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客単価8,500円でリピート率8割! 『都立大学 ぶらんこ』に学ぶ、地元から愛されるコミュ術

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注文率8割の「気まぐれおつまみ四種盛り」(990円)。取材日の内容はホタテのひもとキュウリ麻辣和え、柿の白和え、ブロッコリーしらすタマネギ麹和え、鶏ハムの燻製

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「食材を生かし、人も生かす」のが強み

取材中、どんな質問にも気さくに柔らかく答えてくれた植竹氏。さぞ昔からコミュニケーション能力に長けるのだろうと思えたが、「独立前の『ぽつらぽつら』やこの店の開店当初は一人客同士を上手くつないだりできず、店内がシーンとなることもありましたよ」と苦笑いをつくる。続けて、過去の悩みを明かす。

「お世話になった修業先の店で働いていた当時は、周りに個性的な従業員が多く、その方たちは独立してから個性的な店を出しています。けれども僕は『個性が薄いよね』と言われていて、悩んだ時期がありました。そこで『自分に足りないものを出すよりも、強みを出した方がいい』というところにたどり着きました」

「強み」とは食材を生かす知識と技術。「さつまいもの天ぷら」(990円)は、店のワインセラーに入れて適切な温度で保存。2か月かけて追熟させると、糖度がグンと増し驚きの甘さに。「最初は値段が高いと思われたお客さんも、『これは高級天ぷら店レベル』と納得されます。原価は安いけど、あからさまに利益を乗せず、何かしら工夫して価値を高めています」と、植竹氏は収益構造を教えてくれた。

原価率5割越えの「黒毛和牛『ランプ』のステーキ」(2,860円)は、塊肉を仕入れて用いるため、牛すじが残る。それを生かし、「牛すじの八丁味噌煮」といったメニューを一つ増やす分、原価が安くなり利益が生まれるという発想も兼備。また、端材を使うことでフードロスを防ぐ。

「お客さんの食べ残しはほぼゼロに近いですし、魚のアラも含め全部の食材を使います。それでも余れば賄い飯で消費すればいいので、材料費の無駄はないです」

「ドリンクもフードもメニュー表にあえて詳細を書かず、コミュケーションの余白を残して口頭で説明します」(植竹氏)

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「生かす」は食材だけではなく、店の従業員にも落とし込む。それぞれ個性の違うスタッフの良さをどう生かすかを考えるのだ。

「今、社員は二人います。後から入社した一人は若くて結構いいキャラクターなので、接客中に良い意味で調子に乗ってほしい。僕がせき止めることなく、のびのびやってもらえるように心掛けています。もう一人は入社当初は仕事のミスも多く、やや縮こまっていました。ただ、彼は焼酎やワインが好きなので、セレクトや仕入れなどを完全に任せてみたんです。某雑誌の焼酎特集の取材を受けたときも僕が前に出ず、その子に出てもらって。それを機に焼酎の出数が一気に増えましたね」

植竹氏は自らオーナー感を出すのが好みではなく、社員二人と同じ紺色のエプロンを着けて、調理も接客もこなす。なので、各々に常連のお得意様がついているという。3人で力を合わせるからこそ、都立大学という公園の『ぶらんこ』は心地よく揺れる。

駅から徒歩1分の好立地。しかし特に宣伝もしなかったため開店当初は月商100万円台と苦労した

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『都立大学 ぶらんこ』
住所/東京都目黒区中根1-1-7 渡辺ビル1F
電話番号/03-5726-8413
営業時間/17:00~22:30(L.O.21:30)
定休日/水曜+不定休
坪・席数/13坪・19席(カウンター9席、テーブル10席)

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小林智明

ライター: 小林智明

埼玉県出身。情報誌の編集プロダクションを経て、2006年にライターとして独立。食、旅、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり取材・執筆活動を展開中。グルメ取材はラーメン店を中心に計500軒を突破。好きなお酒は辛口純米酒。