飲食店.COM通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
powered by 飲食店.COM ログイン

『ナベノ-イズム』渡辺雄一郎さんが語る、コロナ禍を生き抜く「考え方」

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

『ナベノ-イズム』のスペシャリテ、「“両国江戸蕎麦ほそ川”の蕎麦粉の冷製そばがき、奥井海生堂蔵囲い 2 年物昆布のジュレとのアンサンブル、アキテーヌキャビアと塩ウニと共に」(写真提供:渡辺さん)

コロナ禍での営業再開。ゲストに楽しんでもらうために……

『ナベノ-イズム』は会社組織で運営されている。コロナ禍を乗り越えるために、それぞれの役割をこなしつつ、一丸となって業務にあたったそうだ。

「うちはオーナーがいて、フロント(事務方)がいる。店とは分業にしています。店を続けて行けるかどうかは、会社と僕の判断になります。僕の動きで、会社にダメージを与えることは避けなければならない。そうならないように考えるのが僕の役割です。雇用調整助成金などは、フロント、支配人の神田、僕で協力して申請しました。自分ひとりでやるにはどうしても限界があります」

そんななか『ナベノ-イズム』は、昨年5月9日からレストラン営業を再開した。

「料理はディナーコースで2品減らしました。時短営業でコースを少し早く終わらせる必要がありましたから、テンポよく出さなきゃいけない。考えたのは、2品減らしても満足感があるか。高級食材を入れるなどしてどうやって華やかに見せるか、そして、フランス料理らしさが出ているかを考えました。

フランス料理らしさはまずメニュー名としてゲストに見せることが大事で、また、日本の食材を使って作るフランス料理ですから、なぜこの料理をこの食材にするかという説明も必要。かつて、ロブションさん(恵比寿『ジョエル・ロブション』時代)からは、『これは?』『これは?』とすべての食材について、なぜこれにするかの説明を求められました。これは前からですが、メニュー表にQRコードをつけていて、料理の説明をあとからでも読めるようにしています」

『ナベノ-イズム』厨房で働く若いスタッフたち

できる範囲で、明るい光を見る

シェフという仕事は、人々の中心、ハブになるべき仕事だといえる。店を訪れるゲストをはじめ、地域の人々、雇用しているスタッフ、生産者や業者、また家族のことまで考えなければならない。それぞれの事情と、店の売上とのバランスを取りながら進めていく必要がある。渡辺さんにとって、今のこのコロナ禍の日々で最も大切なことは何なのだろうか。

「今、最も大切なのは信頼関係、人と人とのつながりです。ゲストにはここで安心して食事をしてもらいたい、そのためのじゅうぶんな対策をする。そして会社との信頼関係。雇用しているスタッフのことを考えなきゃいけない。コロナ禍になって、これまで以上に人のことを考えるようになりました。人のことというのは、若いスタッフたちの心の内側とか、また、業界全体というか、同業のシェフたちの心の内側ですね。『どんなことを考えているんだろう?』って。彼らをじっと見て、その気持ちを想像して、その行動の理由を考えるようになった」

これまでの価値観が大きく急激に変わりつつあるコロナ禍において今後世の中がどうなっていくかを、渡辺さんは、関わりのある人たちの行動からいち早く見定めようとしているのだろうか。

「つま先立ちでいるというか。いつも構えていることが大事かなと思っています。僕が昔、学んだ野球のように、柔軟な頭と身体で、いつもつま先立ちで、何かあったらパッと動けるようにしています。コロナ禍の今は戦争状態と同じ。どう動けばいいのかだれも答えを持っていません。僕自身は、ポジティブシンキングでいるようにしていますね。ポジティブなことだけ考える。できる範囲で、明るい光を見ていくしかない。僕はこれまでいろいろ経験してきてそこから判断できることもあるけど、若いスタッフたちはそうじゃない。彼らのメンタルを読みつつ、同じ気持ちになるしかない。厳格、真面目過ぎてもだめなんですよ。

風車の理論ってよく言っているんですが、風車は、強い風も弱い風も、どんな風でも受けて粉を引きます。それと同じで、僕らはどんな風も身に受けながら動くしかない。僕は今、若い人たち、自分の行く末がこれからどうなっていくかわからない彼らに、身をもって道標を示す役割があると思っています」

『Nabeno-Ism(レストラン ナベノ-イズム)』
所在地/東京都台東区駒形2-1-17
電話番号/03-5246-4056
席数/24
http://www.nabeno-ism.tokyo/

渡辺雄一郎(わたなべ・ゆういちろう)
1967年、千葉県生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、同フランス校に進学。リヨン『ラ・テラス』、東京『ル・マエストロ・ポール・ボキューズ』を経て1994年恵比寿『タイユヴァン・ロブション』のオープンに携わり、2004年から15年まではエグゼクティブ・シェフを務める。2016年に『レストラン ナベノ-イズム』を開業。

Pocket
follow us in feedly

Foodist Mediaをフォローして最新記事をチェック!

飲食店.COM通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
[PR]
うずら

About うずら

編集者兼ライター。出版社勤務のかたわらアジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。ブログ「モダスパ+plus」ではそのときの報告や「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などの解説記事を執筆。Instagram(@photo_cuisinier)では、シェフなど飲食に携わる人のポートレートを撮影している。