品質を高める、人通りの多い店舗に移転する、といった戦略もできる。つまりFLコストを適切に把握することで、経営戦略の選択肢を増やすこともできるということなのだ。

飲食店の成長を狙う上で粗利率も把握

また原価率を正しく知ることができれば、売上総利益である粗利も把握できる。粗利は経営指標の一つで、利益の大元。売価や仕入れ管理などの良し悪しにも影響を受けるため、原価に関わるさまざまな店舗経営の状況が見えてくるのだ。

粗利率を求めるには、下記の式を用いる。

粗利率(売上原価率)=粗利(売上−売上原価)÷売上高

粗利率が低いと飲食店の利益は少なく、想定以上の売上高があっても、想定通りの利益を残せないということになる。反対に、粗利率が高いほど原価以上の価値があると認められていると判断できる。つまり、商品やサービスの付加価値についてもわかり、競合店との競争力や自店の成長を見極めることもできるのだ。

今回紹介したように原価率に関わる指標をより詳しく知ることで、さまざまな数値が把握できるようになる。理解を深めて、安定的な飲食店経営、さらなる発展に活かしてほしい。

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ゴッチ 東京都 居酒屋・ダイニングバー 2店舗以内
既に知っている内容も多いでしたが、改めて原価について考えるきっかけになりました。「自家製〇〇」のメリットやコロナ禍では目的を持って外食する方が多いというのも参考になりました。有難うございました。
2022年06月25日 13時58分53秒
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大槻洋次郎

ライター: 大槻洋次郎

父親が喫茶店を営む家庭に生まれ、31才の時にカフェで独立開業。個人経営のこだわりカフェの先駆者的存在となった。現在は大手カフェスクールや展示会での講師活動、飲食店の開業支援などを行なっている。現場目線の初心者でもわかりやすいノウハウに定評がある。メディア出演も多数。得意料理はパスタ。