五反田『酒肴あおもん』、“日本一軽い”半熟アジフライで満員御礼!【連載:居酒屋の輪】
日本一の「軽さ」に全力を投じた『酒肴あおもん』の看板メニュー
素材は「アジフライの聖地」と言われる長崎県松浦港で水揚げされたアジ(二枚で一匹分)。不漁の場合でも、できる限り長崎県産のものが手に入るよう独自のルートを築いたという。その鮮度の高さを活かしつつ、生パン粉の糖分、揚げ油の質、衣の薄さなど徹底的に「軽さ」を追求。半熟のオーダーであれば35〜40秒、 完熟の場合は1分20秒ほど火を入れる。味変用のタルタルソースやニラ醤油、付け合せのキャベツの赤酢漬けまで自家製にこだわった。
2つ目の名物、バッテラの主役は宮崎県北浦町産「ひむか本サバ」。中西さんという生産者が親子二代に渡り心血を注ぎ作り上げたブランドで「養殖なのに天然より美味しい」と評判だ。手間ひまかけて養殖しているためアニサキスを気にせず、チルド輸送できるのも大きなメリット。渡辺さんも「青魚の専門店なので、万が一でも間違いがあると悪い噂が広まってしまいます。『ひむか本サバ』は食中毒のリスクが減るだけでなく、美味しくて、仕入れも安定してるんです」と絶賛する。
「青魚の刺身などを盛り合わせにしたものが『青盛』という3つめの名物。それらを作る際にどうしても出る青魚の端材を『青者ボール』として、さつま揚げにしました。4つの名物はどれもクイックメニューで、美味しいだけでなく廃棄も少ない、皆が得する内容になっています。そういったブランディングに直結する部分には良い素材を使っていますが、それ以外は一般的なもので『これでいいんだよ。これがいいんだよ。』なお店を目指しました」
国産レモンの素晴らしさも、渡辺さんが『おじんじょ』で学んだことのひとつ。『酒肴あおもん』のレモンサワーでは、レモンザムライこと鈴木慶洋さんに紹介された広島県尾道市の農園『citrusfarms たてみち屋』から上質なレモンを仕入れているという。
飲食業界を離れたからこそ気づいた本当の自分の気持ち
独立直後から店は満席続きと一見すれば順風満帆な渡辺さんだが、それまでの道のりには多くの試練もあったそうだ。
「コロナ禍で体調を崩してしまい『もう飲食店で働くのはやめてほしい』とまで妻に言われ、しばらく休養を取ることにしました。1か月ほど休んだところで『やっぱり自分には飲食業しかない』という強い思いが、沸々と湧いてきたんです。ちょうど『炭火焼ホルモンまんてん』の阿部亮さんからお声がかかりまして。1か月くらい働いたら店長を任され、気づけば統括店長になり『これ以上の環境を目指すなら、もう独立しかないよ』という阿部さんからのアドバイスで独立を決めました」
結局、渡辺さんが飲食業界を離れたのは1か月ほど。わずかな充電期間ではあったが、これまで歩んできた道を見つめ直すきっかけとなり、再出発の大きな原動力にもなったのだ。
名店誕生までのストーリーを探りつつ、また別の名店を紹介してもらおうとはじまった今回の連載企画。初取材を終えてあらためて感じたのは、脈々と受け継がれている繁盛店の流儀だ。誕生したばかりであっても、お店のあちこちに息づく先人たちの教え。日本が誇る居酒屋文化はどのように成り立っているのか、その系譜を今後も探っていきたい。
『酒肴あおもん』
住所/東京都品川区西五反田2-31-4 KKビルB1F
電話番号/03-6417-0636
営業時間/17:30~23:30
定休日/日曜
坪・席数/15坪24席
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