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渋谷『酒処 ニュー萬斎』、再出発で月商850万円に。深夜のスナック営業も話題!

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左から、代表の今井洋氏、事業部長の櫻井勇樹氏、店長の小坂元太氏

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『渋谷 半地下酒場』『ブルー・ザ・スリー』などの繁盛店を展開する今添笑店。2023年12月には、渋谷・百軒店に『酒処 ニュー萬斎』を開業したばかり。こちらは、代表の今井洋氏が単独経営していた『ミュージックバーながさき』と『うどん酒場 萬斎』の2業態を1店舗にまとめた新業態だ。

2フロア16坪の酒処として再出発を果たしてから売上は右肩上がり。なんと以前の2倍という月商850万円まで伸びている。リニューアルの背景やユニークな店づくりに加え、出店を支える人材の確保や育成について取材した。

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リニューアルに際し、2階の象徴だったカウンターを1階に移設。奥には『ながさき』時代の象徴的な扉も残されている

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バーとうどん酒場の2店舗を合体し、経営も一元化

個性的な飲食店やエンタメ施設が並ぶ渋谷の繁華街・百軒店。今井氏は、この地で60年続いたスナックを受け継ぎ、2階建ての店舗を借り受けた。2019年、1階に『ミュージックバーながさき』を開業。2階は『うどん酒場 萬斎』として、既存店『讃岐うどん 愛』(東京・青山)をベースに店づくりを行なった。

以前は外から店内が一切見えなかったが、新たにガラス製のドアと窓を設けて立ち寄りやすい雰囲気を演出。老朽化していた建物のライフラインも整備した

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今回のリニューアルの主な理由は3つ。売上の改善と、コストを抑えた新規出店、そして会社組織の健全化だ。今井氏は、「僕個人で3店舗、今添笑店として3店舗を運営する中で、各店とも利益は出ているものの新規出店となると大きな費用がかかることがリスク要因としてありました。加えて、『ながさき』はスタッフの力量による売上の差が大きく、個の力に頼った経営が課題に。会社としての成長や今後の店舗展開を見据え、経営を今添笑店で一元化し、業態をリニューアルすることで売上の安定を図りたいと考えました」と説明する。

2階はすべてテーブル席とし、グループ客や貸し切りにも対応できる造りに。スーツ姿の男性客の利用も多い

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渋谷で遊んできた自分たちが、これからも長く通いたい店を作る

そもそも『ミュージックバーながさき』は、渋谷のイノベーターが来るような店をコンセプトに、あえて一見客が入りにくいような店づくりを打ち出していた。しかし昨今は界隈にスナックの競合店が増えてきたことに加え、昨今の渋谷の飲食シーンについて「再開発が進んで駅周辺に新しい飲食店が増えているが、トレンドを狙ったマジョリティっぽい店ばかりで没個性化している」と感じていた今井氏。そこで、長く続く店づくりを前提に、「今後も自分たちが通いたい店」をテーマに、より間口を広げつつも「渋谷にありそうでない店」をめざした結果、『酒処 ニュー萬斎』のコンセプトに行きついたという。

「おばんざい4種盛り合わせ」(1,408円)。取材時は、茄子の揚げ浸し、ゴーヤの梅水晶和え、モロヘイヤとオクラのお浸し、甘辛ダレの手羽先揚げ

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きちんとした和食を、居心地のよい空間で気軽に楽しませる

同店の客単価は6,000~7,000円。渋谷で遊んできた人が年齢を重ねても通いたくなるような、普通の居酒屋を目指した。

看板メニューは、季節のおばんざいとおでん、そしてもつ煮。『うどん酒場 萬斎』時代は家庭料理の延長をテーマにしていたが、総料理長の冨田新吾氏、和食の料理人の木村努氏の監修が加わったことで料理のクオリティが底上げされた。

旬の食材を活かしたおばんざい。1階のカウンターに大皿で5~8品が並ぶ

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営業中は、1階におばんざいの大皿を並べるほか、おでん鍋も用意。〆のうどんも5品ほど用意している。またお酒は、季節の日本酒をはじめビール、焼酎、サワーなど幅広くラインナップ。自家製のサワーも人気だ。

「料理やお酒も大事ですが、当店は『居心地のよい空間』を求めているお客さまが多い。会話を遮らず、さりげなくグラスが空になる前にこちらから声をかけるといった気遣いも大事にしています」と語るのは、『うどん酒場 萬斎』の頃から店長を務める小坂元太氏。「肩肘張らず飲める店」をサービスでも徹底することでアルコール比率も高まり、売上の底上げに繋がっている。

スナックの時間帯はボトルキープや割り物中心の飲み放題とし、スタッフ1人で営業する

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渋谷の若者に人気の「カラオケスナック」で、深夜営業の売上も上々

『酒処 ニュー萬斎』の営業は、17時から24時まで。その後の時間帯は、1階を『夜のながさき』として、カラオケスナックとして営業している。

料金は、飲み放題・カラオケ歌い放題で1時間2,000円~。リニューアル後、客層は『ミュージックバーながさき』時代とはガラッと変わり、20代の若者で賑わう店に。今井氏いわく「今の若い子は、カラオケスナックを知っているのがステータス」だそうで、1人で来てもほかのお客と会話やカラオケを楽しめる点などが人気の理由だという。

カラオケの機材はリースで、営業中は飲み放題にして人件費もあまりかからないようにしているため、「1階だけで月商100万円も売れれば充分」と今井氏。終電を逃したお客がほとんどなので長居する傾向にあり、連日1回転だが安定した収入に繋がっている。

『酒処 ニュー萬斎』の開業を機に、プレイヤーから経営陣に加わった櫻井氏を中心にして人材育成も強化中だ

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社内の役職や評価制度を整え、社員とともにさらなる飛躍を目指す

創業3年半で業績は好調に推移しており「2028年までに年商10億円」を目標に掲げる今添笑店。会社の成長のカギを握る人材は、どのように採用・育成しているのかを尋ねると「まさにこの1年間は、コンサルタントを入れて、働き方やコンプライアンスの整備に費やしてきました」という答えが返ってきた。

創業期は、今井氏が知人やお店のファンなどに声をかけ、いわゆる「スカウト」で集めている部分も大きかったが、ここ最近は変化もあったという。

「Instagramのほか、『求人飲食店ドットコム』なども活用するようになりました。求人媒体で最初に見られるのが給与額なのでそこでインパクトを与えられるよう、正社員の場合月給は月給28万円以上(年齢、経験不問/試用期間も同様)に設定しています」と今井氏。加えて1.5か月分の賞与や、住宅・家族手当、インセンティブ制度などを整えるほか、月7~8日の休日、有給休暇や夏季・年末年始などの休暇も設けている。

入社後のキャリア形成のため、事業部長、総料理長、エリアマネージャーといったポジションも新たに作り、全店共通の評価基準を設けて給与に反映させる仕組みも整えた。現在、社員は25人で、20~30代が中心。独立志望者が多く、彼らの活躍の場を増やすためにも店舗展開を続ける方針だ。

「飲食業界に身を置いて8年が経ち、飲食はリスクの高い業界であるものの実感値がめちゃくちゃ高く、それが魅力だと感じています」と今井氏。リアルなコミュニケーションで目の前のお客に喜んでもらえたり、人が集まることで新たなコミュニティや文化が生まれたり、確かに飲食業では実感値を伴うやりがいは多い。そのうえで「うちで働くスタッフが幸せになれるような会社にしたい」と今井氏は言う。

現在は新規出店の計画に加えて経営の安定化のためアパレル事業を再開するほか、インドへの出店に向けた準備も進行中。急成長を続ける今添笑店の次なる一手にも注目だ。

『酒処 ニュー萬斎』
住所/東京都渋谷区道玄坂2-20-5
電話番号/03-6455-2665
営業時間/18:00~24:00 ※火~土の24:00以降、1階は『夜のながさき』として営業(〜翌4:00)
定休日/第2火曜
席数/41

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笹木理恵

ライター: 笹木理恵

飲食業界専門誌の編集を経て独立。スイーツ・パンからフレンチ、ラーメンなどまで、食のあらゆるジャンルを担当。飲食専門誌を中心に、一般雑誌やWEB、書籍などで活動している。「All About」「Yahoo!ニュース個人」でも執筆中。 https://foodwriter-rie.com/