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【新型コロナ】三つ星『HAJIME』米田肇氏が飲食店の救済を求め署名活動

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『HAJIME』の店内

支援200万円は実態に合っていない金額

3月31日には服部栄養専門学校の服部幸應校長、パティシエの鎧塚俊彦氏らとともに自由民主党の岸田文雄政調会長を訪れ、その場で飲食店が置かれた現状を説明した上で国の支援を求める要望書を手渡した。

「岸田会長のお話は当たり障りのないものでした。『今は新型コロナウイルスが蔓延しており、その対策で皆さんにご協力いただいているところです。協力をいただいている過程において、お店が激減しているということも聞いております。とはいえ、今はウイルスを押さえ込むのが第一。今日は現状をお聞かせいただき、出来るだけ要望に応えられるように政策に盛り込みたいと思います』とのこと。この話はどの業種に対しても言える言葉なので『うまいなあ』と思いました」と振り返る。

陳情を受ける側としては、ここまでしか言えないのは仕方がない部分はあるだろうが、次々と同業者が店を閉じていく現状からすれば、陳情をする側には物足りない部分が出てくるのも理解できる。

4月7日の安倍晋三首相の記者会見では事業者向けの給付金制度の創設が明らかにされた。売上が大きく減った中堅、中小法人に200万円、個人事業主に100万円の支給をし、固定資産税の減免、消費税などの納税1年間猶予の救済策が盛り込まれた。

「給付金についてはずっと交渉していた部分なので、少しは応援になっています」と言うものの、金額は十分ではないと考える。米田氏によると、都内では25坪(約83平方メートル)が平均的な中小の店舗の広さであり、その場合、物件賃料(家賃)は75万円、人件費は250万円で合わせて325万円程度かかるという。そうなると200万円の給付があっても125万円の赤字。

仮に1か月で収束しても、完全に通常の基調に戻るには時間がかかることが予想される。一般的に飲食業の内部留保は1か月分程度しかないと言われることもあわせ考えると救済策としては不十分で、実態に合った支援を求めたいとする。

取材はSkypeを通じて行った

20万集め、より大きな声を政府へ

署名が日々集まる中、目標の15万を超える20万は欲しいとする。「20万集まると、海外から『大きな運動が始まっているんだな』というように感じとられるといいます。そうなると(日本)政府も放っておけなくなるでしょう。しかも五輪を控えた時期、総選挙(現在の衆議院の任期は2021年秋まで)もあります」。飲食業界の厳しい現状を大きな声として伝え、政治を動かしていく考えである。

もっとも、飲食業としても自助努力を尽くした上での支援の要請である点は強調する。

「政府が決定した融資制度は最大限利用するのは前提です。飲食店としても、余分な経費を抑え、テイクアウトで収入を得ることができる店は、それをやっていくのがいいのではないでしょうか」

生き残るためには、自らが生き残りのために力を尽くさなければならない。その上で、自分の力だけではどうにもならない、コントロールできない部分については行政の支援を受ける。そうした姿勢が重要であることを米田氏は強調する。それは「自助努力の上の十分な補償で、店舗は生き残れる」という同氏のポリシーでもある。

米田肇
1972年、大阪府生まれ。近畿大学理工学部電子工学科を卒業。エンジニアとして勤務した後、1998年に料理人に転身。日・仏の料理店で勤務した後、2008年に『Hajime RESTAURANT GASTRONOMIQUE OSAKA JAPON』(現『HAJIME』)をオープン。開店から1年5か月でミシュランの三つ星を獲得した。

■米田肇氏が発起人となっている署名活動
「新型コロナウイルスの影響による飲食店倒産防止対策を求めます」

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/