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牛たん特化の人気居酒屋『野方 たん純』。リピーターが惚れる注文率9割の看板メニューとは?

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「広島生レモンサワー」450円と一番人気の「熟成厚切り牛たん焼き」1,680円

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物価高に負けじと「牛たん推し」を貫く理由

『たん純』が牛たんをメイン食材として打ち出した理由も気になる。

「厚切りの牛たんは家でなかなか食べられない、というのがメイン食材に据えた理由です。『ねぎし』さんや『利久』さんのような定食ではなく、牛たんをつまみにお酒が飲める店にすることで他店との差別化を図れるという目論見もありました。そもそも僕の好物が牛たんだったのも理由ですね(笑)。また店名をつける際、牛たんの『たん』と僕の名前の『純』を合わせ、好きな言葉である『単純』という意味も込めました。『たん純』に行けば美味い牛たんが食べられるというシンプルな理由でリピートしてもらえればと思って看板食材としています」

『たん純』という店名に恥じず、約50品あるフードメニューのなかでも牛たん料理の比率は5分の1ほどを占める。なかでも看板メニューの『熟成厚切り牛たん焼き』は9割程度の客が注文するというから驚きだ。

「独自配合の塩をつけて3日熟成させたものを炭火で焼いています。修業時代に肉の業者さんから個人で牛たんを買って配合・熟成・焼き方を1年ほど試行錯誤した甲斐もあって、ありがたいことにすごく評判はいいですね」

売れ行きがいい『熟成厚切り牛たん焼き』だが、難点もあるという。

「コロナ禍と昨今の物価高で牛たんの仕入れ値が倍くらいに上がってしまって、『熟成厚切り牛たん焼き』単品だと原価率がだいたい50%なんです。ただ、全体の原価率は他のメニューとのバランスでなんとか30%程度に収められているんで、当面はどのメニューも値上げするつもりはありません」

『牛たんカルパッチョ』(1200円)。低温調理した牛たんに、おろしたタマネギとスパイスが乗った女性客に人気のメニュー

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自信を裏付けているのはリピーターの多さ

名物メニューに惹かれて訪れる遠方からの客も重要であるが、やはり野方駅のような「いわゆる帰ってくる駅」の周辺で飲食店を続けるのであれば、常連客の存在は欠かせない。

「およそ7割程度がリピーターのお客様なので、しっかりとニーズに応えられてるのかなと。オープン当初は500万円を超えた月商もコロナ禍で3分の1以下になりましたが、現在は着実に回復しているので、来年(2024年)には店舗の最高月商も目指したいですね」

リピーターの獲得のために、何か特別な取り組みをしているのだろうか?

「『あの店よかったな』と印象に残る接客を大切にしています。どれだけ忙しくても会計後には店の外までお見送りしたり、予約のお客様のウェルカムカードにはお名前以外に一言を添えたりもしています。あとは休みの日に繁盛店で飲食して、そこのよかった点を真似したりですかね。味も含めて、とにかく来てよかったと思ってもらえるような店作りを心がけています」

会計を終えた客は必ず入り口を出て外まで見送る。ちょっとした配慮が心をつかむ秘訣のひとつなのだろう

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最後に、粕谷氏の今後の展望を聞いた。

「2号店を出したい気持ちはありますが、そのためにはこの『たん純』をさらに盤石にすることが当面の課題です。あとは憧れている先輩のように、何かサーフィンと飲食を絡めた店もやれたらいいなと思っています」

打ち出した看板メニューで客を呼び、そのほかの質の高い料理と丁寧な接客でさらに満足度を高める。やっていることはシンプルだが、繁盛する飲食店の王道とも言えるだろう。大勢の人通りがあるわけではないエリアでしっかり結果を残している『野方 たん純』は、これからもいい波に乗っていくに違いない。

『野方 たん純』
住所/東京都中野区野方6-24-10 野方ビル1F
電話番号/03-5356-8475
営業時間/17:00~23:00(L.O.22:00)、土日祝16:00~23:00(L.O.22:00)
定休日/基本的に無休
坪・席数/13.7坪・45席(カウンター15席、テーブル20席、個室6席、テラス4席)

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36