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飲食店で広がるプラスチックストロー廃止の動き。コスト数倍の木製ストローは代替品になるか?

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Photo by iStock.com/Jirakarn

大手外食チェーンがプラスチックストローの全廃を相次いで発表

プラスチックストローを廃止する飲食店が増えている。アメリカの『スターバックスコーヒー』と『マクドナルド』は、近い将来、世界中の店舗でプラスチックストローを廃止することを目標とし、すでに計画を進めているという。

背景にあるのは、深刻な環境問題だ。プラスチックごみはこれまで、土壌に埋めることで廃棄されてきた。しかしほとんどが自然分解しないため、土壌に蓄積されている状態なのだ。また、近年はプラスチックごみを海に投棄されるケースが増加。その量は毎年1000万トンに上るといわれおり、海の生物に大きな悪影響をもたらしている。プラスチックストローがウミガメの鼻に刺さってしまった動画が、世界中で大きな反響を呼んだことをご存知の方も多いだろう。

数あるプラスチック製品の中でもストローがなぜ問題なのだろうか? それは、ほかのプラスチック製品とは異なり、リサイクルに向かずほとんどがごみになってしまうためだ。日本国内では、すかいらーくホールディングスなどがプラスチックストロー廃止へ向けて動いている。

Photo by iStock.com/kickimages

スギを材料にした「木製ストロー」が完成

そんな中、遂に木製のストローが企画開発された。木造注文住宅建設を主軸にする住宅メーカーのアキュラホームとザ・キャピトルホテル東急が共同で「Wood Straw Project」(ウッドストロープロジェクト)をスタートさせ、「木材ストロー」を完成させたのだ。材料になる木材は、森林の木が成長するため間引きされた「間伐材」だ。間伐材の活用促進や森林管理・災害防止の観点から、使用が決まったという。

木製ストロー……、それは一体どんなものなのか? 同プロジェクトで開発されたストローは、長さ21センチ、直径4ミリ。日本で現在出回っているプラスチックストローの一般的なサイズは、長さ21センチ、直径5、6ミリであるため、サイズはほとんど同じだ。

使用されたのは、厚さ0.15ミリの薄さに削られたスギだ。それをらせん状に巻いて筒状に加工し、ストローにしたのだという。木材をくりぬいて管をつくればストローができそうな気がするが、木の節目によって品質にばらつきが出てしまうため、薄く削ってから加工する必要があるようだ。

見てみると、表面には木目が斜めに入っている。一目で「木製」であることがわかる。その独特の素材感は、どこか温もりすら感じさせる。

気になるのは使用感や安全性だ。木によっては特有の匂いがあるが、スギには匂いが少ない。そのため、飲み物に木の匂いが移ることも、飲んでいる途中で木の匂いが気になってしまうようなこともないという。安全性は日本食品分析センターの試験で証明された。

Photo by iStock.com/Placebo365

コストはプラスチックストローの数10倍!

木製のストローに課題がまったくないわけではない。使い捨てで、繰り返し使うことができないし、コストは、1円未満で作れるプラスチックストローに比べ、数10倍に跳ね上がる。量産体制が整えばコストは抑えられると見られているが、広く普及するのはまだ先のことになりそうだ。

コストはかかるが使用感に大きな問題はなく、環境保全という付加価値がある。となれば、CSR事業の観点から導入する企業は今後増えるかもしれない。環境問題への取り組みをお客に伝えていくにはストローはとても身近でわかりやすいため、今後もプラスチックストローを廃止する動きは加速していきそうだ。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」