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ラーメン店がホットドッグ!? 『麺屋武蔵』がコロナ禍で始めた新ビジネス

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通販で販売しているつけ麺のイメージ写真。麺は250グラムと食べ応え十分

企業向けの「オーダーメイドラーメン」に着手

コロナ禍という大局の中で臨機応変に対処してきた麺屋武蔵が、新プロジェクトを立ち上げた。個人や企業向けに、100食15万円で「オーダーメイドラーメン」を作るサービスだ。ラーメン業界はもちろん、飲食業界でも珍しいオーダーメイドをなぜ始めたのか。

「つけ麺の通販を始めた頃、ラーメン評論家の大崎裕史さんが思う、最高の通販ラーメンを具現化させていただきました。あの時、ウチならオーダーに対応したラーメンも開発できると気づき、ひとつのアイテムとしてオーダーメイドラーメンをスタートさせることにしました」

依頼主の要望をZoomなどで聞き出し、数名の店長が形にする。試作品を依頼主に試食してもらい2~3週間で仕上げる。

12月にオーダーメイドラーメン第1号を納品した。依頼主は、社内用コミュニケーションツールを手掛けるTalknote株式会社。多様性を尊重する同社のポリシーと、会社のロゴがカラフルだったことも配慮し、複数の食材を使った「カラフルちゃんぽん」を完成させた。

「年末、Talknoteさんの営業マンがお得意様に配ったところ大変好評だったそうです」

オーダーメイドラーメン第1号の「カラフルちゃんぽん」

オーダーメイドラーメンは依頼主のイメージアップにもなるし、麺屋武蔵にもメリットがある。買い取りなので在庫を抱える必要がなく、BASEを通さないので手数料もかからない。そのため、コストを掛けられるのでより良いものを作れる。つまり依頼主も麺屋武蔵もWin-Winだというのだ。そしてもうひとつ、この新サービスには「プライスレスな付加価値がある」と矢都木社長は説く。

「これまで麺屋武蔵では、各店舗ごとに自分達が求める商品を開発してきました。ところが、お客様の希望を具現化するには新しい技術が必要。オーダーメイドラーメンは勉強にもなるし、麺屋武蔵のブランディングにも役立つと思っています」

6月には第2号を納品する予定。現在第3号が進行中だそうだ。まだ個人の注文はないものの、結婚式の引き出物や記念品などにオリジナルラーメンを提案していくつもりだ。

新ブランド「タイガードック」をUber Eatsに設立

麺屋武蔵では、Uber Eatsでラーメンのデリバリーを続けてきた。それと並行し、先述したようにサンドイッチやメンタコスをテイクアウトで販売した店舗もあった。

また、テイクアウト用にホットドッグを用意した店もある。吉祥寺『麺屋武蔵 虎洞(コドウ)』だ。ラーメンのトッピングに使っていた自家製のチャーシューソーセージを、テイクアウト用のホットドッグにアレンジした「タイガードック」を昨年5月に発売した。

じつは、Uber Eatsでは1店舗につき、4つまでブランドを持つことができる。この2月中旬、『麺屋武蔵 虎洞』では、タイガードックブランドをUber Eatsに設立。よりボリュームアップした「タイガードック」、「タイガーチリドック」、「タイガーチーズドック」の3タイプをUber Eatsで販売することにしたのである。

「ホットドッグを麺屋武蔵と紐付けしなかったので、別ブランドとして販売することにしました。新店舗のオープンには費用がかさみますが、バーチャルならタブレットがあればすぐに開業できるのが魅力です」

『麺屋武蔵 虎洞』がUber Eatsで販売中の「タイガードック」。下から「タイガードック」、「タイガーチリドック」、「タイガーチーズドック」

コロナ後もBASEを活用しつつ、麺屋武蔵体験を提供したい

「昨年は業績が大幅にダウンしました。でも、今だからこそできることを社員一同で実行してきたと思っています」

各店舗が異なるラーメンを提供する麺屋武蔵では、各店舗が自らの意思で柔軟に対応してきた。この社風がコロナ禍でも幸いしたといえよう。最後にコロナ後の抱負を尋ねた。

「新ブランドのタイガードックが認知され、成功すれば、実店舗を作ることも視野に入れています。つけ麺の通販については継続したい思いもありますが、コロナ後も続けるかどうかはまだ決めかねています」

丼などのオリジナルグッズも自社ホームページで扱っている。仮につけ麺の通販を止めたとしてもBASEからの完全撤退は考えていない。むしろBASEの新しい活用法を思案中だ。

「たとえば特製ラーメンを開発し、BASEで限定数を先行販売するのも面白いかもしれません」

BASEで事前にチケットを買ってもらうことでラーメンの数を確定できる。客はチケットを持参し、店で特製ラーメンを食べるというシステムを模索している。

「コロナ後も、以前のように『麺屋武蔵体験』を提供したいと考えています。でも、オーダーメイドラーメンは継承します。無限の可能性があるラーメンを今後も探求していきます」

昨年は新人を5名、今年は10人採った。「こんな時期だからこそ有望な新人が入ってくれた」と矢都木社長は目尻を下げる。売上が落ちたこの時期に10人も採用したのは、若返りをはかるだけでなく、将来の店長候補を1人でも増やしたいと熱望しているからだ。攻撃は最大の防御。麺屋武蔵の真剣勝負は今後も続く。

『麺屋武蔵 神山』
住所/東京都千代田区内神田3-8-7 グラン・フォークス神田ビル
電話番号/03-3256-3634
営業時間/11:00~20:00※状況により変更
定休日/無休
席数/17

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。