看板なしで坪月商65万円。学芸大学『目黒 三谷』が示す“繁盛店づくりのニュースタンダード”
チームビルディングこそが店をDIYで造った目的
一方、接客で重きを置いているのがお客と積極的に会話を交わすこと。ただし、「馴れ馴れしい接客はNG」(曽我氏)だ。
「『目黒 三谷』のコンセプトは『大人のたまり場』。大人がターゲットですから、とくに初来店のお客様には失礼がないように細心の注意を払います。たとえば、オープンした当時はオペレーションがまだ落ち着いていなかったため、1日3組限定のソフトオープン期間を設け、大人のお客様にご満足いただけるサービスの提供に全力を注ぎました」
接客マニュアルはいっさい置いていない。サービス向上のために曽我氏が意識したのがチームビルディングだ。
前述したように『目黒 三谷』は曽我氏を含めたスタッフ5人のDIYで店を造ったが、これは「初期投資を抑える狙いもありますが、店を一緒に造れば連帯が高まりますし、スタッフに店に愛着を持ってもらうことできます」と曽我氏は説明する。
ほかにも『目黒 三谷』のランプシェードには神奈川・秦野の窯元『TORCH』の陶器を使用しており、スタッフが窯元を訪れて陶芸を勉強したという。自分で焼いた陶器を店で使う狙いも同じで、これも店に愛着を持たせることが狙い。愛着を持てば自ずと接客にも力が入るという考えに基づいている。
【注目記事】『下北六角』16坪で月商1,100万円超え。2TAPSの「勝利の方程式」を探る
キャッシュポイントを増やし、スタッフに還元
『目黒 三谷』の成功を受け、曽我氏は早くも2店目のオープンに向けて物件開拓に奔走している。多店化と同時進行で取り組んでいるのが『目黒 三谷』ブランドを核にしたビジネス展開だ。
そのひとつがファニチャー事業。DIYで店を造ったことにより、一枚板を用いたテーブルやアンティークの椅子、『TORCH』のランプシェードなど、什器の仕入れルートを構築。スタッフが手造りした陶器も外食店の現場視点で造られているだけあり、お客からの評判もいい。それらを他の外食店に卸す事業にとりかかる準備を進めているところだ。
「事業のメインは外食ですが、それに付随する事業にビジネスを拡大していくことでキャッシュポイントを増やし、その収益をスタッフに還元する。その仕組みを構築することによって働きがいのある労働環境をつくっていきたいですね」と曽我氏は語り、「そのためには『目黒 三谷』のブランド価値を高め、店がショールームの役割を果たせるようにしていきたい」と続けた。
取材の締めくくりに曽我氏は「あらためて振り返ると、自分が飲食店に勤務した時に経験したことが今に活きていることに気づかされました」と述べた。
前述したように好立地を重視した出店戦略はTBIで学んだものだが、生産者の結びつきと仕入れの重要性はオーイズミフーズ、ブランディングの強みはDDで目の当たりにしたもの。7.7坪14席という小箱の店にさまざまなビジネスのヒントがギュッと詰め込まれた『目黒 三谷』の展開に今後も注目していきたい。
『目黒 三谷』
住所/東京都目黒区鷹番3-14-6
電話番号/03-6312-2261
営業時間/18:00~24:00(土日16:00~翌2:00)
定休日/不定休
坪数・席数/7.7坪・14席
https://www.instagram.com/sanya_meguro/
