なぜ若者は『鳥しき』を修業先に選ぶのか。「鳥しきICHIMON」の若手育成術
目黒の焼鳥屋『鳥しき』。予約が取れないことで有名なこの店が、『鳥かど』の名で定休日に営業を始めた。行ってみるとこの店の顔ともいうべき大将の池川義輝さんが不在。3人の若手が店を仕切っていた。
焼き台の前に立つ1人を、側面と後方に立つ2人がサポート。若手3人の所作が清々しくて小気味良く、楽しいひと時を過ごさせてもらった。
『鳥かど』の暖簾を掲げたのは、予約が取れない客のためではない。焼鳥の技術と接客を若手に学ばせる修練の場として、若手に『鳥かど』を一任した。しかし、新店舗開業の意図はそれだけにとどまらない。「焼鳥文化を世界に広めたい」と語る池川さんを取材した。
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自主トレの場として新店舗『鳥かど』を始めた
「28歳で脱サラし、この世界に飛び込みました。女房と2人で『鳥しき』を開業したのは2007年。料理はもちろん、居心地の良さも大切だと考え、この店を続けてきました。これまで僕が経験してきたことを若い子にも学ばせたい。そういう思いで『鳥かど』を始めました」
若手に経験を積ませるのであれば、『鳥しき』の営業時間にできるはずだ。
「焼き台の前にはいつも自分が立っています。お客様もそれを期待して来てくださるので、僕以外が焼いたことは一度もありません。でも、屋号を変えれば、若い子に焼きを経験させることができます」
画像を見るこれまで多くの弟子が『鳥しき』を巣立っていったが、焼き台の前に立たずに独立したのだろうか。
「焼かせたことはありますが、営業時間外でした。定休日に親しいお客様に来てもらい、若手が焼いたものを食べていただいたこともあります」
池川さんは修業時代、営業終了後に焼かせてもらうなど自主トレをしてきた。昨今、働き方改革が飲食店にも及び、若手が自主トレをしにくい時代になった。
仕込み中、若手の串打ちには傍らに立つ大将の厳しい目が光っている。営業中、大将の焼く姿を見ることはできるが、若手が焼く機会は皆無。若手に経験させるために『鳥かど』を開業した。