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「立ち飲み×空中階」で驚異の坪月商100万円超。渋谷『型破離』の常識破りな経営論

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各料理、食材ごとにタッパーやラップでポーション分け。オーダーが入ったら、ミールキットを使うように、用意しておいた食材と調味料を合わせて調理もしくは盛るだけで料理が完成する

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坪月商100万円見込み。中途初任給50万円スタートと異次元の売上と給与体制

4月8日にオープンして間もない『型破離』だが、取材日時点の売上から換算すると月商は約588万円の見込みだ。坪月商で換算すると、約106万円という異次元の数字である。しかもこれはを店休日を1日取ったうえでの数字だ。さらに将来的には「店休日2日、実働22~23日で月商700~800万円を目指します」と正木氏は意気込む。

この高収益を支えるのは、立ち飲み業態でありながら客単価4,000円前後を確保できる点、そして徹底した効率化による高い利益率である。FLRコスト(F=食材費、L=人件費、R=家賃)のうち、家賃比率を4~5%(今回の場合、月家賃30万円)に抑え、FとLを合わせたコストも50~55%程度にコントロール。結果として、営業利益率は40%を超えることもあるという。

これを実現しているのが、少人数の正社員のみ(アルバイトなし)での店舗運営である。全3店舗(計約13坪)の合計月商は約1,500万円に達し、これをわずか6~7名の正社員で運営している。しかも中途採用社員は、月給50万円スタートという異次元の数値だ。

実は同店、当初2月21日オープンを予定していた。しかし、オープン当日に客席レイアウトの動線が悪く、提供速度に支障が出るとわかり、わずか2時間で営業を中断し、改修のための休業を決断している。

このことについて「目先の売上よりも、長期的な顧客満足度と最適なオペレーション構築を優先する方が良いと判断しました」と正木氏。失敗をすぐに認め、迅速に改善を行うことを繰り返すこの姿勢が、2022年の独立から3年で3店舗を送り出せたゆえんだろう。

「渋谷マークシティ」と国道246号線に挟まれた、路地裏の雑居ビルの2階に位置する『立食 型破離』(画像提供:株式会社シゲキがほしい)

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「職人技が光る業態」「誰もが働きやすい業態」両軸で、多様な人材が活躍する組織を目指す

すでに大手デベロッパーからの出店オファーも来ており、2年後には新たに商業施設への出店も予定されている同社。しかし、今後も小箱の高収益モデルを基本としつつ、急な拡大路線だけを目指すわけではないという。

「重視するのは『人ありき』での店舗展開です。スタッフのスキルや志向性に合わせて、店舗のコンセプトや業態を柔軟に変えていきたい。飲食業界で働く誰もが一流の板前や料理人を目指すわけではないという認識のもと、確立された仕組みで成功体験を積める『型破離』のような業態と、職人技を追求できる『起率礼』のような業態、その両方の選択肢を会社として用意することで、多様な人材が活躍できる組織を目指したいですね」(正木氏)

看板なし、空中階の立ち飲み業態、属人性を配したオペレーション、収益構造など、既存の飲食店の「型」を打ち破ろうとする『型破離』。飲食業界の新たなモデルケースとなる可能性を秘めたこの店の動向から、今後も目が離せない。

『立食 型破離』
住所/東京都渋谷区道玄坂1-15-7 アネックスサクマ201
電話番号/03-4400-8973
営業時間/16:00~23:00
定休日/不定休
坪/5.5坪
https://www.instagram.com/katayaburi_shibuya/

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。