坪月商52万円を誇る水道橋『スタンドヒーロー』。2度の挫折を糧に「立ち飲み界のヒーロー」に

写真左が「ハムカツ」税抜き380円(418円)、右が「マカロニポテトさらだ」310円(341円)で、出数1位、2位の商品。マカロニポテトさらだはニンニク、タマネギなどを合わせた自家製ドレッシングが味の決め手
ボトムプライスは50円。「こんなに安いの?」と驚かせたい
フードの単品メニューは税抜き50~690円(55~759円)がプライスレンジ。「『こんなに安いの?』とお客様に驚いてもらいたい」との狙いから、ボトムプライスを税抜き50円(55円)にしていると、井上氏は価格設定や商品づくりのポイントを説明する。
こうした井上氏の考えがストレートに表れているのが、およそ2cmにカットした極厚ハムを用いた「ハムカツ」税抜き380円(418円)。「もともとはそこまで厚くなかったんです。スタッフが調子に乗ってだんだんと厚みが増してしまったのですが、それでも単品原価率は50%くらいに収まっており、刺身に比べたら利益商品と言えますね」と井上氏は笑う。
なお、黒板メニューは仕入れた食材によって内容が入れ替わる。「下地は割烹料理。刺身、焼き物、揚げ物、煮物、飯物などの割烹料理に居酒屋のテイストを採り入れながらメニューを組み立てています」と井上氏。
ドリンクが売れれば、原価率はだいたい32~35%に着地する
アルコールは大衆酒場らしいオーソドックスなメニューラインアップ。ビール、ホッピー、ハイボール、サワーなど34種を揃え、税抜き300~450円(330~495円)が中心価格帯だ。
「フードは格安商品を揃えていますから、アルコールが収益の鍵を握ります。数字は細かく見ないため、正確なデータは把握していないものの、感覚値としてアルコール売上比率は60%ほど。それでトータル原価率はだいたい32%に着地しています。ただ、最近はアルコールの仕入れ価格が上がっているため、原価率も35%ほどになってしまっていますね」
営業時間中の人員配置はキッチン3人、ホール4人、ドリンク1人。店の規模としてはスタッフ数が多いが、そこには二つの大きな理由がある。一つは立ち飲み酒場としてオーダーテイクと商品提供のスピードアップを重視しているため、もう一つはスタッフの作業負担を軽くするためだ。
「2回の挫折でヒトのマネジメントの難しさを痛感しました。商品のクオリティは仕込みと仕入れで8割が決まると考えており、そこは自分ひとりの力で踏ん張っています。ただ、その頑張りをほかのスタッフにも求めるようとすると失敗につながる。店を長続きさせるためには営業時間中は人員を厚くし、分業化でスタッフの作業負担を軽くすることが大事だということを学びました」
井上氏の高い目利きと調理の技術を下地とした、ずば抜けたコストパフォーマンスを誇る『スタンドヒーロー』。決して悪と戦うわけではないが、行き場を求める呑兵衛たちにとって、井上氏はヒーローのような存在だ。やはり安くて美味しいのが正義。井上氏の負担が大きい点は少々心配になるが、それもまたヒーローらしい要素だろう。これからも立ち飲み界の救世主として、末永い活躍を期待したい。
『スタンドヒーロー』
住所/東京都千代田区神田三崎町2-21-9 田島ビル1F
電話番号/03-3221-9701
営業時間/17:00~23:00、土曜16:30~21:00
定休日/日曜・祝日
席数/店内最大35人収容(スタンディング)
