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路地裏の繁盛店、調布『よだれ屋』に見る「店づくり」と「人づくり」の極意

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現在、都内で4店舗を運営する有限会社YDR・代表取締役の大村孝雄氏

「この場所に店を構えて20年。『20年も続くなんてすごいね』ってよく言われるけど、振り返ってみるとあっという間で、そんなに経ったのかなって思うくらい」

そう笑うのは、調布と府中、渋谷で『二代目 うおたま よだれ屋 本家』など4店舗を構える有限会社YDR・代表取締役の大村孝雄氏だ。駅から少し離れた、いわゆる二等立地、三等立地に店を構えているにもかかわらず、素材からこだわり抜いた味と隠れ家的な雰囲気がウケて、いずれも高い人気を集めている。売上高も「順調に推移している」と大村氏は話す。その好調の秘訣はどこにあるのだろうか。

路地裏8坪から始まった『よだれ屋』を支えてきたものは?

大村氏は、飲食業界を牽引する人材を輩出し続けていることでも知られる株式会社楽コーポレーションで経験を積んだ後、30歳を機に独立を決意。調布駅から徒歩5分、現在の『二代目 うおたま よだれ屋 本家』の場所にあった、たった8坪の物件に店を構えた。

そこを選んだ理由について「当時は、周りにゆっくりとお酒を楽しめる雰囲気のいい店が全くなくて。ここでなら勝負できるって思いましたね」と大村氏は振り返る。その狙いは見事的中。落ち着いた空間で過ごしたいという客から支持を受け、業務の変更や店舗のリニューアルを行いながら20年の時を重ねてきた。

カウンターとテーブルを合わせて30席。和テイストの落ち着いた雰囲気も好評だ

変わらぬ人気を支えてきたのは、大村氏はもちろん、スタッフ一人ひとりに深く浸透している「お客様への思い」にある。

「この店は駅からも少し離れていて、お客様に来ていただけることが“当たり前”ではありません。だからこそ『ここまで来てくれてありがとう』というお客様への感謝、そして喜んで帰っていただこうという気持ちが何よりも大切。スタッフにもそれは常に伝えています」

大村氏とスタッフの関係は「従業員と部下」といったものではなく、同じ目標に向かって共に走る「戦友」であり、何でも相談し合える「家族」のようだ。いい物件に出合えば「ここでどんな店を作りたいか」と意見を交換し、美味しい味に出合えば「自分たちの店でこれを出したらどうなるか」と話し合う。スタッフと何でも話し合い、スタッフの意見を尊重する姿勢を貫いているのだ。

現在「串揚げ」をメインに提供している『二代目 うおたま よだれ屋 本家』のメニューも、大村氏いわく「入ってくる食材をもとに、基本はスタッフがすべて考案したもの。僕はそれをお客さんの立場に立って食べてみて、味や価格を吟味し、アドバイスをしているだけ」とのこと。

トップからあれこれと指示が下りてくることはない。しかし、常に料理や食材、店づくりのことを考え、想像し、提案する姿勢を持っていなければ、大村氏から意見を求められてもスタッフは答えられない。自然とスタッフの意欲、意識が高まる、理想的なスパイラルが出来上がっているのだ。

人気の串揚げは定番の味から「チキンラーメン」といった変わり種も揃う

物件が決まってから業態が決まる! よだれ屋流の「店づくり」

「すべてスタッフと相談して決める」という大村氏の姿勢は、店づくりにおいても変わることはない。

通常、店舗物件を探す際には、提供したい料理や店舗のイメージをある程度固めたうえで、それを実現できるかどうかで物件を選んでいく。しかし大村氏は、物件ありきで店舗を作るという。気になる物件があればスタッフと一緒に足を運び、「ここで何ができるか」「どんな料理を提供できるか」と相談し、みんなのイメージが合致するかどうかで契約を決めている。

実際、同じ調布にある系列店『極楽よだれ酒場 調布』も、物件を見て「立ち飲みをやりたい!」とスタッフ全員の意見が一致し、1階は立ち飲み、2階はテーブル席という、現在のスタイルを作りあげていった。

スタッフの意見で1階を立ち飲みスペースにしたという「極楽よだれ酒場 調布」

スタッフと話し合い、一緒に店を作り上げていくことで「スタッフのやる気や楽しみ、そして自分の意見が通ることで店への愛着にも繋がると思う」と語る大村氏。

開店からの20年で、業態や店構えを変えてきたのも“飽き”をなくし、常に楽しく新鮮な気持ちでお客様と向き合いたいという思いから。そのためにも「常に世の中の動きにアンテナを張り、新しいことを見つけようとする気持ちが必要。本当に日々勉強ですね」と大村氏は言う。

「僕らが行う『商い』って『飽きない』ことが大切だと思うんです。自分たちが飽きたと思ったら、お客さんにもそれが伝わる。これからもスタッフと“楽しい”“新しい”を常に追いかけながら、一緒に成長していきたいと思っています」

『二代目うおたま よだれ屋 本家 調布』
住所/東京都調布市布田2-37-5
電話番号/0424-98-5137
営業時間/17:00~24:00
定休日/無休
席数/30

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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