坪月商45万円の赤羽『酒呑中華コテツ』。働きやすさ追及し“味”と“数字”を両立【連載:居酒屋の輪】
腕利きの料理人が繁盛の要
独立開業にあたり横村さんがパートナーに選んだのは、一回りも年上という一流の料理人。名門中国料理店『楼蘭』などで経験を積んできた飯倉崇行さんである。経営者として多店舗展開を見越した判断もあるだろうが、何より「料理人が楽しく働ける場所をつくりたい」という気持ちが強かったと横村さんは語る。
「経営は責任者に任せ、料理だけに専念したいという腕利きの料理人は結構多いですよね。でも飯倉さんほどのベテランだと、人気店の料理長をしている元同僚がいたり、人脈も豊富だから働き先には困らないものです。そういった先輩と信頼関係を築きながら、『楽しく働ける場所』をつくるのが大切だと思いました」
メニューの味わいを料理人の力に頼ることで、経営者である横村さんは数字面に注力できるのもメリットだ。適正原価率である30%を平均でキープしながら、「例えば大型店では1品2,000円以上で提供していたような料理を、いかに半額近くまで落とし込むか」が飯倉さんの腕の見せ所である。
「看板メニューのひとつ『プーパッポンカリー』の場合、ソフトシェルクラブ丸ごと1匹とズワイガニの爪まで入れています。食材を妥協せず今の1,280円で提供するとなると、どう工夫しても原価率は50%ぐらいに……。一方で人気ナンバーワンの『上海焼きそば』の原価率は10%程度。素材が中華麺とニラとモヤシですからね。これが飯倉さんの手にかかれば、めちゃめちゃおいしく仕上がるんですよ」
メニューの中心は中華やタイ料理。食材の旬や鮮度が必ずしも重要ではない料理が多く、原価率をコントロールしやすいジャンルでもある。また、店内を効率的に活用するため冷凍設備は別途用意。飯倉さんの家賃を補助することで、店の近所に住まいを借りてもらい、そこにストッカーも設置しているという。経営者と料理人の信頼関係がなければ難しい施策を、互いにメリットが生まれるよう、コミュニケーションを大切にしながら実践しているようだ。
アルコールは、格安で提供する赤羽の居酒屋と差別化を図るため、アジア各国の「本場酒」を用意。紹興酒などは仕入れ値が安く、ここでも原価率のコントロールが図りやすいという。また料理に合わせ、ドリンクにもスパイスを使い付加価値を生み出すなど、随所にアイデアが盛り込まれている。
