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空前のブームを牽引する超人気店。凍結レモンサワーの元祖『素揚げや』に聞く、美味しさの秘密

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凍ったレモンをグラスに入れ、サワー酒を注ぐ

2杯目は「ナカ!」、辛党ならエクストラも

素揚げやの魅力は2杯目以降である。もちろん、もう1杯頼むことができるが、ほとんどの客は「ナカ!」と頼む。これは「飲み終わったグラスに、中の酒だけ入れてください」という意味である。飲み終えたグラスに1杯目と同じように酒を入れ、門外不出のエキスを加えて出来上がりである。ただしエキスの量は1杯目よりは少なくなる。

「1杯目はレモンが凍ったままで溶けてないから、エキスを多めに入れます。でも2杯目はかなりレモンが溶けてきて風味が出ますから調整します」(同代表)。

エキスの量はレモンの溶け具合や、何杯目か等を見て総合的に判断される。そのため1杯目と2杯目、3杯目とは微妙に味は違ってくるし、飲み進めていくうちにレモンが溶けてレモンによる風味が増してくる。これこそが手作りの良さ、味わいであり、一杯一杯に注ぐ店側の愛情の発露である。それゆえ「これ以上のレモンサワーはないだろう、ということで『最強』と名付けました」と同代表はネーミングの由来に胸を張る。「最強レモンサワー」は最初の1杯は450円だが、「ナカ」は350円と懐にも優しい。

店で「ナカ!」と頼むのは何とも通っぽい行為である。そこだけで通じるコミュニケーション方法を作り出した同代表の経営戦略は、同店の成功と切り離すことはできない。客は最強レモンサワーを味わいつつ、店の空間が持つ空気も楽しんでいる。

なお、辛口のファンには「最強レモンサワーエクストラ」がオススメである。こちらは樽ハイではなく、ウォッカと炭酸を合わせ、エクストラ用の門外不出のエキスを使って辛口に仕上げている。

「ウチはレモンが徐々に溶けてきて、飲み進めるごとにうまくなる。その間に甘いのや甘くないのに替えたりできます」と同代表。ハイボールや、飲まない人のためのレモンスカッシュも用意されている。

仕上げに門外不出のエキスを入れて風味をさらに加える

レモンサワーにかけた情熱

宮崎明代表が『素揚げや』をオープンしたのが2013年4月。都心で懐石料理店をやったが2年で撤退し「捲土重来を期して」オープンした。開店当時、世間ではレモンサワーはよくある商品の1つであり、特に工夫して出している店舗も見当たらなかったという。

料理人出身者はとかく料理で独自性を出そうと考える傾向があるが、同代表は料理人にもかかわらず飲み物で独自性を出そうと考えた。「今までやったことないサワーはないかな、と考えたのがきっかけです。ビールだと何か細工をするとなると、それはカクテルになります。それはないな、と。やっぱり揚げ物にはレモンが『鉄板』なので、レモンサワーだと」。

この考えを樽ハイを提供する飲料メーカーの担当者に伝え、凍らせたレモンを氷の代わりに使うことを提案した。「その会社の方が面食らいましてね。全国の支店に問い合わせて調べてくれたけど、そういう店は1軒もなかったそうです。『全国で初めてです。もしかしたら世界でも初めてかもしれません。これはすごい』と言ってくれました。そこから一気に広がっていきました」。

今では飲料メーカーの開発担当者が『素揚げや』を訪れ、最強レモンサワーを参考に商品づくりがされ、実際に商品化されたという。

2号店目となる祖師ヶ谷大蔵店の店長・稲毛慎一氏

世田谷に2号店、夢は全国へ

『素揚げや』は連日満員、30〜100人の客を断る繁盛ぶりから、5月6日に2号店をオープンした。本店の小岩は庶民的な町として知られるが、2号店は山手の落ち着いた雰囲気の世田谷区砧(最寄駅:小田急線祖師ヶ谷大蔵駅)にある。

店長の稲毛慎一氏(43)は、宮崎代表が料理人だったころから下で働いていた、腹心中の腹心である。2号店も本店とメニューは同じで、当然、門外不出のレシピのエキスも使用する。「今までお世話になってきたので、そのご恩に対して貢献したいというのもありますし、マスターの目標が全国制覇なので、それに向けて自分も成長していけたらなと思います。かなりプレッシャーはありますが頑張りたいと思います」と稲毛氏は力が入っている。

宮崎代表は懐石料理の店で失敗し、その時の借金は5000万円を超え、今でも返済しているという。それゆえ最強レモンサワーは「追い込まれた状況で開発されたもの」である。この美味しさを全国に広めたいという思いとは別に、一刻も早く返済したいという思いもあるという。まさに宮崎代表の人生を賭けたレモンサワーである。夢はフランチャイズ化。レモンサワーを熱く語る宮崎代表の姿には、レモンサワーブームの先鞭をつけたプライドと、これを一過性のブームに終わらせないという強い決意を感じ取ることができる。

本店である小岩店は連日満員の大盛況

『素揚げや小岩店』
代表(マスター)/宮崎明
開店/2013年4月24日

住所/東京都江戸川区南小岩8-25-1 東洋ハイツ1F ※JR小岩駅から徒歩8分
電話番号/03-6806-9481
営業時間/火~土17:00〜23:00(L.O.22:00)、日・祝17:00~22:00(LO21:00)
定休日/平日月曜日、振替休日あり
席数/16席
店主ブログ

2号店目となる祖師ヶ谷大蔵店

『素揚げや祖師ヶ谷大蔵店』
代表(マスター)/宮崎明、店長/稲毛慎一
開店/2017年5月6日

住所/東京都世田谷区砧8-4-15 鈴木第一ビル2F ※小田急線祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩4分
電話番号/03-6411-8970
営業時間/17:00~(当分の間、終了時間未定)
定休日/未定
席数/22席

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/