岩手県産小麦からカビ毒が検出。飲食店が知っておくべき小麦粉の正しい保存法とは
JA全農いわては11月29日、2022年9月22日~23年11月20日に販売した岩手県産小麦の「ナンブコムギ」711トンから、基準値を超えるカビ毒が検出されたと発表した。すでに400トン近くが出荷され、各所で自主回収などの対応に追われている。今回は、飲食店が注意しておきたい小麦粉の保存方法について紹介する。
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基準値約4倍のカビ毒を検出。約400トンが出荷も、在庫はすべて破棄
岩手県産小麦の「ナンブコムギ」からカビ毒が検出された問題で、JA全農いわてによると、販売先の製粉メーカーの自主検査で、基準値の約4倍のカビ毒が検出されたという。カビ毒が検出されたのは、北上市の業者が販売した2022年産のナンブコムギで、すでに約400トンを小麦粉として加工、出荷された。
今回のナンブコムギから検出されたのは、デオキシニバレノール(DON)というカビ毒で、嘔吐を引き起こすほか、消化管に障害を起こすといった症状が出るのが特徴だ。今回の小麦との因果関係は不明だが、現在までに各地の幼稚園や小中学校の児童・生徒らが体調不良で病院を受診するなどしている。JA全農いわてによると、残りの在庫はすべて廃棄するという。
「カビ毒」は目に見えない
カビは発酵食品などでよく使われる一方で、小麦やトウモロコシなどの穀類のほか、豆類、果実類に寄生してカビ毒を作るカビもある。代表的なカビ毒には強い発がん性物質であるアフラトキシンが知られており、長い間摂取し続けると、肝臓がんを引き起こすリスクが高くなる。
アフラトキシンなどのカビ毒は、発生してしまうと除去するのが難しい。カビそのものは変色などにより目視でわかる場合もあるが、「カビ毒」は見た目だけで判断できない。つまり見た目の悪い部分だけを取り除いたところで、カビ毒は全体に及んでしまっているケースもあるのだ。また、今回検出されたデオキシニバレノールは熱に強いため、調理過程で毒性が減少する可能性も低い。こうしたことからも、まずはカビ毒を発生させないことが重要になる。
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飲食店における、正しい小麦粉の保存方法とは。冷蔵庫はNG?
では、飲食店において、小麦粉にカビを発生させないようにするためにはどうしたらいいのだろうか。
カビが発生しやすい条件としては、温度と湿気、酸素が挙げられる。一般的に、20〜30度がカビの発生しやすい温度とされるため、保存時はパッキンなどがついた密閉容器に乾燥剤とともに入れておくといいだろう。袋のままだと、隙間から湿気や酸素が入ってくるため避けたほうがいい。
また、冷蔵庫には入れず、15度以下の冷暗所で保存することが大切だ。冷蔵庫で保存してしまうと、取り出したときの室温との温度差で結露ができ、小麦粉がダマになる、カビが発生するといったことも考えられる。湿気をできるだけ避け、気温の低い場所で密閉保存するようにしたい。ただし、ホットケーキミックスや天ぷら粉といったプレミックスは、糖類や油脂などが使われているため、密閉し冷蔵庫で保存しよう。
当然、小麦粉に限らず、穀類や豆類、果実類にもカビ毒は発生する。健康被害を引き起こさないためにも、食材の保存方法を見直し、材料の特性に応じて適切な管理を心掛けたい。