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台湾のYouTuberが「日本のマズい飲食チェーン」動画で炎上。これって名誉毀損? 弁護士に聞いた

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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台湾の人気ユーチューバー・「蔡阿嘎(ツァイ・アーガー)」が日本を訪れ、アップした動画が炎上したのは6月上旬の出来事。動画の内容は、「日本5家超難吃的連鎖地雷店(日本のまずい地雷チェーン店5選)」というものだった。そこで気になるのは、いくら個人の主観にもとづく感想とはいえ、多くの人の目が触れる場でのこうした行為は、「お店への名誉毀損にあたるのか?」ということだろう。ここでは弁護士の見解をもとに、同様の事例に備えた対処法や心構えについて言及したい。

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「謝罪」すれば許されるのか

蔡阿嘎がアップした動画では、『吉野家』『名代富士そば』『デニーズ』『ケンタッキー・フライド・チキン』『なか卯』に対して「こんなマズい飯を初めて食べた」などと酷評することに加え、店内における大声の会話など他の客にとって迷惑になる行為をしていたため、台湾、さらには日本でも炎上する事態となった。蔡阿嘎は炎上した後、複数回の謝罪を重ねている。SNS上では「やったことは酷いけど、チェーン店にとっては痛くもかゆくもないのでは?」「味覚の違いはしかたがない」といった声も目立つ。

類似した炎上事案は、今年2月上旬にも日本国内で発生している。人気ユーチューバーグループ「夕闇に誘いし漆黒の天使達」が、ワンオペで営業するうどん店を訪問、動画内で全員がそれぞれ違うメニューを“わざと”注文し、最初の品が運ばれてくるまでの時間が遅かったことなどを帰路の車中で酷評した一件だ。

例の件も、今回炎上した「蔡阿嘎」も、その後謝罪をし、世間から批判されることで一定の社会的な制裁を受けている。だから許してもいいのでは?という見方もあるだろう。時が過ぎれば、「そんなこともあった」と風化していく事案なのかもしれない。しかし、酷評された飲食店側はたまらないのではないか。場合によっては、大きなダメージを負うことも考えられる。チェーン店ではない小規模経営、個人経営の店にとっては死活問題にもなりかねない。

そこで、こうした事例が起こった際の心構えや対処法について、専門家に尋ねてみた。お答えいただいたのは、レイ法律事務所に所属する植田仰生弁護士である。

「酷評」の内容次第では、名誉毀損罪などに該当する可能性も

そもそも「多くの人の目が触れる場に酷評する様子を晒す行為」には、どのようなペナルティが科されるのだろうか。

「多くの人の目が触れる場で第三者を酷評する様子を晒す行為は、名誉毀損罪や侮辱罪、業務妨害罪などに該当する可能性があります。仮に、違法行為に該当する場合には、刑事罰を受ける可能性があるほか、民事上の損害賠償請求などを受ける可能性があります」(植田仰生弁護士談。以下同)

違法行為に該当するかどうかは、「酷評」の内容次第であり、飲食店側が法的に訴えた場合、法廷でその点が争われることになる。

「個人の主観に基づく感想(意見・論評)にとどまる場合には、名誉毀損罪に該当しない可能性が高いといえます。また、その感想が社会常識から明らかに逸脱するものではない場合には、侮辱罪や業務妨害罪に問うことも難しいでしょう」

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タシロアキラ

ライター: タシロアキラ

大学の教育・研究の記事を中心に20年ほど紙媒体のライターとしてキャリアを重ねる。フリー転身を機に、趣味である食、スポーツ、ガジェットのジャンルでWEB記事執筆にも進出中!