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なぜ若者は『鳥しき』を修業先に選ぶのか。「鳥しきICHIMON」の若手育成術

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『鳥しき』では料理だけでなく居心地の良いサービスと空間も提供している

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なぜ若者は『鳥しき』を修業先に選ぶのか

「創業当初、若い子を育てようとも海外で店をやろうとも思っていませんでした」

入門者が増えていったのは創業2年目ごろから。将来を考え、手に職をつけたいと考える若者が多くなっていったのではないかと池川さんは推測する。その入口として寿司屋はハードルが高そうだが、焼鳥屋なら誰でもすぐにできそうなイメージがある。

「僕自身そう思っていました(笑)。ところが、シンプルだからこそ難しいし、奥が深い。そこに魅力があることに若い子も気づき、焼鳥屋を志す子が増えていったのだと思います」

そんな彼らが、なぜ『鳥しき』を修業先に選んだのか。

「妻と2人で始めた父ちゃん母ちゃんの店でしたが、おもてなしであるとか、居心地の良い店にしようだとか、焼鳥以外の表現も変えていきました。それが間違っていなかったからこそ『鳥しきICHIMON』を増やすことができたし、独立した子の店も予約が取れない店になっていったのではないでしょうか」

現在、『鳥しき』出身者の店は全国に7軒。なかには4店舗をオープンさせた弟子もいる。焼鳥屋を志したことで幸せになれる人が増えただけでなく、焼鳥屋の可能性も広がっていった。

『鳥しきICHIMON』のホームページには職人代表として池川さんのメッセージが掲載されている

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客にも弟子の人生にも“響ける”店でありたい

最近、『鳥しきICHIMON』のホームページではリクルート情報を充実させた。福利厚生はもちろん、独立支援制度があることなども掲載。将来独立する際、仕入先を紹介したり、税務・会計処理サポートなど複数の支援の用意があることも伝えている。

福利厚生に携帯電話手当があることにも驚かされたが、サイト自体がじっくり読みたくなるような作りで、どんな職場なのか、下積みは何年必要か、年齢制限の有無をQ&Aでこと細かく紹介している。飲食店のホームページでここまでわかりやすく紹介するケースは珍しいのではないだろうか。

一串一生。焼きの技はもちろん接客の心得も『鳥しきICHIMON』門下に継承されていく

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「アナログな仕事をしているし、個人的にはデジタルはあまり好きではありません(笑)。でも、焼鳥屋に入ったらどんな世界が待っているのかをきちんと伝えるべきだと考え、このホームページを作りました」

焼鳥文化を世界に啓蒙するため、英文と中文も掲載している。

「うちで勉強したい人が入れば、国籍を問わず大歓迎(笑)。寿司屋やラーメン屋が海外に進出したように、焼鳥屋も世界に出ていくことで次の世代に夢を見させてあげることができる。そう確信しています」

今回初めて『鳥しき』と同じ場所で営業する『鳥かど』で食事をし、料理や居心地の良い店作りを学んでいる弟子に会うことができた。「お客様の人生に“響ける”店」が池川さんの哲学だが、『鳥しきICHIMON』の人生にも響ける店を目指していることを肌で感じさせてもらった。

『鳥かど』
住所/東京都品川区上大崎2-14-12
電話番号/非公開
営業日/日曜・月曜・火曜の不定営業
営業時間/1部17:00~19:30 or 17:30~20:00、2部20:00~22:30 or 20:30~23:00 ※2時間半制 
席数/12
https://torishiki-ichimon.jp/

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。