横浜屈指の繁盛店、トラットリア・ダ・ケンゾー。売上を作るのは凄腕の「カメリエーレ」たち
スタッフ全員で店を盛り上げる熱意が繁盛店を作る
『ラ・テンダロッサ』の時代から健三シェフの料理に惚れ込んでいる人がいる。新富町にあるイタリア菓子専門店『リートゥス』のオーナーパティシエの塩月紗織さんだ。2011年から7年間、イタリアでパティシエ修業をしていた塩月さんは10年ほど前、初めて『ラ・テンダロッサ』を体験した。
「イタリアから帰国したことを感じさせない料理でしたし、イタリアにいるようなトラットリアでした」(塩月さん)
満席の店内をきびきびと動き回るカメリエーレ。ホールで客に挨拶していたかと思えば、キッチンスタッフに指示する健三シェフの姿が印象的だった。以来、毎年帰国する度に『ラ・テンダロッサ』へ出かけた。
そして、健三シェフが独立した翌月、さっそく『ダ・ケンゾー』にも足を運んだ。
「料理の方向性は『ラ・テンダロッサ』と変わっていませんし、健三シェフが目指すフィレンツェのトラットリア的な雰囲気が凝縮しています」(塩月さん)
スタッフ全員で店を盛り上げようとしている情熱が客にも伝わってくる。それは健三シェフのカリスマ性とリーダーシップによるものだと塩月さんは説く。
「最近は料理選びからワイン選びも含め、矢野さんにお願いすることにしています。矢野さんに頼むと自分では絶対に選ばないワインが出てくることが多い。それが『ダ・ケンゾー』へ行く楽しみです」(塩月さん)
前回は女性3人で足を運び、前菜はおまかせの盛り合わせのほか、単品を数品オーダー。パスタを3品分けてもらい、肉も一品シェア。3人でワインを2本あけ、ドルチェも頼んだ。
「しっかり食べてしっかり飲み、ひとり約15,000円。普通の女性ならもっと安くあがると思います(笑)」(塩月さん)
シェフの情熱がスタッフをまとめて売上を伸ばす
実際どのぐらいの売上があるのか矢野さんにお聞きした。
「ランチの客単価は平均5,000円ぐらい。客数は平日と週末では差がありますが、週末は80人から100人。ディナーの客単価は12,000円から15,000円。週末の客数も100人ぐらい」(矢野さん)
独立に際し、健三シェフはもっと小さい店を考えていた。ところが、天井が高いこの店舗に惹かれ、ビルの大家に「横浜で一番流行る店にする」と約束し、契約を結んだ。一番流行る店にすると豪語した自信の根拠はどこにあったのか。
「『ラ・テンダロッサ』のシェフを務めた17年間で、売上を約3倍にした自信がありました。ところが、オープンした2020年はコロナで大苦戦。21年の後半から順調に売上が伸びていきました」
現在正社員は11名。キッチンスタッフはシェフを含めて6人。
「8人体制にしたいので、キッチンスタッフを募集しています。現在定休日は週1ですが、10月から週2にしようと思っています」(健三シェフ)
「シェフを長年見てきましたが、シェフは欲張りです」と矢野さんは目尻を下げた。
「パスタのお客様、フルコースのお客様、ベジタリアンのお客様、若いカップル、ファミリー層など、85席の大箱を色々なお客様で満席にしたいと考えています。そんな熱い思いがシェフのエネルギー。11人のスタッフをまとめるエネルギーもシェフにはあります」(矢野さん)
『トラットリア・ダ・ケンゾー』
住所/神奈川県横浜市中区相生町5-78 清栄ビル馬車道3F
電話番号/045-298-3737
営業時間/11:30~15:00(L.O.14:00)、17:30~23:00(L.O.21:30)
定休日/月曜 ※10月から週休2日にする予定
席数/テーブル42席、カウンター8席、テラス35席の計85席
西沢健三(にしざわ・けんぞう)
24歳のとき、フィレンツェを中心に5年弱修業。帰国後、『ラ・テンダロッサ』(横浜)の系列店『ヴィーノ・デッラ・パーチェ』(西麻布)にシェフとして入店。29歳のとき(2003年)、『ラ・テンダロッサ』の雇われシェフに就任。2020年4月(45歳)、『ラ・テンダロッサのカメリエーレ』の矢野さん、セコンドの菱沼直人さんなど仲間9人と『トラットリア・ダ・ケンゾー』を立ち上げる。
