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看板なしで坪月商65万円。学芸大学『目黒 三谷』が示す“繁盛店づくりのニュースタンダード”

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ナチュラルワインはグラス1,080円をプライスポイントとして約18種を常備。ワインリストは置かず、お客の好みなどを聞きながらスタッフがおすすめをチョイスする

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チームビルディングこそが店をDIYで造った目的

一方、接客で重きを置いているのがお客と積極的に会話を交わすこと。ただし、「馴れ馴れしい接客はNG」(曽我氏)だ。

「『目黒 三谷』のコンセプトは『大人のたまり場』。大人がターゲットですから、とくに初来店のお客様には失礼がないように細心の注意を払います。たとえば、オープンした当時はオペレーションがまだ落ち着いていなかったため、1日3組限定のソフトオープン期間を設け、大人のお客様にご満足いただけるサービスの提供に全力を注ぎました」

写真右端は「目黒レモンサワー」(660円)。神奈川・厚木の酒販店「望月商店」がチョイスする日本酒は720~1,280円の価格帯でグラス3種を揃える

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接客マニュアルはいっさい置いていない。サービス向上のために曽我氏が意識したのがチームビルディングだ。

前述したように『目黒 三谷』は曽我氏を含めたスタッフ5人のDIYで店を造ったが、これは「初期投資を抑える狙いもありますが、店を一緒に造れば連帯が高まりますし、スタッフに店に愛着を持ってもらうことできます」と曽我氏は説明する。

ほかにも『目黒 三谷』のランプシェードには神奈川・秦野の窯元『TORCH』の陶器を使用しており、スタッフが窯元を訪れて陶芸を勉強したという。自分で焼いた陶器を店で使う狙いも同じで、これも店に愛着を持たせることが狙い。愛着を持てば自ずと接客にも力が入るという考えに基づいている。

『目黒 三谷』のスタッフが焼いた陶器。既製品にはない温かみを感じられる

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キャッシュポイントを増やし、スタッフに還元

『目黒 三谷』の成功を受け、曽我氏は早くも2店目のオープンに向けて物件開拓に奔走している。多店化と同時進行で取り組んでいるのが『目黒 三谷』ブランドを核にしたビジネス展開だ。

そのひとつがファニチャー事業。DIYで店を造ったことにより、一枚板を用いたテーブルやアンティークの椅子、『TORCH』のランプシェードなど、什器の仕入れルートを構築。スタッフが手造りした陶器も外食店の現場視点で造られているだけあり、お客からの評判もいい。それらを他の外食店に卸す事業にとりかかる準備を進めているところだ。

2階フロアに設置したテーブルも天板用の1枚板を購入して自分たちで造った(写真提供:souzou)

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「事業のメインは外食ですが、それに付随する事業にビジネスを拡大していくことでキャッシュポイントを増やし、その収益をスタッフに還元する。その仕組みを構築することによって働きがいのある労働環境をつくっていきたいですね」と曽我氏は語り、「そのためには『目黒 三谷』のブランド価値を高め、店がショールームの役割を果たせるようにしていきたい」と続けた。

取材の締めくくりに曽我氏は「あらためて振り返ると、自分が飲食店に勤務した時に経験したことが今に活きていることに気づかされました」と述べた。

前述したように好立地を重視した出店戦略はTBIで学んだものだが、生産者の結びつきと仕入れの重要性はオーイズミフーズ、ブランディングの強みはDDで目の当たりにしたもの。7.7坪14席という小箱の店にさまざまなビジネスのヒントがギュッと詰め込まれた『目黒 三谷』の展開に今後も注目していきたい。

1階の客席は厨房を囲んだL字型カウンター6席で構成する他、店頭にテラス2席とスタンディングテーブルを設置(写真提供:souzou)

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『目黒 三谷』
住所/東京都目黒区鷹番3-14-6
電話番号/03-6312-2261
営業時間/18:00~24:00(土日16:00~翌2:00)
定休日/不定休
坪数・席数/7.7坪・14席
https://www.instagram.com/sanya_meguro/

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。